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噂好きな女  作者: らすく
5/5

5話 見守る男

 とある公園で、ワタシは小休止を取っていた。

 「うええん。」

 振り返ると小さな女の子が泣いていた。多分、転倒したのだろうか。女の子の側には誰もいない。ワタシはその子に近付いた。

 「よしよし。」

 気がつけばワタシは、女の子の頭を撫でていた。

 「ううん・・・。」

 次第に女の子は泣き止んだ。

 「気を付けるんだよ。」 

 ワタシは軽く、その小さな女の子の頭を触り、公園を後にした。

 「さあ、仕事だ。」

 ワタシは仕事に戻った。


 その次の日にも公園に行った。またあの小さな女の子はいた。彼女はまた1人でいた。今日は特に問題ななさそうだ。


 あれからもう何年たつのであろうか・・・。気がつけばワタシはずっと、この女の子を見守り続けていた。独り身の自分に取って、いつの間にやらこの娘は生きがいとなった。もうこの女の子は成長し、今では高校生だ。地元の高校に通っている。でも最近は少々心配するところがあった。どうやらワタシの視線に感づいてきている様子なのだ。それはどうも具合が悪い。あくまでもワタシは遠くからただ見守っていたいだけなのだ。だからなるべくワタシは、間違っても食い入るような視線を彼女に向けてはいけない。そう思っているのだった。


 それともう一つ危惧している事があった。ここ最近変質者が出没居ている、という情報が入ったのだった。ひょっとしてワタシ自身の事なのではないか、と正直思ったりしたのだが、どうもそうゆう訳でもないらしい。だからこの女の子が変質者に遭遇した危険なので、ますますワタシは彼女から目を離せなくなった。しかしその私が憂える気持ちを逆なでするような行為を、この女の子は行う事となるのである。


 (な・・・。)

 ワタシは戸惑った。この女の子が帰り道に、シャツのボタンを外し始めたのだ・・・。下着が覗いていることが遠目からでも分かった。それはまるでワタシに見せつけているのか、と錯覚させるには十分な行為だった。そしてそのまま帰宅したのであった。一体何なのだろうか。この女の子にいかなる心境の変化があったのであろうか。何かの間違いであって欲しい・・・。私はそう願いながら、職場に帰ったのであった。


 その翌日も彼女の帰宅を見守った。いつも通りに女の子は一人で歩いていた。一つ気が付いた事があった。ひょっとしたら彼女は、ワザと人通りの少ない道を選択して帰っているのではなかろうか。それはあくまでもワタシの想像なのであるが・・・・。

 (はっ・・・。)

 その瞬間ワタシは、思わず溜息を洩らした。なぜなら彼女がいきなり制服のスカートを右手でたくしあげ、右太ももの付け根を露にしたのである。私は遠くが良く見える。離れていても状況はわかるのだ。何故なのだ。誰もいないところで、いきなり彼女はこんな事をする意味が分からない。しかし・・・・。いたのである・・・・。見せつける相手が・・・・。

 そう。いたのである。くたびれた感じの身なりの中年の男が、女の子の前にいた。彼女は気がついていなかったのだろう。突然慌てふためいた動作をしてから、猛スピードでダッシュをして、この場を去ったのであった。取り残された中年の男は、まさにポカーンと言った様子であった。このことからこの中年の男は、噂の変質者とは無関係であることが伺えた。

 

 その翌日、女の子の奇行が心配なワタシは仕事が手に着かなかった。もう彼女の下校に時間だ。私はすぐに女の子が道を歩いている所を確認した。

 (ん・・・・?)

 体調が悪いのであろうか。急に彼女は、その場にしゃがみこんだ。

 (え・・・?)

 その異変にワタシは気が付いた。彼女は脚を大きく広げて下着が見えていた。体調が悪くて、気を遣う事ができなくなったのだろうか・・・。しかし・・・・。

 (・・・・!?)

 何やら女の子は叫び声をあげて、勢いよく立ち上がった。そしてなんと・・・、自分のパンツを膝まで下ろした。信じられない行動だ。しかもまだ何かまくし立てている。そして・・・。

 彼女は凍り付いていた。それは無理もないであろう。気がつけば目の前に知らない中年の男が立っていたのだから・・・・。彼は昨日のくたびれた感じの男とは別人であった。いかにも身なりの良さそうなスーツ姿の男性だった。彼女と接近してやり取りをしている。勿論ワタシは彼女の身を案じて見守っていた。また急に彼女は走り出した。しかし即座に脚が絡まり転倒した。無理もない。女の子は膝までパンツを降ろしているのだから・・・・。そしてスーツの男性は彼女に駆け寄った。その様子からして女の子を本当に心配している感じだった。ハンカチを手渡しているし・・・。彼女はペコペコとスーツの男性にお辞儀をして、走り去って行った。どうやら今日も女の子は変質者に遭遇したわけでは無かった様である。


 そしてまた次の日。ワタシは気が付いてしまったのだ。ここ数日の彼女の一連の奇行は、ワタシに対する挑発だったのだ。最初は小バカにされた気分で、腹が立ったのだが・・・。次第に別の感情が芽生えてきた・・・。

 ===== 汚したい =====


 女の子はいつもの通り下校していた。なにやらブツブツ独り言を呟いている様子であった。そして・・・。彼女は自分のブラウスのボタンを全て外し、シャツのボタンにも手を掛けていた。今日もワタシの心を弄ぶのか・・・。

 ===== 激しい息づかい =====

 (はっ!)

 ===== その目つきは、女子に危機感を持たせるには十分だった。=====

 ===== 突然遅いかかり、乱暴に女の子を仰向けに押し倒した。 =====

 ~~~ ビリビリ ~~~

 「きゃああ!!」

 必死の抵抗も空しく、彼女はシャツを無理やり開けられて、前をはだけさせられたのだった。力では敵わない。もう女の子は諦めて目を瞑った。その時・・・。

 

 「こらっ!」

 (えっ?)

 彼女がその声に反応し目を開けたら、警察官が若い男を背後から羽交い締めにしていた。そして後から駆けつけてきた別の警察官と共に、若い男を取り押さえた。その若い男は間もなくパトカーに乗せられて連行された。

 「大丈夫かい?お嬢ちゃん。」

 警察官はコートを女子に掛けた。何故だろうとても安心する。


 私は見守り続ける。あの女の子を。


 暴漢を背後から羽交い締めにした。

 これでも私は警官だ。今日も巡回中に彼女を見守る。

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