噂好きな女
(うふふ。)
涙を流す少女を、友人が背中をさすり慰めている。女子高生に有りがちな光景なのだろうか。あの少女は彼氏と破局を向かえた。これも私が流した噂のお陰だ。コツを覚えてしまえば、そう難しい事ではない。直接的な表現ではなく、あくまでも遠回しな言い方で噂を流すのだ。つまり私が話の震源地である事をうまい具合に隠すのである。まあこれは自分の持って生まれた才能なのかもしれない。
「大丈夫だよ。」
「う、う、う・・・。」
彼女は友人から根拠のない励ましの言葉をかけられ、涙と鼻水混じりの返事をしていた。全く美しい友情である。
(ふん・・・。)
まあ女子高生の友情など、こんなものだろう。明らかに上辺だけの感情表現であることが見受けられる。直ぐに私は彼女らの寸劇に興味をなくし、読みかけの小説に眼を戻したのであった。
因みに私が噂をもってして、彼女を破局に追い込んだ理由は大したものではない。それは・・・。
~~~~~ 面白いからだ ~~~~~
数日後。
===== ガラッ =====
「おはよう。」
「・・・・。」
「・・・・来たよ。」
彼女の朝の挨拶に対して、クラスメート達の反応は極めて冷たい。
「・・・・。」
仕方なく彼女は自分の席に座る。誰も彼女を相手にしようとはしない。もう彼女は、このクラスでは完全に孤立しているのだった。とある日を境に彼女は、こうなった訳では無いのだ。それは日々の積み重ねの結果である。私には分かる。何故なら・・・。
~~~~~ 私の流した噂で、彼女はクラスで孤立したのだ ~~~~~
嘘も塗り固めれば、本当になる・・・・。私は時間をかけて、彼女の印象が悪くなる噂を流し続けた。これは本当に少しづつなのだ。これだけ時間と労力をかけて達成された結果なのだ。嬉しくない訳が無い・・・・。娘を嫁にやる親の気持ち、とはこの事なのであろうか・・・・、いやちょっと違うか・・・・!私は高笑いしたくなる衝動をこらえながら、心の中でほくそ笑んでいた。
数日後、彼女は自殺未遂を起こし、そのまま不登校になった。あっさりと彼女は潰れてしまった。もう少し藻掻いてくれなかったのか・・・・。全く最近の若者の心の弱さと言ったら・・・・、まあかくゆう私も最近の若者の一人なのだが・・・・。それにしても、面白くない・・・・。もういたぶろうにも、その対象はいなくなったのだ。もう彼女の事は忘れよう・・・。しかしうってつけのオモチャが、この後に現れる事となるのであった。
ある日突然に、転校生が現れた。
「中橋美菜子です。皆さん、よろしくお願いします。」
そう言って彼女は、深々と彼女は頭を下げた。
「おおー!」
「すげえ!」
鼻息の荒い声が飛び交う。クラスの男子達は大興奮だ。その彼らの反応に対して、女子たちは<オイオイ>、と言った感じだ。でも無理もないのかも知れない。いきなり予告もなく、美人の転校生が出現したのだから・・・。そして転校生に対しての私の感情は、外の誰とも異なるであろう。この同性から見ても美しい、と言える彼女を見て思う事は、だたひとつであった・・・。
~~~~~ 辱めてやりたい ~~~~~
(具体的に・・・。)
私は考えながら廊下を歩いていた。反対側からズカズカと歩いてくる男子がいる。彼は学校では知らぬ者はいない札付きの不良だ。面倒事は嫌なので、私は彼と接触しないように避けてすれ違った。
(ん・・・・。)
すれ違いざまにチラリと視界に入った不良の彼の顔を見て、私の頭の中で電球が灯った。
~~~~~ この男を使って、あの転校生を凌辱しよう ~~~~~
想像した。あの清楚な転校生が、粗暴な不良に辱められる光景を・・・。
「うふふ・・・・。」
私の一人笑いに、周囲の人間は怪訝そうな顔をしていた。
そろそろ私の噂が効力を出してくる頃合いだろう・・・。ただひたすら私は噂を流し続けた。もう何もせずに、見守るのみである。ここで下手に動けば、勘繰られるのが落ちなのである。だから果報は寝て待て、と言えるのだ。そして動きはあった。
例の不良生徒が女子生徒を廃校舎に連れ込んだ。その不良生徒は数人の仲間を引き連れていた。もはや一人の女子生徒に抵抗する術はない。真っ先にズタズタに制服を引き裂かれ、不良達に代わる代わるにそのカラダを弄ばれた。スマホで写真をたくさん撮られた。もうこの女子生徒は、この不良達の性奴隷に成下がった・・・。
「じゃあまたな、エロ女。」
その不良の捨て台詞に、自虐的快感を女子生徒は得ていた。もともと自分には、このような素質があったのだ・・・。そう自分自身に言い聞かせるしか、女子生徒は慰めにならなかった。そしてこの女子生徒は表上は平穏に学校生活を送りながら、裏では不良生徒達の欲望の捌け口になるのであった。
「おはよう!!」
いつも通りに元気な挨拶だ。
「おはよう美菜子!」
クラスメートも明るく挨拶を返す。もう彼女はクラスの人気者だ。しかし・・・・。
廊下から鋭い視線があった。あの不良生徒だ。彼の顎がクイッと動いた。その合図で教室の女子生徒は廊下に呼び出された。そしていつもの廃校舎に連れていかれるのだ。
(どうしてこうなったのだろう・・・。)
私は考えた。しかし自分の意志とは関係なく、服をはだけさせられカラダを揉みしだかれる。あの転校生・中橋美菜子を陥れるはずだったのに・・・。実際に不良生徒の餌食になったのは私だった・・・・。何故・・・、噂がどこで歯車が狂ったのだろうか・・・。それとも私には元来、このような破滅願望があったのだろうか・・・・。だから自分で・・・・。
でもだんだんと、そんなことは良くなってきた。今の状況に、私は身を委ねることにした・・・・。
~噂好きな女~<終>