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●43

 

 ウーゴがまじないのことを口にすると、ルーナがすぐに「まじない?」と反応した。


 ウーゴはハッとしてルーナの顔を見る。

 すぐにまた肩を組まれてルーナから距離をとるように引っ張られた。


「この子、前にも一緒だった子だよな?今日も非番じゃないってことは、彼女が例の!?それはだめだろ!彼女はやめとけ!」

「は?なんでだよ」

「なんでってお前……。いくら想いが通じ合うなんてまじないをしても無駄だからだよ!」

「だからなんでだよ!わからないだろ!?」

「例の彼女ってことは陛下の愛人だろ!?手を出そうとしてることが知られたら、失恋だけでは済まないぞ!やめとけ!!」

「だから愛人は違うって言ってるだろ!?ほっとけよ!――ルーナ、行くぞ!」


 失恋するとウーゴに決めつけられて、俺は腹が立った。

 黙って立っているルーナの手を掴んでその場から離れた。


「ねぇ、まじないって何?」


 森に入った辺りでルーナに問われ、ギクリとした。

 そのとき、また手を握ったままここまで歩いてきたことに気づいたが、冷静になってみるとルーナもぎゅっと手を握り返してくれているではないか。


(やっぱりルーナも満更ではなさそうだよな……?そもそも、ウーゴから否定されてあんなにムキになるなんて、もう完璧にやられてるな、俺。でも……)


 変わらずぎゅっと繋がれた手に視線をやる。

 ルーナから憎からず思われているとわかり、顔が勝手ににやけそうになる。


「ねぇ!まじないってなんのこと!?」

「あ、まじないってのは――どうしたんだ?」


 互いに想っているならまじないのことを話してもいいかと口を開けば、ルーナの様子がおかしいことに気づく。

 深刻そうな表情で俺を不安そうに見上げている。


「まじないって何?何かされたの!?」

「いや……別に、まだ……」


 ルーナは俺の服を掴み、「まだって何!?」と迫ってくる。


「お、おい。どうしたんだ?まじないはまじないだ。恋のまじないのこと」

「え?」

「まじないを知らないのか?願掛けっていうのか、実際にはっきりとした効果がある訳ではないが、神頼みのような……そういうやつだぞ」

「呪いとか……黒き魔女に何かされたわけではないのね?」

「黒き魔女?なんだそれ?……なんか聞いたことがあるような…………」

「あっ、いいの!呪いの類じゃなければいいの、気にしないで」

「気にしないでってもなぁ。なんか変だったぞ、今」

「そんなことより!何?恋のまじないって。どういうこと?」


 ルーナの様子がおかしすぎて、うっかり本人にまじないのことを話してしまった。

 こんなばらし方をしたかったわけではないのに。


「妹から同じ香りを付けたら想い人と想いが通じるまじないがあると聞いたんだ」


 ルーナは一瞬止まってから、手に持っているアロマオイルの入った瓶に視線を落とす。

 瓶を見ている横顔を盗み見ると、喜びを噛み締めているようなそんな笑顔を浮かべていた。


 その顔を見て、確信する。

 ルーナは間違いなく俺のことが好きだ。


(これならデートに誘っても断られないだろう)


 数秒、手元を見たあとルーナは顔を上げた。


(……ん?)


 てっきり可愛い笑顔を見せてくれるものと思っていたのに、予想に反してルーナの顔にはなんの感情も浮かんでいない。

 何事もなかったかのように、平時と変わらぬ顔。


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