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066 チーズタルト

 中央広場にある噴水が良く見えるお店。

 レストラン・シエル。

 テラス席に座って、エルと一緒にランチを食べる。

「美味しい」

 また、キッシュが食べられるなんて。

 

 キッシュは、王都のレストランに良く置いてあるメジャーな料理らしい。

 今日のおすすめは、海老とアスパラのキッシュ。彩りも良くて美味しい。

 それに、レストラン・シエルは、紅茶の種類も豊富なお店だ。選べるぐらい、こんなに種類を取り揃えてるなんて。

 ……食べ物屋さんは、こんなに美味しいものを色々揃えてるのに。

 エルのレイピアは、午前中ずっと探し続けても見つからなかった。

 

「こんなに大きな都市なのに、置いてないなんて」

 行く先々で、すべてのレイピアを見せてもらったけど。

 どれもこれも強度に問題あり。

「需要がないからな」

 イーストストリートの武器屋さんの主なお客さんは、守備隊や冒険者らしい。だから、頑丈そうな剣は豊富にあっても繊細な剣の取り扱いは少ないんだとか。

 エルのレイピアは、かなり良いものだった。

 最低でも、あれに勝るものじゃないといけないのに……。どこにもない。

「やっぱり、作るしかないのかな……」

「作る?」

 どうしようかな。

 とにかく強度を求めるならミスリル鉱石なんだけど……。

「リリーが作るのか?レイピアを?」

「うん。重さは同じで良い?」

「重さなんてわかるのか?」

「この前、物置を片付けた時に持ったから大丈夫」

 エルの動きを見る限り、切っ先の鋭利さと刀身の柔軟性は欠かせない。それに、鍔迫り合いに耐えられる強さを足す必要がある。

 でも、ミスリル鉱石だと重過ぎるよね。軽いのはプラチナ鉱石だけど、加工が難しくて強度に難あり。扱いやすさと強度を高めるには、副素材を混ぜた合金にするしかない。強度を足すなら溶岩石……?だめ。重い。そういえば、昔、師匠がプラチナ鉱石に混ぜて使ってた副素材があったよね。あの時に使ってたのは、確か……。星屑?

 あ!あの時、師匠は変わったことをしてた。

『ルミエールがレイピア作ってるところなんて、見たことないだろ』

「そうだけど……。でも、使える技法はあるよ」

 あの時、師匠が作ってたのはプラチナ鉱石を使った剣。

 あの時、教わった技法を試そう。

『リリー。エルのレイピアを作るんですか?』

「うん。イメージは出来たよ」

『出来たって。どこで作るんだよ』

「あ」

 そうだった。

『鍛冶屋なら、職人通りにありますよ』

「そっか。お願いしたら借りられる?」

「そう簡単に借りられるわけ……」

『交渉なら、私が手伝います』

「本当?」

「ちょっと待て」

 場所があるなら、次は材料集めだ。

「そんなに使うものじゃないし、わざわざ作る必要なんてない」

「私、作りたい」

 私が考えるエルの為の剣。

 エルは、今日の戦いを稽古って言ってた。

 あれはエルの本気じゃない。つまり、あのレイピアじゃエルの実力は出せないんだ。

「だめ?」

 良い剣士には、良い剣が必要だ。

 エルがため息を吐く。

「……良いよ」

「やった」

 作れる。

『また、折れてるねー』

 待ってて、エル。

 エルが本当の実力を出せるような良いレイピアを、頑張って作るから。

『楽しみですね』

『流石、炎の精霊だね』

 鍛冶屋にとって、炎の精霊は神さまみたいなものだ。エイダが応援してくれるなら、良いものが出来そう。

「デザートは?」

「え?」

「食べないのか?」

「えっと……。今日は、大丈夫」

 これから、キャロルとチーズタルトを作るから。

「なら、土産でも……」

「それも、大丈夫」

 そんなの買ったら、タルトが食べられなくなっちゃう。

「調子でも悪いのか?」

「どうして?」

『いつも甘いもの食べてるから、そんなこと言われるんだよ』

 どうして、そんなこと言うの。

 エルが私の頬をつつく。

 私、そんなに甘いものばっかり食べてる……?

 

 ※

 

 午後は、台所を立ち入り禁止にして、お菓子作り。

 ルイスは研究室でエルの出した課題をやるらしい。エルは店番だ。

「遅くなってごめんね」

「大丈夫よ。材料の計量も、オーブンの準備も出来てるわ」

「ありがとう」

『道理で熱いわけだよ……』

 イリスは、熱さに弱いから……。

『あぁ、気にしなくて良いよ。リリーの中に居れば、たぶん、大丈夫だから』

 本当に?

「何から始めるの?」

「まずは、タルト台から作ろう。……型、いっぱいあるんだね」

 ミニタルト用の型が、山程ある。

「全部で五十個あるのよ。礼拝堂にあったのを借りて来たの」

「礼拝堂?」

「えぇ。たまに礼拝堂に来たボランティアの人が、料理を作って、貧しい人たちに振る舞ってくれるから。お菓子の型も、いっぱいあるのよ」

「そうなんだ」

 この辺りは、貧しい人が多い場所だっけ……。

「その代わり、明日、合唱団の皆に持っていく約束なの」

 お休みの日は、キャロルは合唱団の活動に参加するって言ってたっけ。

「じゃあ、いっぱい作らなきゃね」

「えぇ。材料はいっぱい買ったから、きっと足りると思うわ」

「うん」

 充分だよね。

 

 あぁ。久しぶりだ。

 こんな風にお菓子を作るのは。

『ご機嫌だね』

 だって、楽しい。

 型に入れたタルトにタルトストーンを乗せて、オーブンへ。

「タルトの空焼きが終わったら、中身を作ろう」

「わかったわ」

 初めて使うオーブンだから、どんな焼き上がりになるか気をつけて見ないと。

「ねぇ、リリー。グラシアルとラングリオンの作り方って、同じなの?」

「えっと……。私、お菓子作りは、ラングリオンのお菓子の本で勉強したんだ」

「そうなの?」

「うん。グラシアルのも色々作ったけど……。小さい頃に、すごく美味しいお菓子を食べて。それが、ラングリオンのレシピで作られたお菓子だったから」

「もしかして、プリン?」

「うん」

 今でも覚えてる。

「甘くて、滑らかで、ふわふわしてて……。こんな食べ物があるんだって、びっくりして。でもね、これが、いつも目にする材料だけで作れるって聞いて、もっとびっくりしたの」

 キャロルが、くすくす笑う。

「ふふふ。わかるわ」

「それから、お菓子を作るのが好きになったんだ」

 色んなものが混ざり合って、一つになって行くところや、同じ材料でも配合や工程の違いで全然違うものになるところとか。

 ……配合。

 そうだ。

「聞きたいことがあるの」

「なぁに?」

「プラチナ鉱石って、どこで売ってるか知ってる?」

「それなら、家にあるわ」

「え?」

「物置のガラクタに混ざってたの」

 ガラクタに混ざるようなものじゃないよね?

「それって、ちゃんと精錬されたもの?」

「せいれん……?詳しいことはわからないけれど、ルイスは、純粋なプラチナ鉱石って言ってたと思うわ」

 なら、きちんと精錬されたものだ。

「どうして、そんなものが?」

「錬金術師が作る特殊な指輪の材料になるんですって」

「そうなの?」

「ほら、リリーがしてる指輪って、エルが作ったのでしょう?」

 エイダの精霊玉が付いた指輪。これに使われてたなんて。

「物置から持ってくるわ。他に欲しいものはある?」

「星屑」

「それなら、研究室にあるんじゃないかしら」

「研究室に?」

 星屑も錬金術で使うものなの?

「リリー、錬金術でもするの?」

「違うよ。剣を作ろうと思って」

「剣?」

「プラチナ鉱石って、どれぐらいあるかな」

「たくさんよ。全部持ってくるわ」

「手伝うよ」

「大丈夫。あれって、すごく軽いから」

 キャロルが行ってしまった。

 とりあえず……。

 オーブンの鉄の扉を少し開いて、中を覗く。大きな焼きムラもなく、良い仕上がりになりそうだ。

 今の内に、ルイスに聞いてこよう。

 

 ノックをして、研究室を開く。

 白衣を着たルイスがエルみたいに難しいことをしてる。錬金術の実験中?

 ユールが様子を見てる。

『ユール。何で、ルイスと一緒なの?』

『ルイスが危なくないかぁ、見てるのよぅ』

 見守ってあげてるんだ。

 私に気付いたルイスが、顔を上げる。

「リリーシア。どうしたの?」

「今、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」

 良かった。

「星屑ってある?」

「星屑?……ちょっと待ってて」

 ルイスが棚から大きな瓶を取り出す。

 思ってた以上に、たくさんある。

「どれぐらい欲しいの?」

「えっと……。まだ、どれぐらい使うか決まってないんだけど。半分ぐらい貰っても良い?」

「随分、使うんだね。お菓子に入れるの?」

「えっ?入れないよ」

 ルイスが、くすくす笑う。

「それなら良かった。何に使うか聞いても良い?」

「エルの剣を作ろうと思ってるの」

「剣?」

 ノックがあって、腕に大きな箱を抱えたキャロルが研究室に入ってきた。

「リリー。これで足りそう?」

 キャロルが開けた箱の中には、きらきらと輝くプラチナ鉱石が入ってる。

「きれい。すごく純度が高い」

 プラチナ鉱石の中でも、かなりランクの高いものが、こんなにたくさんあるなんて。

「リリーシア、剣を作るって、鍛冶をするってこと?」

「うん」

 エルの家って何でもあるんだ。こんなに簡単に材料集めが終わるなんて。

「明日、借りれそうな場所を探すつもり」

「見つかるかしら。この辺の人たちって、優しいけれど、自分の仕事場に職人以外の人を入れようとはしないもの」

「そうだね……。探すにしても、あんまりエンドには近づかないようにね」

「エンド?」

「イーストエンド。王都は、メインストリートから外れれば外れるほど治安が悪化するんだ。職人通りでも、東の果てまで行くと危ないよ」

「分かった。あんまり遠くに行かないように気をつける」

 マリーは、この辺り一帯をエンドって呼んでるみたいだったけど。更に危ない場所があるってことだよね。

「協力してくれる人が見つかったら良いね」

「うん。頑張って探してみる」

『そろそろ、タルトが焦げるんじゃない?』

「あっ。タルト、見てくるね」

「そうだったわ」

 キャロルと一緒に、急いで部屋を出る。

 

 ※

 

 空焼きも綺麗に完成。大きな癖もなく良いオーブンだ。

 キャロルと一緒にチーズタルトの中身を作って、タルトに詰めて、オーブンの中へ。

 ここからが本番。

 どうか、美しい焼き色が付きますように。

 

 キャロルと後片付けをしていると、ルイスが来た。ユールも一緒だ。

「良い匂いだね」

「ルイス」

 研究室まで香りが行ってたのかな?

「ねぇ、リリー、まだかしら」

「もう少しだよ」

 ルイスが台所の窓を開く。

 ここ、そんなに暑いかな?

『あー。もしかして、エルが苦手なやつ?』

 苦手って……?

「あっ。そんなに甘い匂いしてた?」

「ちょっとね。廊下の窓も開けてるよ」

「エル、大丈夫かな」

「大丈夫じゃない?」

 ルイスがサイフォンを出して、コーヒーの準備をしている。

 そろそろ良いかな?

 オーブンを開いて、タルトの乗った鉄板を取り出す。

「わぁ。素敵!お店のタルトみたい!」

 良い焼き色だ。

 全部出して、テーブルの上に並べる。

 第一弾は、完成。

「続けて焼こう」

「うん」

 残りのタルトをオーブンに入れる。

 良い温度が保たれてるから、さっきより焼き上がりが早そうだ。

「美味しそうだね。一つ貰っても良い?」

「熱いから気をつけてね」

 キャロルが、型から外したタルトをお皿に置いて、ルイスに渡す。

「良い香り」

「エルにも持っていってあげましょう」

 次々と型から外したタルトを、キャロルが籠に入れていく。

 そんなにいっぱい?

「エル、食べるかな」

「食べるわよ」

 

 タルトを持って、キャロルと一緒にお店へ。

「あれ?」

 誰も居ない。

「外かしら」

 

 二人で外に出ると、エルがお店の軒下で、椅子に座って読書をしていた。

「もう。こんなところで店番?」

 店番してたんだ。

「二人で何を作ってたんだ?」

「チーズタルトよ。焼き立てを持ってきたの」

 キャロルが籠を見せる。

 大丈夫かな。

「たぶん、冷やした方が美味しいと思うんだけど……」

「冷やすか?」

『手伝う?』

 ナターシャの魔法で?

「だめだよ。ゆっくり冷やさないと、なじまないから。明日には、丁度良くなってるんじゃないかな」

「えー、明日までお預け?」

 可愛い。

「焼き立ては焼き立てで美味しいと思うよ」

「じゃあ、味見しましょう。これは、エルにあげるわ」

 キャロルが籠をエルに渡す。

 これ、全部?

「いっぱい焼くから、楽しみにしててね」

 家の中にキャロルが走っていく。

 どうしよう。エル、食べられないよね?

「あの、きっと、焼きたては甘いと思うから。無理しないでね」

「食べるよ」

「えっ?大丈夫?」

「二人で作ってくれたんだろ?」

「そうだけど……」

「リリー!はやくー!」

 キャロルが呼んでる。

「今、行くー!……エル。ルイスがコーヒー淹れてたから、もうちょっと待っててね」

「ん」

 大丈夫かな……。

 

 ※

 

 二回目のタルトも綺麗に仕上がった。

 のんびり二人でお茶の時間を楽しんだ後、キャロルは、お昼寝をしに部屋に行ってしまった。あったかくて、お腹もいっぱいで、ちょっと眠くなっちゃう午後。

 冷めたタルトを一個ずつラッピングしていく。キャロルが明日、合唱団の活動に持って行くって言ってたから、可愛くしよう。

「あれ?君一人か」

「カミーユさん?」

 カミーユさんが、大きな荷物を持って台所に入ってきた。

「どうしたんですか?」

「野菜を持ってきたんだ。お裾分けって奴だよ。……片づけて行って良いか?」

「はい」

 カミーユさんが、慣れた感じで野菜を仕舞っていく。この家の台所に詳しいみたいだ。

 本当に、エルと仲が良い人なんだな。

「あ……」

 見たことない精霊が飛んでる。

 紫色。

 この色って、カミーユさんの魔法使いの光と同じ?

『すげーな。本当に見えてんのか』

「え?……うん」

『変な女』

 変って言われちゃった。

『リリー。無闇に喋るなって言われてるだろ』

「だって……。あなた、カミーユさんの精霊なんだよね?」

『ばればれだな』

 やっぱり。

 こんなにはっきり同じ色だってわかったのは初めて。

 だって、初めて見る精霊だ。

「もしかして、雷の精霊?」

『は?俺様のこと知らないってのか』

「うん」

 初めて見る精霊だ。

『どいつもこいつも。……おい。カミーユ、何とか言ってやれよ』

 雷の精霊がカミーユさんの方に行く。

 私が見えてる魔法使いの光って、やっぱり、契約してる精霊に関係してるのかな。

 エルが金色に見える理由は、わからないままだけど。

 一人しか契約してない人は同じ色な感じがする。

「雷の精霊を見るのは初めてかい」

 荷物を仕舞い終えたカミーユさんが、私の方に来る。

「はい」

「まぁ、グラシアルは女王の力で年中過ごしやすい気候が保たれてるって言うからな。……流石、大陸一の魔女のお姫様ってところか」

「え……?」

 知ってるの……?

「リリーシアちゃん。はっきりさせておこう。リリーシアちゃんの目的は何だ?」

「私の目的?」

「魔力を見る目を持ち、魔力を奪う力を持った姫。……目的は一つだろ。魔法使いから魔力を奪うことだ」

 その通りだ。

「君は、そんなつもりないってエルに話してるようだが。エルは心底、君に惚れてるからな。その考えは当てにならない」

「……え?」

 今、なんて……。

「もし、君がエルの魔力目的で近づいたって言うなら……」

 待って。

 惚れてるって。

「リリーシアちゃん?」

『顔、真っ赤じゃねーか』

「だって、エルが……。私のこと……」

 惚れてるなんて。

 どうして、皆、エルが私を好きだなんて決めつけるの?

「エルから告白されたんだろ?」

 どうして、知ってるの?

「まさか、エルが好きなのに振ったのか?」

 どうして、皆、私がエルのこと好きだって気づくの?

『リリーは、本当にわかりやすいよね。その半分でも、エルがわかってくれれば良いのに』

『あいつは死ぬほど鈍感だぜ』

『……そうだね』

『ふん。つまりは両思いなんだろ?』

 両思い?

 エルと私が?

 エルの気持ちは聞いたけど……。

 あの言葉が嘘じゃないってことも、わかるけど……。

 でも、私じゃ……。

「なんで、エルを振ったんだ?」

「振ったわけじゃ……」

 ただ、何も言えなかっただけ。

「だって、私じゃ、だめだから」

「どういう意味だ?」

 言えない。

「呪いの件なら、エルがどうにかするって約束したはずだ」

 それも知ってるんだ。

「ずっと一緒に居るって約束したんじゃないのか」

 それも。全部、エルが話したの?

「それとも、適当な嘘を吐いたのか?」

「違う。嘘なんかじゃ……。一緒に居られるなら、ずっと一緒に居たい」

 好きだから。

 好きな人と居たい。

「でも、出来ないの」

 私じゃ、エルに何もしてあげられない。

「誓ってしまったから」

「誓った?」

 もし、誓いを破ってしまったら……。

「どういう意味だ」

 逆らうことなんて許されない。

 自由で居られるのは、三年だけ。

「私には、三年しかない。エルは大切な人を失っていて、今でも、その人のことが忘れられないのに。期限のある私じゃ、エルに何もしてあげられない」

「だから、好きでも諦めるって言うのか」

 諦めたくなんかない。

 エルが好き。

 傍に居たい。

 好きだって言いたい。

 でも。

「もう、何も失わないで欲しいの」

 私が代わりになったところで、エルを幸せにしてあげることは、出来ない。

「馬鹿だな。それでも、あいつは君を選んだんだよ」

「え……?」

「君が考えてることを、エルが悩まなかったと思うのか?あいつは、ずっと大切なものを失い続けて来てる。フラーダリーが死んでから、誰かの傍に居ることも拒否し続けてきた。そのエルが、君を連れ帰ったんだ。一緒に暮らす為に」

―リリー。

―ラングリオンに行ったら、一緒に暮らそう。

「エルは、必ず君を自由にする。あいつは、一度決めたら曲げないんだ。覚悟しておきな」

 覚悟?

「あれ?カミーユ。来てたの?」

「ルイス」

 ルイスが台所に入って来る。

「キャロルは?」

「お昼寝してるよ」

「そっか。なら、僕も少し休もうかな」

「ちょっと待て。ルイス、話があるんだ」

「話?」

 カミーユさんが、ルイスの耳元で何か囁く。

「……え?」

「試してみないか」

「良いよ。でも、タルトを食べながらね。リリーシア、貰って良い?」

「うん」

「俺も、貰っていくぜ」

「はい」

 二人が出ていく。

 研究室に行ったみたいだ。

 嵐のような人だった。カミーユさんも精霊も。

 エル。どうして、私と一緒に暮らそうって言ったの?



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