003 街巡り
「えっ。ワンピース？」
どうして？
「このワンピースには、こちらのタイツがお薦めでございます」
「シンプル過ぎないか？」
「では、こちらはいかがでしょう」
「じゃあ、それで」
「待って。そういうのじゃ動きにくいから……」
「帽子って、ここにあるだけか？」
「色違いもご用意できますよ。そちらのタイプでしたら……。白はいかがでしょう？」
「じゃあ、それも」
エルも店員さんも私の話を全然聞いてくれない。
「では、お嬢様。合わせに参りましょう」
どうして、こんなことに。
部屋の奥に案内されて、マントを取って、剣と鞄を置く。
『まぁ……。仕方ないんじゃない？』
可愛い服屋さん。
ここに来る直前に言われたのだ。
その恰好は目立ち過ぎるから着替えろって。
左腕にだけ付けている白銀の篭手を外して、肩当て、キュイラス、フォールドとタセットを外して、膝上まで保護してくれるブーツを脱ぐ。鎧をきれいに並べ直してから、皮の手袋を脱いで鞄に仕舞う。
そして、キルトの鎧下を脱ぐ。
これも鞄に入れておこう。
『身軽になったね』
今、着てるのは肌着と黒のタイトパンツだけ。せっかく旅立ちに向けて仕立てた鎧だったのに、もう脱ぐことになるなんて。
『鎧なんかなくても街中は安全なんだ。早く着替えなよ』
安全、なのかなぁ。
でも、私みたいな鎧を着た人を全然見かけないのは確かだ。
着替えよう。
用意してもらったワンピースを着て、鏡を見る。
「この服、目立たない？」
『目立たないよ』
「お似合いですよ」
アッシュブルーの長袖ワンピース。
「タイツは二種類、御用意致しました」
「えっと……。とりあえず、このままで……」
黒のタイトパンツのままの方が動きやすい。
「こちらも可愛らしいですよ」
これから旅に出るのに。
『っていうかさ。なんで、あんなに目立つ赤いマントにしたの？』
「マントは、あれぐらいしか持ってないし」
『もっと落ち着いた色もあっただろ』
だって、あれが一番、白銀の鎧に合ってたから。
「マントも必要でしたか？」
「えっと……。はい」
あった方が良いよね。
「では、御用意致しますので、こちらのブーツを履いてお待ちくださいね」
店員さんが取りに行ってしまった。
「ブーツまで履き替えるの？」
『まさか、鎧のブーツを履く気？良いから、そっちにしなよ』
そうだけど。
新しいブーツに足を入れる。
『一応、言っておくけど』
「何？」
『ボクの声は、リリーにしか聞こえてないんだからね？』
「……わかってるよ」
契約中の精霊の声は他の人には聞こえないって。
『わかってないね。あの魔法使いにだって言われただろ？普通、精霊の声なんて簡単に聞こえないんだよ』
「でも、精霊は人間と話したいときは人間に語りかけるでしょ？そうしたら、誰でも聞こえるんだよね？」
『だからさ……。あー、もう、ちゃんと勉強しただろ？』
「魔法学の話？精霊学？」
『いいから、この先はボクの声にいちいち反応しないでよ。わかった？』
話しかけられてるのに？
「お待たせしました。こちらのマントはいかがでしょう」
深い紺色のマントだ。フードも付いてる。
「ありがとうございます」
「先に、こちらの上着をどうぞ」
ワンピースの上に短い上着を羽織る。
「あったかい」
「帽子もどうぞ」
帽子もかぶる。
この髪型でもかぶれる白いニットの帽子だ。
被っても、でこぼこしない。
『おー。可愛いね』
鏡を見る。
可愛い……。かな。
鞄を肩にかけて、剣も背負う。
これにマントを……。
「マントは後にしましょう。さぁ、こちらへどうぞ」
「はい」
ようやく着替え部屋を出る。
※
「御着替えが済みましたよ」
「ん」
お店側で待っていたエルが、こちらを見て……。
眉をしかめた。
……変だった？
「なんで、その剣を背負ってるんだよ」
「えっ？」
「置いていけ」
「護身用の武器がないなんて、危ないよ」
外なのに手ぶらで歩くなんて。
「そんな服で、そんなでかい剣を背負って歩く馬鹿がどこに居るんだよ。違和感あり過ぎだ」
「でも、リュヌリアンがないのは無理……」
これがないと、戦えない。
そうだ。
「あのね、フード付きのマントを探してもらったの。これで良い？」
「どうぞ」
店員さんから貰ったマントを羽織る。
『さっきと、かなり雰囲気が変わったね。これなら、ばれないんじゃない？』
本当？
じゃあ、マントのフードをかぶれば完璧じゃないかな。
でも、そうすると帽子が邪魔かも。
白い帽子を外そうとした私の手首をエルが掴む。
「なんで外すんだよ」
「フードがあるなら、要らないよね？」
「こっちの方が可愛い」
かっ……。可愛い？
『何、赤くなってるんだよ』
だって。
可愛いって。
「鎧は、ここに預けておいても良いか？昼までには取りに来る」
「かしこまりました。お名前は？」
私の名前だよね。
「リリーシア・イリス……」
『だめだって！』
え？
「リリーシアで良い」
それだけで良いんだ。
「かしこまりました。リリーシア様ですね」
えっと、お金……。
『リリー。たぶん、ここも金貨は駄目だよ』
ここも使えないの？
『それに、もう払ってくれてる』
本当だ。
会計を終えたエルが私の腕を引く。
「ほら、行くぞ」
お店の外へ。
また、買ってもらっちゃった。
「勝手に名乗るな」
「え？」
「追われてるんだろ？少しは警戒しろ」
『そうだよ。もう少し、考えて行動しなよ』
イリスまで。
聞かれたことに答えただけなのに。
「これから、どこに行くの？」
「買い物。それが終わったら、俺の宿に戻って話を聞く」
宿。
そうだよね。この国の人じゃないんだから、どこかに宿を取ってるはずだよね。
「あなたは、いつからグラシアルに居るの？」
エルが眉をしかめる。
「王都ライラがグラシアルのどこにあるかわかってるか？」
「えっと……。左上？」
『リリー……』
合ってるよね？
グラシアルは大陸地図の左上にある国で、王都ライラは左上のすみっこだ。
「グラシアルに入国したのは、かなり前だよ。王都に入ったのは十七日」
「あ……。そっか」
聞き方を間違えてしまった。
グラシアルは大きな国だ。入国してから王都にたどり着くまで何日もかかる。
聞くなら、いつから王都に居るかだよね。
……あれ？
十七日？
今日はポアソンの十九日だ。
ここに来て三日しか経ってないのに、こんなに詳しいの？私……。三日でこんなに歩けるようになるかな。
※
足、早い。
ついて行くのがやっとだ。
さっきは服屋さんが多い通りだったけど、この辺りは、雑貨屋さんとか色んなお店が並んでる。
「何を買うの？」
「さっき買い損ねたものだよ」
「買い損ねた？」
「さっき、リリーがぶつかって来たせいで買えなかったんだよ」
「えっ？」
ぶつかったって……。
周りを見渡す。
「ここって、さっきの場所？」
「そうだよ」
『そうだよ』
全然、見覚えがない。
『リリーが鎧で体当たりした場所だね』
体当たりなんかしてないもん。
外に置いてある商品を取って、エルが店に入っていった。錬金術の道具かな。
私には関係なさそうだし、外で待ってよう。
……寒い。
黙って待ってると寒さを感じる。
「外って、どうしてこんなに寒いんだろうね」
『城の中は常春なんだよ』
確かに、城はずっと春の花が咲いてたっけ。
あ、植物が置いてある。
『リリー。どこ行くの？』
花屋さんだ。
店先に鮮やかなグリーンが並んでる。どれも見たことのない植物だ。
そういえば、チューリップ……。
「リリー」
エル。
買い物が終わったのかな。
「旅に出るなら、植物なんて持ち運べないぞ」
「大丈夫。私の部屋にあるのは、ソニアが管理してくれると思うから」
外に出しっぱなしだったチューリップの鉢植えも、ソニアなら、ちゃんと手入れしてくれるよね。
「ソニアって？」
「私のお世話をしてくれていた人」
私のお願いを聞いて、朝早くから私を送り出してくれた魔法使い。
「次は、どこに行くの？」
「俺の用は終わり。リリーは、行きたい店、ないのか？」
「私？」
「この辺には、城にないものも、たくさんあるんじゃないのか？」
確かに。
城下街は、城とそんなに違わないと思ってたのに。ここはすでに、異国みたいに知らないもので溢れてる。
『どこに行く気？』
どこに行こう？
そうだ、さっき見かけた……。
『ちょっと、リリー！』
「待て」
急に腕を引かれて、エルに寄りかかる。
『歩いてる人にぶつかりそうになってたよ』
「いきなり走るな」
「ごめんなさい」
『そうだよ。ここは城じゃないんだからね？』
お城よりずっと人が多いってことは、わかってるんだけど……。
「何が気になったんだ？」
「あのお店」
「どれだ？」
武器屋さん。
「ほら、剣がたくさんあるよ。変わった武器も置いてる」
外のお店なら、私が知らないのもありそうだ。
今度は人にぶつからないように気を付けて、向かい側にある武器屋に入る。
色んな長さの剣に、槍。メイスもある。素材も様々だ。
でも、ちょっと拍子抜けかな。
そこまで価値の高いものは無さそうだ。
どれも悪くないけど……。
外でこういう武器を使う人って、使い潰すのが基本だから、あんまり高いものは買わないのかな……？
「そういえば、短剣は持ってないのか？」
「短剣？……私、不器用だから。そういうのは使ったことがないんだ」
細かい動きをするのは難しい。
「護身用にもなるし、一つぐらい持っておいた方が良い」
そう言って、エルが短剣を見に行ってしまった。
『持っておいたら？』
「短剣なんて使えないよ」
『今みたいに、リュヌリアンを持ち歩かない方が良い時はどうするんだよ』
「そんな時なんて、」
『後、いちいちボクの声に反応しないでよ。精霊の声は、他人には聞こえないって言っただろ？』
むぅ。
『その顔もやめなよ』
イリスのばか。
リュヌリアンを持たないなんて無理。
「リリー」
急に、横から頬をつつかれた。
エル。
「これ、付けてみてくれ」
エルが持ってるのは、短剣が付いたベルト？
付けるって……？
「利き手は？」
「右」
「短剣は順手で使うか？それとも逆手？」
持ったことないけど……。
どっちで持つのが良いのかな。
「腕を上げて」
「はい」
両腕を上げると、エルが私の腰にベルトを巻く。
短剣の位置、真後ろだよね？そんな位置で抜ける？
「鞘は背中に付けた。普段使わないなら、隠し持っていた方が良い」
「どうして？」
「敵に取られるからだよ」
そっか。
普段から使うなら気にしてるけど、使わないなら注意が向かないから、敵に簡単に盗まれてしまう可能性があるんだ。
「右手で、逆手で引き抜く形にした。後は、自分が使いやすいように調整してくれ」
確か、この辺……。
あった。
でも、使いにくい。
「もう少し手前の方が良いんじゃないか？」
少しずらす。
あ、この辺なら丁度良いかも。
短剣も抜きやすい。
エルがお店の人の方を向く。
「いくらだ？」
「あの、待って。ここなら……」
金貨も……。
「出すな」
「……はい」
だめらしい。
お店を出る。
どうしよう。
短剣まで買ってもらっちゃった。
良いのかな。
……良くないよね？
これ以上は、絶対に良くない。
早くお金、返さなくちゃ。
『リリー。置いて行かれちゃうよ』
あっ。
「待って」
立ち止まったエルに、小走りで追いつく。
「ごめんなさい。遅れて……」
着替えた後から、遅れてばかりだ。鎧を着てた時より身軽になってるはずなのに、さっきの方が……。
そっか。着替える前は、ずっと、手を繋いでたんだ。
「あの……。手を繋いでも良い？」
「良いよ」
エルの右手と手を繋ぐ。
あったかい手。
さっきまで手袋越しだったけど、今は違う。
でも……。
エルって、手を繋ぐことに抵抗ないのかな。こんな風に手を繋いで歩くのって、それなりの関係じゃないとしないものだと思ってたけど……。もしかして、私の持ってる知識、間違ってる？
※
さっきの服屋さんに戻って来た。
「いらっしゃいませ。……あら？」
お店の人が私を見る。
「リリーシア様、ですよね？」
「はい」
「預けてた鎧を取りに来たんだ」
「先ほど、お知り合いの方が引き取りにいらっしゃいましたが……」
「え？」
「知り合い？」
知り合いって……。
「誰だ？」
「ソニア様です」
「え？ソニア？」
ソニア、城下街に来てるの？
「わかった。……手間を取らせて悪かったな。リリー、行くぞ」
「え？うん」
エルに引っ張られて、お店を出る。
「メラニー。周囲を警戒してくれ」
『了解』
闇の精霊。メラニーって言うんだ。
今度は、エルから出て来ない。
「悪かった」
「え？」
「まさか、鎧を盗まれるなんて」
盗まれた？
どうして、そう思うのかな。
「盗まれたわけじゃないと思う」
「なんで？」
「ソニアは、私の嫌なことなんてしないよ」
エルが眉をひそめる。
「本当にソニアだと思ってるのか？」
「どういうこと？」
「鎧を盗む為に、リリーが信頼してる相手を騙っただけかもしれない」
『ボクも、ソニアじゃないと思うよ』
じゃあ、城の人間が私の鎧を持って行ったってこと？
何の為に？
『これ、鎧を取りに戻って来いってことなのかな』
戻る？
『たぶん、どうやってもリリーを捕まえようとしてるんだよ』
そんな。
どうしよう……。
エルが私の手を強く引いて、細い脇道に入る。
「絶対に俺から離れるな」
「……はい」
ぎゅっと手を掴む。
すると。
「えっ？」
「え？」
急に、目の前のエルの姿が消えた。
手を繋いでるのに、どこにも見えない。
エルの光も全く見えない。
「どこに居るの？」
「闇の魔法で姿を隠してるんだ。リリーも消えるはずなのに……」
魔法？
私にも魔法、かけてくれたんだ。
でも……。
「ごめんなさい。私……。魔法が効かないんだ」
「は？」
びっくりするよね。
「女王の娘は、一切、魔法を受け付けないんだ。良い魔法も、悪い魔法もすべて」
どんな魔法も効かない。
目の前にエルの姿が現れた。
『すごいね。闇の魔法って』
今の魔法を使えば、簡単にどこへでも逃げられそうだ。
でも。
私に魔法は効かない。
エルに手を引かれて、細い道を進む。
せっかく、助けてくれようとしてたのに。
私……。
「昼、何食べたい？」
「えっ？」
「俺が泊ってる宿は、ランチの時間は混むんだ。昼は別の店に入った方が良い」
お昼……？
今、どれぐらいの時間なんだろう。
そんなにお腹が空いてる気はしない。
それに、これ以上、奢ってもらうわけにはいかない。
「私、お金持ってないから……」
「金貨を持ってるだろ」
「でも、使えないんだよね？」
「額がでかすぎて、どこも扱えないだけだ。商人ギルドに行って崩せば使える。ルークへの両替も可能だ」
「そうなんだ。じゃあ、」
「でも、崩すのは別の街にしろ。金貨を見せびらかしていたのは、ばれてるんだ。商人ギルドで待ち伏せされてるかもしれない」
「……はい」
そこまで考えつかなかった。
冒険者ギルドだけじゃなくて、商人ギルドにも城の人間は居るかもしれないんだ。
どうしよう。
こんなことになるなんて。
城下街を出て、教育係から逃げるなんて、簡単なことだと思ってた。
でも、実際は全然、街から出られないし、城の人間から逃げることも出来てない。
しかも、こんなにエルに迷惑をかけてしまってる。
「欲しいものがあったら言え。鎧の弁償はする」
「弁償？」
「俺のせいで盗まれたからな。後でまとめて返す」
「良いよ、そんなの。武器はあるし」
リュヌリアンさえあれば何とかなる。
それに、エルが責任を感じる必要なんてない。鎧を奪われたのは私のせいだ。
鎧は諦めよう。取りになんて行かない。
「これから修行の旅に出るんだろ？そんな少ない荷物で大丈夫か？」
「うん。必要最低限のものは持ってると思う」
『本当に？』
どうして、イリスまで心配するの。
「ちょっと荷物を見せてみろ」
持っていた鞄を開くと、イリスとエルが中身を見る。
『なんでこれだけなの？最初はもっと用意してたじゃないか』
「薬は？」
「薬？」
「雨避けのマントもない」
「マント？今、着てるよ？」
「それじゃ雨避けにならない」
「でも、あんまり荷物が多くなると邪魔かなって」
『何言ってるんだよ』
だって。荷物が重かったら戦えない。
「ピクニックに行くわけじゃないんだぞ。こんな荷物で旅なんて出来るわけないだろ。今から揃えに行く。荷物が大きくなるのが嫌なら、これを使え」
エルが巾着袋を出す。
私が持ってる鞄よりもずっと小さい袋だ。
「これは？」
「圧縮収納袋だ」
「圧縮……？」
「原理は面倒だから省く。要は、色んな物を縮めて収納できる入れ物だ」
縮めて……？
「何でも入るの？」
「その袋の口を通るやつで、薬や布、紙とかだ。鉱物みたいに硬いものは縮まないから、武具なんかは無理。生ものみたいに組成が複雑なものも難しいな。乾燥パンとか組成の単純なものなら入れておける」
えっと……。色んな道具……。色んなアイテムが入る袋？
鞄の横ポケットに入れていたハンカチを出して袋に入れると、ハンカチが吸い込まれるように消えた。
『えっ？』
不思議。
「どうやって出すの？」
「仕舞った位置を覚えておけば良い。すぐに慣れる」
袋の中は真っ暗だ。
「私が吸い込まれることはない？」
「生き物には無害だ」
本当に？
巾着袋の中に手を入れる。
物が入ってる感触はある。
ハンカチは……？
『それ、本当に大丈夫なの？』
「大丈夫……」
中身が見えないから、ちょっと難しいけど……。
あ。あった？
でも、なんだか硬い……？
「あれっ？」
『薬だね』
私が出したのは、薬だ。
「癒しの薬とか、毒や麻痺を治す薬が入ってる。どれも旅をするなら必需品だ。好きに使って良い」
「良いの？」
「良いよ。そこに入ってるのは全部、俺が作ったやつだから」
「え？あなたが作ったの？」
「あぁ」
薬を作れるってことは、錬金術の勉強をしてるってことだよね。
そういえば、錬金術の道具も買ってたっけ。
硬い瓶をもう一つ出す。
これは……。
「エリクシール……？」
『錬金術の最高峰の薬だ』
アリシアが、作るのにすごく苦労していた薬だ。
「これも、あなたが？」
「あぁ」
『すごいね……』
頭が良い人だとは思ってたけど……。
こんなにすごいなんて。
「あなたって、魔法使いじゃないの？錬金術師？」
「どっちでも良いだろ」
両方ってこと？
あ。もしかして、この袋の中って、これも入るのかな。
鞄を下ろして、アイテム袋に詰め込む。
『え？入るの？』
入った。
「すごい。本当に何でも入るんだね」
荷物が一気にすっきりした。
『それ、ベルトに通せるみたいだよ』
本当だ。ちゃんと、ベルト通しも付いてる。
丁度良いから、短剣のベルトに付けておこう。
……出来た。
「ほら、行くぞ」
「はい」
これなら、荷物が増えても戦えそうだ。
