電話
その日、職場に突然シゲが電話をよこしてきた。
「おう、お疲れ。どうした?急に。」
「おう良太郎、仕事中に悪いな。今、平気か? 」
「今・・・」
辺りを見回すも事務所内には上司が在中していた為、
「悪い、すぐ折り返すから、一旦切るよ」
「おう」
「すみません、ちょっと出てきます」
流石に机の受話器を私的に使うのはよくないので、営業所からすぐ近くにある公衆電話に入った。
「もしもし私、今村と申しますが、地域企画課の北山さんをお願いします。」
取り次いでもらい、シゲに変わってもらった。
「おう、すまんな」
「大丈夫。
少ししか話せないけど、どうしたの?」
「おう、お前来週の日曜日予定ある?」
「いや、休みだけど」
「ほんと?じゃ、俺と孝輔とお前とこの間の女性達でデートすることになったからよ、出席頼むわ。」
「急だな。というかハルは?誘わないの?」
「あいつは梨江子さんとデートだって言ってたから来ない要するに3対3のデート」
「おっ、ハルが遂に動き出したか。」
「あぁ、ここ最近ずっとデートプランを寝不足になる程考えてたんだってよ。
本当はあいつを尾行したかったけど、彼女たちも仕事休みな訳だし、俺らは俺らでデート楽しむのもいいかなってよ。」
「まぁいいんじゃない、本人から結果報告待とうよ。
ちなみに、どの辺でデートするつもり?」
「今のところ考えたのはディズニーか六甲
なんだけど、六甲は遠いうえに、連休とかじゃないと無理だし、ディズニーは混んでるだろうし・・・何かない?」
「決めてないのかよ。とりあえず都内でいいんじゃない?」
「例えば?」
「・・・花屋敷」
「子供か!」
「いや、お前には言われたくないな」
「いやいや今時、花屋敷はどうかと思うよ」
「いやいや小さい頃からずっとお世話になってきただろ」
「いや、そうだけどさ。」
「というか遊園地とかから離れようよ
何かこう、小さな日帰り旅行みたいな」
「おう、なら尚更お前が提案してくれよ。
お前の得意分野だろ?」
仰る通り、旅行業界で働いていますが・・・
「急に言われたって、手配できるわけないだろう?日曜だよ、どこもかしこも満員だよ」
「あ~、そうだな・・とりあえず孝輔にも一旦聞いてみる。今日、夜ぐらいに家に電話するから」
自分から電話してきて・・・結局、孝輔に頼るとは・・・
「分かった、とりあえず頼むわ。
うん、うん、じゃまた」
少し面倒臭くなりながら、受話器を戻し電話ボックスをあとにした。
その後、仕事場に戻るも、上司達から鋭い視線を送られながら仕事に係るのであった。
更にその夜、幸輔の発案で浅草になった。