二人のランチタイム
辺り一帯をビルディングが立ち並び、それに負けまいと、サラリーマンたちが外回りに勤しむ慌ただしくもいつもと変わらない光景。
そんな大都会で今尚、挑戦する姿勢が伝わってくる会社があった。
豊橋商事
20階建てぐらいの高さだろうか。
屋上からゴンドラを使って窓クリーニングをしてる業者がいる。
一昨年、新社屋にした事もあってか新卒採用が例年の倍以上に膨れ上がった。
そんな大企業へ変身を遂げた会社の入り口にはたくさんの人が行き来していた。
数名の受付嬢が来客対応をしているその中にショートカットの女性が毅然とした振舞いを見せつつ多忙な仕事をこなしていた。
「中村は只今、外出しております。
申し訳ありません」…
「いらっしゃいませ、ご予約をお伺いします」....
「お疲れ様です、受付の豊橋です。柳瀬物産の秋野様がご到着されましたので、受付ロビーまでご案内願います。」.....
「では、すみません。先にお昼行かせていただきます」......
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賑やかな大通りを過ぎ、商店街の外れの方に軒を並べた3階建ての洋服屋があった。
全体的に白い外観でエレガントな服が展示されている
「いらっしゃいませ、どうぞご覧ください」...
「よく似合ってますよ、ご試着される際はお気軽に訪ねてください」....
「お会計で?ありがとうございます、ではレジまでお持ちします、裾直し等は大丈夫でしょうか?」.....
「どうもありがとうございました、またの御来店お待ちしてます。」......
「お先に昼休み入ります」
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噴水広場のある大きな公園
戦場のような社会で日々、仕事に勤しんでいる会社員たちも休息が必要なように、オフィスの柵から解放されバレーボールを楽しんでいる男女のサラリーマンたちもいれば、激務からか睡魔に勝てず鳩に囲まれながらベンチで爆睡中の会社員もいたりする中、心の中で敬礼しつつ、私たちもその通りのベンチに腰かけた。
「お疲れ梨江子」
「お疲れ様..あ~疲れた。
売上伸びないのに、接客してやる事多いし、仕事は多いし、給料日前だし。」
「大変ね。接客業は」
「あなたも似たような仕事でしょ?
というか、あんまり疲れてない感じがするけど」
「そんな訳ないじゃない、もうクタクタよ。
アポ取りつけたって来た人と日程が違うって社員との間を行ったり来たりするし、来訪予定はいってる人が1時間経っても来ないし、
来たかと思ったら何言ってるか解らないお爺さんだし。最終的に警備員さん数人に渡したりけど、もう散々だったわよ。」
「受付嬢も結構大変なのね...」
「もう慣れたけどね。そうじゃなかったら、
務まらないわよ」
「お互い、大変よね」
「まったくよ」
「あ~早く休みにならないかな・・・
あっ、そういえばこの間、夜遅く高野さんから電話きたのよ。」
「高野さんが?何て」
「デートをしませんか?って夜遅くによ。
丁度寝る前だったからよかったとはいえ、時間を考えなかったのかしら。」
「何時ぐらい?」
「11時ぐらいだったかな」
「あんまり、いい時間帯じゃないわね
それで、どうしたの?」
「特に断る理由もなかったから、OKした」
「そこは断らないのね。」
「だってせっかく誘ってきたのよ、本命ではなくても、嬉しいじゃない。」
「高野さん、嫌?」
「嫌ではないけど、繁治さんを見ちゃったらどうしてもそっちにいっちゃうよね。」
「あー、確かに二枚目だとは思うけど。
何ていうか、ギザな感じがちょっとね・・・。」
「気にしすぎよ。そこがいいんだから」
「ま、当たって砕けてみなさいな」
「砕けません! というかあなたは誰がいいの?」
「断然、竹中さん」
「ぶれないわね」
両者、確固たる決意表明をし、お互いに意中の人間を語り、午後の仕事に戻った。