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密談(飲み屋)


ガヤガヤ

「○○課長が、今日もよ~」、

「○○さんとはどうなったの??」、、

「取引先の客、怒らせてさ~」、、、


一世代前に流行ったムード歌謡のBGMが流れつつ、仕事帰りのサラリーマンやOLなどが

日頃の喧騒を忘れるほどに愚痴や色恋事などで店内は活気づいていた。


「それで良太郎の具合はどうなったんだ?」

枝豆片手に春雄は聴いてきた。

「この間、電話で聞いた限りでは職場復帰してたそうだったし大丈夫そうかな。」

揚げ豆腐をツマミつつ答える孝輔

「あいつ、ちょくちょく身体壊してるイメージあるよな。」

今度は日本酒を挟みながら聞いてきた。

いつもと違う場所ではあるがHOT SOUNDSと同じ位の頻度で利用している居酒屋だ。


「んー言われてみればそうだな。」

お通しに出された切り干し大根をツマミつつ返答した。

今日は仕事帰りに春雄に呼ばれ、ここで飲み明かしていた。

「音楽やってた時とかみんなで遊びに行く前とかも大事な時に限ってよくあったよな?

「あ、どうも。」」

話を振りつつ注文した焼き魚の盛り合わせを受け取る春雄

「勝負事とかに弱いんじゃない? 「スミマセン、こっち日本酒おかわりで」」


活気ある居酒屋で肴を堪能しつつ、二人で酒盛りを続けた。


「まあ、その傾向あるよな。

音楽と女、天秤にかけても曖昧だったもんな。 ゴク・・んぁ~っ。」

「要は不器用ってことだろ?手先は器用だけどその反面、仕事やら女絡みのことになると集中しちゃって鈍くさくなる。

人間らしく振る舞うのが不器っちょなんだよな。…あ~。これ美味い。

大将、これ美味しいですよ!」

店内の地酒と至高の肴を味わいながら返答した。話を聞いているのやら、聞いていないのやら。

「…お前も人の事言えないだろ。今もそうだけど…」

「何が?」

「…なんでもないよ」

「俺は仕事もプライベートも充実させてるからノープロブレムだ」

「尻に敷かれてるだけだろ。」

「そんなことはない。」

「どうだか?」

「俺のことはいいからよ。良太郎どうにかしようぜ。」

あいつ、このままじゃ仕事だけが生き甲斐の仕事人間で終わっちまうぜ。」

「いいことじゃない。」

「好きな子が定まってないんじゃ、一生優柔不断で終わっちまうぞ。

そんなんじゃこれから先、出世もできないぜ。」

「…そんなお前は出世意欲はあるのか?」

「ない。」

「……あ~あ。」

「俺の事はいいって言ってるだろ。

バンドやってた頃はあいつも活気があってよかったじゃないか。」

「…まあ、そうだったな。

あいつ、もう決めた人いるんじゃないかな。

そんな雰囲気出てるから」

「おぉ、本当か。誰だよ?」

「俺はあいつじゃないからハッキリとした事は言えないけど。

あいつ、友枝ちゃん気になってるんじゃないかな。」

「友枝ちゃん?」

「前にも話したと思うけど、佑三子ちゃんに似てるから無意識に彼女にも目がいってるんじゃないかな。あいつ。」

「俺にはそんなに似てるっていう感覚が分からないけどな。」

「ま、あとはあいつ次第だよ。

振り向かせるもフラれるも。

自分で決めることだ。

あ。あと、青葉ちゃん。

何でも今回、あいつを看病してくれたの青葉ちゃんなんだってさ」

「ブッ!?青葉ちゃんってあの青葉ちゃん!?」

「汚いな。お前 ! あと他にどの青葉ちゃんがいるんだよ?」


相変わらず汚いなこいつは。

口から吹き出したのをおしぼりで片付けさせた。

「だってよ青葉ちゃんと今までそんな場面あったか?」


「あったろうが。それっぽいの何回か。デートの時とか二人で昼飯とかこの間の結婚式の行き帰りとかよ。彼女の場合、前から良太郎の事気になってるの見てて分かるから」

「ふーん青葉ちゃんとね~…。」

「あれだけ、アプローチかけてるんだから流石のアイツも気づいてるだろうし、あいつも今、揺れてるんじゃないかな。」

「ほぉ~。いいね。モテる男は。」

「あいつだけじゃなくて、シゲもモテまくってるけどな。」

「あいつの場合は昔からだし、相変わらず梨江子さんはあいつに夢中…。三沙さんとは上手くいかないだろうな。あの調子じゃ。」

「わかんないよ。もうあと一押しであいつとペアリングするかもよ。」

「だとしたら花束の効果は絶大だな。」

「シゲやっぱり、枯らしたらしいぜ」

「ま、あいつに花を育てることは出来なかったってことか。

結局、花もだけど人との時間を大事に出来ない奴だからな。

三沙さんとペアリング出来たら、そういったとこも改善されてきそうな気がするんだよな。」

「あいつそんな器じゃないと思うけどな…」

「こればっかりは仲良くなるのを見守るしかできないからな」

「まぁ、シゲはシゲ。良太郎は良太郎ってことでお前もお前でアクション起こせよ。」

「そうだな。」

「今日も相談があって呼んだだろ?」

「正解。」

「しっかりここの支払い頼むぜ」

「おう、任せとけ。…ってええ?!」

「そりゃ、そうだろ。お前が呼んだんだから。」

「頼む。給料日前だから金欠なんだよ!

おまけに借金もある身分だからさ」

「借金してる分際で金のかかる外食してんじゃないよ! 」

「そこをどうかお見逃しをお代官さま。」

「ならん。お前の財布から馬券で当てた金を使う。なければ、親に出向いて払わせる。

決定じゃ。」

「なんで知ってんだよ?!」

「お見通しだ。何もかも」

「もしかして超能力者?」

「…ふふ。」

「え?」

「さぁ、本題に入ろうか。

何の相談だ?」

「…ああ。

(何の間だったんだ?今の??)」

戸惑いつつも、話を切り出した。


「梨枝子さんのことなんだけどよ

最近、買い物とか同伴、拒否されててよ

もう、用済みになっちゃったんじゃないかと思ってさ」

「うん。それで?(トクトク….)」

「気になって電話してみても予定があるとかその日は出かける気分じゃないとか言われてさ。

俺、ついに嫌われちゃったんじゃないかと思ってさ」

「うんうん。それで?( ゴクゴク )」

「もう毎日気になって眠れなくてよ」

「プハ~」

「……」

「それで?」

「興味ない?俺の話?」

「しっかり聞いてるよ

要はほかに男が出来て、お役御免か聞きたいってことだろ?」

「いや。そうじゃなくてさ。」

「シンパイスルナ、お前に興味がなくなったんじゃない。彼女がおまえとの関係に嫌気が差し始めてきてる証拠だよ。」

「ええ!?」

「いつまで経っても、使用人風に話している上に何でも貢ぐ姿を見せられて、彼女の中ではお前は都合のいい男に成り下がってる証拠だ。」

「そ・・そんな・・・。」

「ま、でもだからといって落胆するのはまだ早い。お前にもまだ逆転するチャンスが残されている。」

「ほ、ホントか!?」

「お前が男らしい態度を出すことだ。いつまでも低姿勢でいないで、頼れるとこを見せることだ。そうすりゃ彼女も嫌でもお前に振り向くだろうぜ。」

「ほう!そうか!!例えばどんな風に?」

「それは自分で考えろ。俺が主導でやったら本当にお前がやったか不気味に捉えるだろうし、それ以上にお前のハードルが上がって

逆に成果残せないだろ?」

「あぁ、確かに。」

「何でもいい。彼女に格好いい姿を見せるよう心がけろ。相手が彼女なんだから身嗜み気を付けるとか服や靴、アクセサリーにお金をかけたりしてどんどん話題になることを身につけていけ。護身術とかでもいいぞ。

いざという時、彼女の為に身体を張れる男になるんだよ。」


「ほ~う。そういうことか!

なるほど、 ファッションも特技も増やしていくのが近道か。なるほど、なるほど」


「まぁ、要はエスコートできるぐらいになればいいってことだ。今考えれるやり方はこれぐらいだ」

「なるほど、自分磨き。

確かにここ最近、忘れて去っていた事だな。」

「普段、どんな格好で彼女と会っていたんだ?」

「暑くなってきたのもあったからポロシャツか生地の薄いジャケット羽織ってた。」

「下は?」

「チノパンとかスラックスとか」

「…お前さ普段、ファッション雑誌とか眼通してる?」

「なんで?全然。」

「やっぱりな。」

「何?問題あるの?」

「お前、仮にも仕立屋だろ?最新の流行とか知っとけよ。」

「仕立屋っつても、勧めるだけだぜ。会社に着てくやつの

俺らが目立ってどうするんだ?」

「相手は服飾の最先端を歩んでるんだぞ

そんなんで釣り合う訳ないだろ。」

「あ~いや、男は中身で勝負っていうか…」

「それが問題なの!そういうとこから変えていかないと何も始まらないぞ」

「…はい。」

「とりあえず、今日はもう店とかやってないから、明日にでも本屋とか行って雑誌を片っ端から見る。それで自分から足運んで、色んなブランドの服を買いに行ってこい。話はそれからだ」

「分かりました…。」

「よし。」

「それで、あの~」

「何だ?」

「どういう雑誌がいいとか?いくらぐらいかかるか?とかもご教授願えたらいいんですが…?」

「……」

「何しろお金ないもんで(笑)」

「俺から借金でもする気か?」

「孝輔さんには敵いませんな(笑)」

「馬券で当てた金使えばいいだろが」

「ここ来る前にいくらか使っちゃいましてwww残ったお金だとこの店のお代でパァになっちゃうもんで」

「てめー消費者金融で借りて、破産しろ!

んでもってフラれろ!!」

「そんな殺生な!」

「じゃ、今度、結果教えろよ。

大将、お勘定。こいつが払いますんで。」

「!?あっ、ちょっ…」

「どうも、ごちそうさまでした。また、来ます」

『はい、ありがとうさん!』

食い逃げの如く、店を立ち去る

活きのいい大将の返事が店内にこだました。


「さて、お客さん。お会計で?」

「あ…はい。おあいそお願いします。」

「全部で3万2800円になります」



「終わった…足りない……。」


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