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二人の約束

ここ暫く、休みをもらってた事もあってか

会社のデスクには付箋メモが至るところに張られていた。

覚悟はしていたが、嫌がらせといわんばかりに必要あるべきことと不必要なものがごちゃ混ぜになっていた。


(やっぱりね…。)

「…友枝ちゃん、おはよう。」

「!?」

誰もいない薄暗い部屋でそれも背後から声をかけられてビックリした。


「…おはようごさいます、(かおり)さん

いたんですか?」

「ここ数日、張り込み準備で泊まり込みよ。

あー背中痛い…。」


3つ上の彼女は本宮薫(もとみやかおり)さん

普段から彼女と現場に行ったり、作業を分担している。

私よりも多く職場に泊まる事を聴いていたが、この日はデスクの下に段ボールを敷き、寝泊まりをしていた。

最近は二人とも家に帰れることが多かったので忘れていたが、固い床で寝た翌日は身体中のあちこちが痛くなる。

「お疲れ様です、でもって私ばっかり休み貰っちゃってすみません。」

「ああ、いいのよ。

友枝ちゃんは気にしないで、

休める時はしっかり休んでおいた方がいいのよ。

それに友達との時間は大切にしときなさい。」


そう言って、いつも私は彼女に甘えさせてもらっている。

その分、1日の仕事の密度は尋常じゃないけれど…。

「本当にいつもありがとうございます。

あっ。今コーヒー淹れますね」

「うん、ありがとうお願い。

あっ、ブラックね。私。」

「はい!」

「デスクも本当にひどいわよね。人員少ないからもっと人を寄越してって言ってるのに。

お金ケチってるからか、私たちに倍の仕事押し付けて。」

「本当ですよね。

ウチは取材含めて、私たちと○柴さんと外注の人たちの3組ですからね。

片や、記事の文章とかレイアウトとかもほぼほぼ私たちのですからね。」

「ほとんどの記事をそのまま出して、文章とか然り気無い変更のみ仕事してるしね。

それ以外は定時に帰るし、新聞社の人と将棋さしてるからね。

いい御身分よね、憧れちゃうわ。

あっ、ありがとう。」


そう会話しながら、熱いブラックコーヒーを渡した。

この先輩の影響で私もコーヒーを飲むようになった。

「まあ、何にせよ今が辛抱時期よ。

もうすぐ人事異動の季節だから、これで新しい人が来てくれるだろうから。

これを乗り越えたら、自分の自由な仕事も出来るし、我が儘も言えるようになるだろうから。」

「そうですね。その際に希望の編集部とかにも移りたいものですね」

「そうね、その場合には思いきって二人で他社の部署に移籍するのも悪くないわね」

「…本気ですか?」

「あら、アタシとは嫌?」

「いや、全然。寧ろ私でいいんですか?」

「友枝ちゃんだからいいのよ。一番やり易いし、同じ女性でもあるから共感できることの方が多いからね。アタシたちの代で働き方とかも変えていかなくっちゃね。」

「はい、 了解です! 」

「よろしい。じゃ今日から休んだ分取り返すわよ。という訳で早速コレよろしく」

そう言いながら分厚い原稿のまとめが渡された。

「これ、ひょっとして…?」

「昨日から徹夜して作成した今月号の記事の原稿。添削よろしくね。」

それとこれから行く取材先のまとめ。目通しといてね。」

「ぉぉ~…」

そうしていると、他の人たちが出社してきた。

「おはよう」「おはようございます」

「「あっ、おはようございます」」

(今の話は二人だけの秘密ね。)

(はい!)

コッソリと伝えた

「? …二人で何の話? 」

「あ、いえこれから行くとこの最終確認です!」

「そうそう!」

「あぁそう、頑張ってね。お二人さん」

間一髪だった。


二人の目標であり、二人の約束。

これは頑張らないとな…。

そう思いながらも、

長い1日がまた、始まった。


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