出会いは急なもんで。(4)
4.未知なる遭遇
「ねぇねぇ三沙は誰がいい?」
「あたしはやっぱり王子様かな」
「えーずるい、私も王子様がいい」
「あんたは歌手がいいってさっき言ってたじゃない」
「歌手もカッコいいけど、王子様もいいじゃない」
「あんた、いつもあたしの選ぶじゃない」
「そんなことないわよ、たまたまよ!」
「どうかしらね。 青葉と友枝は?」
「私はあの人」
「さっきの人?」
( ( ・・・ ) )
「?」
何だか視線を感じた気がし、辺りを見回した。
気のせいかな。
「!」
「!」
目があった。地味な会社員
とりあえず、目をそらそ。
それにしても、シゲは相変わらず声が出てるな。
「青葉、さっきからあの人に対してすごいわね。」
「運命感じちゃったの?」
「仕事場で見かけた事があったような気がしたから。だからかな。」
「えっ、青葉の職場って旅行代理店だよね?
お知り合いの方?」
「いや、初対面だけど、少し前に他の営業所の方々が来たときがあって、その時に見かけたと思う。」
「へぇ、意外だね。青葉は一回り上の人を好きになってたし。」
「友枝はどの人?」
「私は見た目だけなら、ドラム叩いてる人かな。他の人たちもいいけど」
「おっ! 遂に友枝も男の人ほしくなってきたのね?」
「違うわよ、強いて言うなら。仕事が忙しくて恋愛どころじゃないから」
「まぁそうだよね、今日も偶然休めたんだもんね。いつもなら私たちの誘い断るし」
「そんなに仕事忙しいの?」
「常に色んな所へ動きまわってるからね」
「大変だよねカメラマンの仕事」
「まぁ、本当は式場とか人の幸せな瞬間とかの写真を撮りたくて入社したけど、人手が足りなくて報道の部署になっちゃったし、贅沢は言ってられないわよね。」
「友枝だけ何だか可哀想、それに比べて私たちは好きな仕事して、好きな男を探して・・・」
「はいはい、分かった分かった
私は私。あなたたちはあなたたち」
これを毎回聞くと惨めな気分になるから、早々に終わらす。
「演奏終わったみたい。」
お仲間の元へ戻る一行を目で追っていると
歌手がこちらを見た
「どうしよう、目が合っちゃった!?」
「いい機会よ!当たってごらんよ」
「え~、でも・・」
「・・ねぇ」
「なに?友枝」
「何か私たちの方を見ながら話してない?」
一同、バンド会社員達に目を向けた
「そうかしら?」
「俳優さんがこっちを見ながら話してるし、
あっ、こっちに来る」
「「!?」」
「えっ!?ちょっと待ってまだ心の準備が」
「心配しなくても、あんたに話しかけないわよ」
「ちょっと、それどういう意味?」
「あっ来る!」
「すみません、僕らと飲みませんか?」