歌のお姉さん②
『You’re My Only Shinin’Star』
ステージに立った瞬間、先ほどまでとは打って変わって緊張が消えていた。
今となっては先程とは嘘のような立ち振舞いをしていた。
「今日は素敵な女性ボーカリストを呼んでるんで皆さんに御披露目したいと思います。
三沙さん。」
「こんばんは、初めまして三沙です
今日は初めてステージに立ちますが、応援お願いしまーす!」
先程とは違い案外、緊張はしていないのか
前説もお手のものだった。
「何でも聞いたところによると、今日は結婚式の二次会でいらしたそうで。」
「はい。職場の先輩の結婚式に招待された帰りでこちらを利用させていただきました。」
「それは本当にありがとうございます。」
「おまけにブーケも受け取っちゃいまして(笑)」
「あら、それはスゴい!ブーケを手にして、マイクも手にするとは強運の持ち主ですね!」
「ありがとうございます!」
パチパチパチパチ
店内のステージ前にいるお客様の拍手ももらいながら、音楽番組のフリートークのような進行の仕方で慣れたような返しにどんどん進んでいった。
「さて、自己紹介も済んだことですし、
今日は何を歌ってくださいますか?」
「N山美穂さんの『You're My Only Shinin' Star 』を歌わさせていただきます」
三沙の解答に観客が沸いた。
それもその筈、巷で大人気の知る人ぞ知る有名な歌手の楽曲だからだ。
「大人気の楽曲ですね。それではどうぞ」
フリが行われたと同時に演奏が始まった。
『 ・・・・・・・・・・♪︎
♪︎ ~ ♪︎ ~ ♪︎ ~ ♪︎ ~
・・・・・・・・・・・・・ ♪︎ 』
心に問いかけてくるような優しいメロディー。
そして、
癒されるような歌詞と艶のある三沙ちゃんの歌声が見事に調和され、フロア内が三沙の世界観一色に染まっていた。
新たな三沙の素質に感動しながら、隣にいた友枝、青葉に聞いてみた。
「三沙ちゃん、歌うまいね。」
「三沙ってああ見えて声楽の稽古もしてたのよ。」
「通りでプロ顔負けの上手さだ…」
「歌以外にもピアノ、手芸、茶道もやってたんだって」
更に友枝が返した
「…三沙ちゃんって一体何者?」
「結構裕福な家の令嬢なのよ。
本人はあまり話さないけど」
青葉と双璧をなす程のすごい猛者がここにもいたことに驚いていた。
「何気に皆、すごい経歴の持ち主だったんだね。」
「そんなことないわ。
私達からしたら、あなたたちの方がすごい人たちよ」
友枝が返した。
「なんか、すごく場違いな気がしてきたな…」
友枝の返答に自信を失くしかけていると…
観客から拍手が飛び交っていた。
どうやら世間話をしていた一瞬の間に
演奏が終わっていたようだ。
そうして、演奏を終えた三沙が観客に手を振りながらステージを後にすると同時に入れ替わるように繁治がステージに繰り出していた。




