豆腐(3)
「あいつにも言ったんだけどさ、彼女は…なんかこう佑三子ちゃんに似てる気がするんだよね。」
「佑三子ちゃんってあの佑三子ちゃん?」
春雄が返したので
「そう、あの佑三子ちゃん」
と返してしまった
「どの佑三子ちゃんだよ。」
更に連れて繁治も
トリオ漫才になってしまった…。
「佑三子ちゃんだよ。良太郎の彼女だった。」
「おぉ~」
「あ~懐かしいな。元気にしてるかな?」
「きっと元気だよ。結婚した訳だし」
「でもなんとなく分かる。」
と繁治。
「そうか?顔は勿論違うけど、中身も違うと思うんだが。」
と春雄。
意見が別れた。二人はどっちかで一緒の回答になると思ってたんだが。
「でも佑三子ちゃんて久しぶりに聞いたな。」
「確かに。最後に会ったのって…オーディションのテープ録音の打ち上げの時だったよな。」
「あの時も普通に俺たちとも良太郎とも他の人たちとも喋ってたもんな。」
「もしかしたら、その時から色々と考え始めてたのかもな。」
「かもしれないな。でも俺思ってたんだけど…」
慎重に話し出す春雄
「あいつにも問題あったんじゃないかなって」
「どういうこと?」「何々?」
俺と繁治は珍しい展開な為だけに、春雄に注目せざるを得なかった。
「あいつってさ。案外、不器用なところ多いじゃん。」
「お前も不器用だけどな。」
「間違いない。」とシゲと同調してツッこんだ。
「ほっとけ、俺はいいんだよ。
まぁ、その良太郎ってさ、目の前の事に一生懸命になりすぎて、他の事に目が行かなくなるっていうかさ。」
「あ~。なんとなく分かる。」
「確かに。そういう場面が想像つく。」
そう、確かに春雄の言う通りだ。
この頃の俺たち、特に良太郎にとってバンド人生の命運がかかってる時だった為、良太郎はいつもピリピリしていた印象があった。
「あの日の打ち上げの時でも、盛り上がっているとはいえ、佑三子ちゃんが話しかけようとしているのに、他の人と話に夢中になってたのを俺、見ちゃったんだよな。
その時の事は今でも気になってんだよな。」
「まぁ、でも佑三子ちゃんは反論する時もあったけど良太郎が暴走気味の時は支え続けてくれたしな。今となってはそういったのも彼女を苦しめてたのかもな。」
そう。彼女は普段は明るく振る舞っていたけど内心は助けてほしいって言ってる様な気がしていた。
同様に友枝さんもサバサバしつつもどこか助けてほしいと訴えているようなそんな気がしていた。
「だからさ、あいつは今は仕事っていう打ち込めるものを手にして、元気になったけど。
これから先も目の前のことに集中しすぎて、大事なことに目がいかなくなるかもしれないんじゃないかって、たまに不安に思うときがあるんだよな。」
珍しく春雄が相手を思いやっている為、不思議な感覚になっているが、春雄の言う通りだと思った。
「そう考えたら確かに俺も思う。
あの事がきっかけであいつは新しい世界を見つけて、天職というのも手にしたけどまた同じ失敗するのもあり得るなって」
繁治も同調した。
「だから、あいつには今のままでもいてほしいけど、その分、冷静に物事を見極める力が備わっていてほしいんだよな。」
「「お前もな。」」
二人して再び春雄を突っ込んだ。
良太郎以上に猪突猛進気味な部分がある為ツッコまざるを得なかった。
いつにない丁寧すぎる発言をする春雄に気味の悪さを感じるが確かに春雄の言う通りだ。
あいつの苦しむ姿は正直、もう見たくない。
全てがおじゃんになり、意気消沈したあいつは本当にツラそうだった。
「まぁ、でも良太郎にも言ったんだけど。
友枝さんや青葉ちゃんたちが助けを求めてるときは俺たちが手を差しのべてあげようぜ。」
「おう、任せろ!」
「そんな場面が来ないことを祈るけどな!」
二人とも良太郎と同じ反応だった。
彼女たちとは友人以上恋人未満だが、俺たちは交際相手で揉めずに済み、それぞれにカップリング出来る日も遠くないと思った。同時に俺たちの友情はやはり固いものなのだと認識できた。
しかし…
「にしても春雄どうした?」
「何が?」
「お前今日変だぞ。いつもだけど」
「はぁ!?何が?」
「だって、お前いつも間抜けなことしか言わないじゃん。」
「えぇ!?」
「間抜け専門と言えば春雄じゃないか。」
「そうそう。お前が真面目な顔してモノを言い出すから明日、天気荒れるんじゃないかとおもってヒヤヒヤしたぜ。」
「・・・お前ら」
「まぁ、でもたまには、春雄もしっかりとした場面がないとただの馬鹿になっちゃうからな。」
「そうだよそうだよ。春雄の見せ場がないと、視聴者もついてこないし、梨江子さんだって相手にしてくれないかもしれないしな。」
「お前ら俺を何だと思ってんだぁーッ!!!」
湯沸し器の如く、顔を真っ赤にした春雄が座卓をひっくり返そうとした。
夜は長い。




