集団散歩(5)
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「良太郎さんはどうしてこの仕事をしようって思ったんですか?」
青葉ちゃんが俺に振ってきた
「うーん、今から5年ぐらい前に一人でフラッと海外に旅行したことがきっかけかな。
それまでにも旅行に行くことはあったけど、国内だったからなのか、海外に行ったときほ ど心にくる衝撃みたいなものがなかったんだよね。」
「そうだったんですか。」
そう、あの時は何も手につかず、毎日をただボーっと生きている感覚だった。佑三子に突然の別れを告げられては、音楽会社のオーディションの不合格、バンドの解散と人生でこんなに負の連続が続くのかと散々だった。
そんな折に孝輔たちが俺を海外旅行に行かせてくれた。
あの地へ足を踏んだ時は感動の連続だった。
落ち込んでいたからか視界に入るもの全てが新鮮だった。
人種、生活、景色、文化・・・ありとあらゆることが人生の中で新発見だったんだ。
「青葉ちゃんは何で?」
今度は俺が聞き返してみた
「私は小さい頃から自由にさせてもらえなかったからですかね」
またまた、重い話をさせてしまったかと青葉ちゃんの方を見つめる。
「両親が教育熱心だったからか昔からお稽古事をたくさん習わされてたんですよね。
志望校も大学も親の選んだ所に決められて、その為に勉強も頑張って、その縁あって合格できて高校、大学と難なく進んでこれたんです。
だけど大学最後の年を迎えたとき親がお見合いの話をつきつけて来たんです。」
「見合い …なんだか早いね」
「それまでは親の言うことを聞いて生きてきたんですけど、周りの友達たちは学生生活を謳歌して、進路も決めてそれに向けて進んでいるのに何で私だけって思ったんです。
気がつけば口論が始まっちゃて、私その場で言っちゃったんです両親に」
「・・どんな風に?」
「私は私の人生を歩いていきたいの ! 親が決めた人生を歩んでいくのが幸せだなんて思わないで ! って」
「結構・・強めに伝えたんだね・・・」
「その時の両親はびっくりしてましたね、いつもなら素直に言うことを聞く娘が反抗してきた上に大きな声で言ったもんですから」
「あんまりイメージわかないな、何かこう青葉ちゃんって聞き上手で優しい子っていうイメージがあるからか」
「そうでもないですよ! 私、結構はっきり言うときははっきり言う方ですし、三沙たちにもたまに毒を吐くときありますし(笑)」
人は見かけによらないなと感心してたところで青葉ちゃんは続けて聞かせてくれた。
「それで私も当時仲良くしてた友達と旅行に行ったんですよね。
普段なら反対する両親も何も言わずに承諾してくれて。
その結果、これまで味わったことのないぐらいの新鮮な気持ちになれたんです」
そう話してくれる彼女は目がキラキラしてるように感じた。
「だから、私も旅行関係の仕事をしたいって思ったんです。最初はスチュワーデスも憧れたんですけど、どっちかというと旅行の提案に携わりたいって思ったんですよね」
「それで代理店業務に」
「そう、だから良太郎さんと結構似てるんですよね。きっかけは。」
「まぁ。確かにこの仕事選ぶ人ってみんな旅行が好きか、旅先でキッカケを掴んでくる人がほとんどだしね。」
「でもこの仕事やってて、本当によかったなって前よりも思えてきたんですよね。」
「念願叶って自分で選んだ仕事だったから?」
そう、俺が彼女に問いかけると
「それもそうですけど、こうして同じ境遇の人と話せるからです。それに・・・」
「それに?」
「良太郎さんっていう先輩に会えたからです!」
内心、彼女が自分に気があることを打ち明けてくれる予感がしたが、違った。
「これからも仕事上で困ったこととかあったら、話聞いてくださいね。今村先輩!」
悪い気はしないからいいか、先輩として頼られてることだし。
「俺に出来ることならお任せあれ!ww」
「wwww」
頼もしい後輩が出来た。
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「・・・まだ、告白するのは早いよね」
不意に彼女がボソッと口ずさんだ気がした。
「どうかした?」
「うんうん、何でもないです!そろそろ行きましょう。皆も集まってるだろうし。」
「うん、行こう」
この時はまだ知らなかった、彼女の心の内を。




