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言い伝え

『一日に十人食ってやろう。』

とその竜は言いました。

なんとしても、竜に食われてはなりません。

魂まで消滅してしまうからです。そうなるともう、食われた人は輪廻転生の輪の中から外れて永遠に生まれ変わる事が叶いません。

竜は、逃げ惑う人々を捕まえて、一人また一人と飲み込んでいきます。


そこへ、リューク・サデリンは立ち上がりました。

『お待ちなさい、竜よ。人々を食べるのは止めるのです』

『俺とて食べねば飢えて死ぬ。お前ら人間だって食べるだろう』

『それでは、竜が飢えぬように山には果物を沢山実らせましょう。人々を襲わないと約束できますか?』

『それならば約束しよう』


一度は山へ帰った竜でしたが、人の味が忘れられません。

十日が経った頃、またしても人々を襲いました。


『約束を破りましたね』

リューク・サデリンは竜を人間に変えてしまいました。

人間になった竜は人間を食べる事ができなくなりました。

なぜなら、竜は竜を食べないからです。


こうして世界に平和がもたらされました。

それからというもの、年に一度ヒト化を披露し、魔法使いを讃える祭典が行われるようになりました。





✳︎ ✳︎ ✳︎





「いいか、俺は人なんて襲ってないぞ」

「じゃあなぜ成敗されたのかしら」

というと、明らかにベルヴルムはムッとした。

「匂いを嗅いでいただけだ。魔力の高いものの匂いを嗅ぐのが俺の食事なんだ」

「か、変わったお食事ね…」

では、言い伝えは嘘なのか。


「なんだよ、お前だって腹は減るだろう」


それは減るけれど…匂いで満腹になるのか疑問だ。

はあ、とため息をつく。


「匂いを嗅いでるのが襲っているように見えたんだろうよ。人間は何でもでっち上げるからな」

「それは、私の祖先がごめんなさい」

頭を目一杯下げた。

「ん、分かればいいんだよ」


私だってモーネを人にした。

挙句本人の意思と関係なく寿命を譲渡した。

全て人間の身勝手だ。

強制されたからと言って、私に王太子を糾弾する資格はない。


しゅんとして俯いていると

「まあ、なんだ。分かればいいんだよ、わかれば」

と上から声がした。

「いえ、サデリン公爵家がヒト化した生命は数えきれないでしょう。その血を受け継ぐ私は責められて当然なのです」

目を瞑って肩を落とす。

「あれ、あれだぞ、意外と人間って快適だからな!竜はほら、デカいし動けば何かにぶつかるしで…」

そっと肩に手が当てられる。

とっても遠慮がちだ。

「ベルヴルムって…」

「なんだよ…」

「いえ、思ってた感じとあんまり違うから…びっくりして」

と言ってくす、と笑った。


「ん、笑った顔の方がいいぞ、お前」

さて、と言って動くとそれだけで風を孕む裾。


「我が王宮に案内しよう」

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