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花畑を抜けた先-ベル視点-

竜に戻りたいかと言えば答えはNOだ。

なぜなら、いつの間にか竜で過ごした時間よりも人間の姿で過ごした時間の方が長くなってしまったからだ。

もはや竜だった頃の体の感覚が分からない。

もし今竜の体に戻ったとしたら、困惑するしかないだろう。


ミネルヴァは言った。竜と結ばれれば良かったんじゃないかと。

本当に人間は愚かだ。愚かで浅はかだ。

けれど、ミネルヴァは、ミネルヴァだけは、どうしようもなく愛おしい。


「…食糧だって?馬鹿な…ただの食糧だったらこんなに気持ちが掻きむしられるかよ」

はあ、とため息を漏らした。

食糧相手なら、泣こうが喚こうが気にもせず好き放題していただろう。


「くそっ」


ミネルヴァがどこにいるかくらい、大体予想がつく。

お姫様のお迎えにずんずんと歩く。衣擦れの音が心を落ち着かせてくれた。


(こんなにも苛ついていただなんて、馬鹿なのは俺だ)



二人だけの場所には、いつもたくさんの花が咲き誇っている。


「おい、ミネルヴァ!どこにいる?いい加減に機嫌を直せ」


少しだけ強い風が吹いて、花びらが舞う。そこに彼女の姿はない。

(隠れているのか?しょうもない)

むくれて隠れるミネルヴァを想像すると無性に可愛らしく思えてくる。

(しょうもないのも…俺だなあ…)


風が強くてサデリンの匂いがわからない。仕方なく大きな声を張った。


「迎えにきたぞ!お姫様!!むくれてないで出てこい!」


揺れる花達だけがそこにあった。


「どこだ!?」

花をかき分け、ガサガサと音を立てて奥に進んでいく。

「ミネルヴァ!!」

かき分ける手が乱暴になる。

「俺が!俺が悪かった!」

大きな声は城にまで届いていそうだというのに

「どこだミネルヴァ…」

ため息ひとつついて、あたりを見渡す。

「帰ったら話そう!何でも話すから!頼むよ…」


その場に力なくへたり込む。

(何を今更焦っているんだ。だせぇな…)

ミネルヴァを傷つけたのは他でもない、自分自身だ。

分かっている。彼女が何を望んでいるのか、どうして俺を気遣うのかを。


黒く長い爪を見る。

(いっそ剥がしてしまおうか。いらねぇだろ、ミネルヴァが泣くなら)


僅かにサデリンの匂いが鼻腔をくすぐった。

風が止んでいる。

芳しいそれは近くにいるほど強い匂いではない。


「ミネルヴァ…」

匂いのする方に向かって歩き出した。


ガサガサと言う音はやがて止み、衣擦れの音だけが響く。


(花畑を抜けた先には何もないぞ)


匂いは強くなく弱くないまま、変化がないことに気づく。

近づいたのならばそれだけ匂いが強くなるはずだ。弱くなれば遠のいているということ。

(距離感が変わっていないのか。移動中ということか?)

ならばそれより早く進めばいいのだ。


走り出したその時、進むべき方向で爆発が起こった。

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