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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

骨女

作者: マサコンプレックス

痩せてる女が好きなんだよね。


私はこの言葉を一生忘れない。


黒くストレートのサラサラヘアのクラスメイト、村井颯。スポーツ万能・高身長・イケメン。この3つを兼ね備えている村井が私は好きだった。高校三年生の夏、私はその気持ちを伝えた。「痩せてる女が好きなんだよね。」ただそう言われた。「えー私のことデブって言いたいの!?嘘コクだし。」

当時の私は太っている方だったのかもしれない。ぷよぷよと肉付きの良い二の腕、笑うと頬の肉で潰れる目、隙間のない太もも。今まで気にしたことはなかったんだと思う。「痩せたいけどまだ大丈夫」ずっとこの言葉を言い聞かせてた。

嘘だと知っててから村井は「おもんな」と笑いながら言ってた。このとき私は決めた痩せようと。


「痩せたいなら食うな!」どこかのYouTuberが言った。だから私は食べなかった、辛いし食べたいけど村井のためを思えば我慢も不可能でない。1週間もしないうちに2kg落ちた。1日に食べるのは胡瓜とヨーグルト、気が向けば果物を食べた。


「蘭痩せた?」学校で親友の真由香が言った。

「本当?2kg痩せたんだよね。」

「いいじゃん、可愛くなったよ。」

痩せる快感を覚えた。満たされていなかった承認欲求が今満たされた気がした、努力が認められたと思った、今まで味わったことの無いこの感情が私を襲った。そして、順調に私はは体重を落とし、55kgあった体重も48kgまで落とした。

「蘭、付き合ってください。」

高校三年生の12月、村井に言われた。

もちろんOKした。でも私前告白してから村井と何も無かったよね。胸に残したくないモヤモヤがあった。でも、そんなのどうでもいい。ずっと好きだった村井と付き合えたんだ。

もう他に何もいらない。村井が私の世界であって、私が村井の世界を作ろうと、そう思えた。ただ、彼が好きなのは私のこのルックスであり、過去の私のルックスではない。だから私は痩せた。運動も始めた。夜な夜な走って、走って、走り続けた。体重は思うように落ちたが、44kgになったとき体重は落ちなくなった。痩せることが快感の私にとってそれは恐怖だった。もっと、もっと、もっと痩せないといけない。村井に好かれるために、痩せ続けないといけない。


「別れよう、好きな人できたんだよね」

43kgになったとき言われた。

「なんで?」重い女と思われたくないけど、聞いた。

「お前見た目に執着しすぎなんだよ。」

そこから私は記憶が無い。あったんだろうけど記憶なんて消した。村井は痩せた私が好きなくせに、執着なんてしていない。私は村井のために痩せたはずなのに、村井がいなくなった今も痩せようとした。あの時の承認欲求が満たされた気持ちがまだ脳に鮮明に映し出される。ご飯を食べるのは1日1個だけおにぎりを食べた。でも、吐いた。食べて、吐いて、食べて、吐いた。嫌ではなかった。痩せるためなんだから。美しくなるために努力は惜しまない。


夜になって、真由香がインスタライブをしていたので見た。「蘭って最近痩せすぎだよね。がちで骨みたい。きもいよね。」

「まじで分かるわ、流石にえぐいよね。」

何があったのかわからなかった。私は、誰にも痩せて迷惑をかけていない。人に美しいと思われるために、自分を好きになるために痩せる。これが私の美学だ。

カッターを取った。骨が浮き出てる腹部に刺した。脂肪を切り取ろうと、筋肉も取ろうとした。ただ、上手く取れるはずもなく、ただ腹部を刺すという自殺に終わった。そのとき、私は私じゃなくなっていたことに気がついた。

このように自分の見た目を過剰に気にする人はきっと沢山いると思います。私は、頑張る自分をたまには甘やかして、頑張る自分は偉いし、自分は自分のままでいいことを忘れないでほしいです。

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