運命の少女
私は王のよき相談者であり友にもなれた。だけど、彼の傍で彼を見て分った事がある。王は恋多き男だった。相手は必ず異世界の少女。最初は相手の一目惚れから始まる。
儀式は決まった人間しか入れないだけど、そこから出て来る人間には出口で控えているので会えるのだが、もう分かりやすく顔が赤くぽーっとしているのだ。そこからハルナみたいに恋愛がスタートする。最初は口を出さないでいた。だが、あまりにも酷い。
王が鈍感で相手が諦めてしまう。これは明らかに相手が惚れているのに気づいているのか何なのか恋になりそうな事を彼が避けてしまう。で、相手が諦めて他に行く。まだ平和だ。この国に二度度来ない様に裏で手を回す事も無い。
王もお気に入りアピールをしてるのにあっさりフラれる。これ一番が多い。惚れられていると相手が勘違いして、ふってしまう事もあるが、周りから見て結婚するんじゃないかと思っていたら横から別の男に奪われる。これがあまりにも多い。
もう何度目かになった頃に異世界の人間に関わる事にした。良き相談役を演じ査定する。同じ異世界の人間。簡単に入り込める。駄目そうなら諦めるように裏で手を回す。良さげな男を派遣するのだ。異世界時の人間は男女問わず何故か人気で候補は掃いて捨てるほどいる。
あの方がフラれる度に濃いあのアルコールランタンの香りをさせている事に気付いてからは審査は厳しくなった。王がこれではいけない。恋は捨てた。国と王の為に人生を捧げている。たまに夢の中で王とあの夜の庭でまるで恋人のように過ごせるだけで、もう私は十分なのだ。
「王。また我ではなく僕になっております」
気を抜くと彼は一人称を変えてしまう。威厳の何も無い。そこは毎度注意した。が、あまりこれは直してくれない。
「ああ!ごめんね?アヤ!……コホン!我は……何て言おうとしたんだっけ?」
何度もこれがあって可愛いとなってしまうのでもう諦めた。一応は毎度言っている。頭が痛い。最近、気を回し過ぎなのか頭が痛い体調も崩れイライラが増していた。医者にも行ったが問題は無いと言う。それにも耐えて何度目かの恋を見送り続けたある日。
珍しい事があった。別の国の王子が滞在するのと異世界の人間が来てしまうのが被ったのである。何かが起こる予感がした。
今回の子は本当に良い子だ。初めて見た時にこの子だとこの子が運命を変える子だと思えたくらいだ。髪は変える必要の無いふわふわの金。瞳は美しい青。そばかすすらも愛らしい天使のような子。
王も同じ気持ちだったのか直ぐに仲良くなった。ああ、もう終わりだ。と、何度も何度も泣いた。救いの夢の中でも「私はおいて行くのではない貴方が私をおいて行くのでしょう?」と泣いてしまう。彼を困らせてしまった。
「お前いい女だな。ここの滞在が終わった時に連れて行ってやろうか?」
別の国の王子は豪快で一部のメイドや女性からの怖いと言われてしまう人だった。メイドが怯えるので私が相手をするようになっただが気に入られたらしい。何度も二人で飲もうと誘われた。部屋は流石にダメだと断ったら庭の木の下にテーブルと椅子が用意されてしまい。そこで飲んでいる。
別の国では髪色は濃い。薄い所もあるけれどここよりでない。だけど、色は様々だ。この偉そうな別の国の王子は濃い赤色。瞳は濃い茶色。だからだろうか?誘いを断れない。
「王は……リーザは飾らぬ良い奴だ。だが、ここの国の女は男も含め。まるで妖精の天の使いのようで気味が悪い現実味が無い」
注がれたワインにぺこりと礼をして頂く。以前は飲んだだけでひっくり返ってたけれど、今は何杯でもいけてしまう。日々、忙しくして忘れているが私は何歳なんだろう?ここの国の皆は若く見え基準が分からない。
「……それは誘っておられるのですか?それとも引き抜き?」
目を丸くした王子は大きな口を開けて笑う。どちらでもと言われ少しだけ笑ってしまった。
「笑うと可愛いじゃねえか、もっと笑えよ。いつも真顔でつまんないんだよ」
なるべく異性とは関わらない様にしている。恋はあの方に差し上げた。だから愛想笑いはするが笑う事は無かったのにこの人の前では隠せないらしい。
「まあ、あの王の前では多少崩れるけどな」
ぎくりとし目を見開いてしまう。誰からも言われなかった。指摘などされなかったのだ。思わず椅子から下りて座り頭を下げた。
「バカ!何。やってんだ!」
「お願いします。どうか、ご内密に何かに気付かれてもどうか気付かぬフリを……お願い致します」
腕を引かれ目が合う。はっと王子の息を飲む音がした。ポロリと涙が零れ抱き締められてしまう。
「言わない。だからもう泣くなよ」
背を撫でられ目を閉じる。初めて王以外の異性に抱き締められた。何だ。私、彼でなくでもこんなにドキドキする。できてしまうんだ。
「気が変った。前者にしろ!」
前者とは?と、考え先ほどの言葉を思い出し顔が熱くなってしまう。身体を離した王子の顏も赤く。それを誤魔化す様に「じゃあ。また」とぎくしゃくとその場を後にする。その日。ランプをつけないのに夢を見た。目覚めは最低だ。
彼に王に激しく求められる抱かれる夢を見てしまった。心の奥底で私が私を責めているんだ。体調も最悪だった。その日初めて自分から休んだ。見舞いにきた者をみな断り、王子だけ招いた。
「前向きに考えさていただきます」
見舞の品をどさどさと落とし赤い顏で喜ばれた。これで良いんだ。夢の頻度は増し、どんどん悪くなる体調。でも、良い事もある。すっかり友になった異世界の少女が王に告白すると言ったのだ。泣いて喜んだ。憎しみを隠し喜べたと思う。告白はされた。
「リーザ。貴方が好き。だけど、憧れをそう勘違いしたみたい」
隣には知らない男。身体がふらつく。彼女は言う。告白すると相談したら自分も好きだと言われたと抱き締められキスされて王とのあれは恋ではないと思った。そんな馬鹿な事。
「殺してやる!呪ってやる。お前達に呪いを!私の命をかけて一生呪ってやる!王の心をもて遊び。よくもいけしゃあしゃあとそんな事を!子孫まで呪い殺してやる!!」
気付けば狂ったように叫び殴りかかろうとするのを王に羽交い絞めで止められた。叫び声で他の者が他の者を呼ぶ。
「いつもの様に出入りを禁止などしてやらない!ここで殺してやる!他の、他の王を愚弄した者達も探し出し殺してやる!まずはお前達だ!」
言わなくても良かった罪を自ら叫んでしまう。もう正気ではないのだ。暴かれる悪。
「誰も来るな!誰か人払いを!アヤ、いい子だから……落ち着いておくれ」
不吉な言葉を何度も吐いて怯えた二人が去るのを追おうとすれば気持ちの悪さに目を回した。目が覚めると星が見え。目を凝らす。よく知る天井だ。何て愚かだと笑い。準備をする。
「マヤ、入るよ」
「どうぞ……」
私の姿を見て王の顔が徐々に強張る。もう昔に感じる。ここに来る前の制服を着ていたからだ。サイズは変ってなくて着替えても違和感がない。長いと思った年月は勘違いだったみたいだ。
「どこに行くんだい?」
王の表情が消えた気がしたが、目を擦ると泣きそうな物に変っている。気のせいだ。最近。いや、もしかしたら私は以前からおかしいのかもしれない。
「牢でしょう?死刑を待つのだから」
運命を変える少女。確かに変えてくれた。私の人生はこれで終わる。




