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戦闘

ウオオオオオオ!!

「死ねえええ!!」


 怨嗟のこもった雄叫びと共に振り下ろされた剣はゴブリンの体を真っ二つにした。見事な切れ味。熟練を感じさせる剣裁き。ブジーのやつ、ただの巨漢ではないらしい。


「……初めてのダンジョンで浮かれていた。普段ならあんなモノ食うことはないのに……」


「プッ!」


「笑うな!」


 ゴブリンの死体から魔結晶を取り出しながらブジーはこちらを睨みつける。あんなモノとはゴブリンが投げた茶色い泥のことだろう。


「そう怒るなよ。ところでブジーは剣を習っていたのか? かなりの腕前と見たが」


「……あぁ。俺様はアナプラ家の男だからな。剣だけは自信がある」


 ふむ。アナプラ家か。正直全然知らない。


「といっても最果ての村出身のベンには何のことかは分からんだろうな」


「すまない。もしかして貴族なのか? ブジーは」


「一応な。ウチは隣のオシリス王国の男爵家だ。チッ。やっぱり普通のゴブリンからとれる魔結晶は全然だな」


 文句を言いながら指で摘むと見えなくなるぐらいの魔結晶をブジーは袋にしまった。貴族なんだから幾らにもならないゴブリンの魔結晶なんて放っておけばいいのに。


「ああ。そんな不思議そうな顔をするな。貴族だからって金に余裕がある奴ばかりじゃない。ウチみたいな武門の貴族は貧乏なことも多い。それこそ三男にもなるとな」


 出会った時は威張り散らした偉そうな男に見えたが、あれは演技だったのかもしれない。貴族なりの見栄というか。


「だから冒険者をやってるのか?」


「まぁ、そんなとこだ。家を継ぐわけでもない武門の三男に残された道は騎士団に入るか冒険者をやるぐらいだ。──来るぞ」


 そう言って身構えたブジーの視線の先にはゴブリンが2体。手には例の茶色い泥が山盛りにある。


「今度は俺がやろう。ブジーは見ておけ」


「気をつけろ。あれは臭いなんてもんじゃないからな」


 俺があんなものを食らうわけないだろ? 最果ての村の周りには凶悪なモンスターがうじゃうじゃいるんだ。俺はガキの頃からそんなのを素手で──。


「ベン、素手でやるのか?」


「あの茶色の泥? を素手では触らないぞ」


「いや、武器は使わないのかって──」


 ヒュン! ヒュン!


 2体のゴブリンから茶色の物体が投げられる。上体を逸らして躱すが、確かに臭い。もし俺がこんなものを顔面に食らったら立ち直れない。現時点でブジーを尊敬だ。


 ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 うん? 飛んでくる茶色の物体の数が増えているぞ!? 一体どこから──。


「ベン! 一度食らっとけ!」


 ブジーかっ!! こいつ、俺が笑ったのを根に持ってやがったな。開き直って素手で茶色の物体を投げてやがる。


「そんなもの食らうわけないだろ!」


 ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 ブジーの野郎、両手それぞれで投げている! 流石に冗談が過ぎるぞ! 先ずはゴブリンを片付けるか。


「秘拳・十二連勤(ノーホリデー)の怒り(レイジアタック)!!」


 規則正しい拳の連撃が2体のゴブリンを破壊する。やはり雑魚モンスター。ヤワだな。体は消し飛び、跡形もない。魔結晶も何処かにいってしまったな。


「……」


「どうしたブジー? その手に持ったUNKO(アンノウン)を俺にぶつけるんじゃなかったのか?」


「……じょ、冗談だよ。ベン! 本気でそんなことやるわけないだろ?」


「随分と本気で投げていたように感じたが?」


「すまなかった! 1人だけウ○コ塗れなのが許せなかったんだ! もうしない! 許してくれ!」


 本気で悪いと思っているようだ。貴族が平民ですらない俺に謝っている。


「分かったよ、ブジー。もういい。水に流そう」


「分かってくれたか! では仲直りの握手を──」


「やるわけないだろ!!」


コイツ、全然反省してねえな!

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