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魔結晶

ごめんなさいごめんなさい!

「あった! 魔結晶だ!!」


 ブジーが壁に魔結晶を見つけて走り出した。現金なものだが、気持ちはよく分かる。俺だって別の魔結晶を見つけて駆け出してしまっていた。


 ダンジョン──超巨大生物の肛門の向こう側──は想像よりも遥かに複雑な構造をしていた。普通の生き物は肛門から口までは一本道だろう。しかしダンジョンは違う。入ってしばらくすると幾多に枝分かれしていた。これだけの巨体を動かすのだ。心臓から何から幾つもあるのだろう。腸だって一筆書きではない。


 ガッ! っとナイフを立てて壁から魔結晶を抉る。掘り出した魔結晶を灯りにかざすとキラキラと光を増幅させた。ふむ。普通の魔結晶か。いきなり当たりを引くなんて都合のいいことはなかった。


「ブジー、そっちはどうだ?」


「はずれ。普通の魔結晶だ。まぁ、これでも500ギムぐらいにはなるだろう」


 そう言ってブジーは小指の先ぐらいの魔結晶を腰につけた袋にしまった。


「そういえばもう臭いは平気なのか?」


 鼻と口を覆うこともなく、ブジーは普通に呼吸をしている。えずく様子もない。


「ああ。この辺りは大分臭いが薄い。壁の色がちょっと変わってきたあたりから平気になった」


「本当か?」


「ああ。その布切れを外してみろ。大丈夫だから」


 物は試しだ。覚悟を決めて香草で燻した布をずらして鼻と口を露出する。


「おええぇぇぇ!!」


 ブジーの野郎! 騙しやがったな。めちゃくちゃ臭いじゃないか!!


「ははははっ! 騙されたなベン!!」


「クソ野郎! なんでお前は平気なんだよ!?」


「慣れだ、慣れ!! 今ならここでメシだって食えるぞ!!」


 そのデカイ身体を偉そうに反らし、ブジーは大笑いしている。こいつ、一体どんな適応力をしてやがる。こんな悪臭の中でメシを食うなんて正気の沙汰じゃない。


「覚えてろよ。絶対に一杯食わしてやるからな」


「ははははっ! 俺様を騙すなんて無理な──」


 ヒュン!


 大きく開けたブジーの口に茶色い何かが飛び込んできた。それは連続し、顔全体が茶色の泥のような物で覆い尽くされる。


「ギャギャッ!!」


 出やがった! 深緑の雑魚モンスター、ゴブリンだ! 手に持った茶色い泥のようなものをブジーに投げつけて笑っている。その泥の正体は不明、UNKO(アンノウン)。予想はつくが、これ以上はやめておこう。


「ブジー、大丈夫か?」


「……」


 ブジーは無言で顔についた茶色いものを拭い、何度も唾を吐き出した後に水筒を取り出して口を濯いだ。


「ギャギャギャギャッ!!」


 その様子を見てゴブリンが腹を抱えて笑う。もう弾切れのようで茶色い泥は飛んでこない。


「許さん、許さんぞ!!」


 剣帯から抜いた剣を構え、ブジーはゴブリンに向かって走り出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 着眼は良いと思います、本当に。古くはミクロの決死圏からの体内探検モノをこう使うとは!
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