ほぐしいらず
「やはりガバガバです! 触ってみて下さい!」
超巨大ハーピーに取り付いたディルが腕を入り口に突っ込んで笑っている。とてもいい顔だ。つられて腕を入り口に差し入れ、軽く引っ張ると簡単に開いてしまう。
「……本当にガバガバだな」
「ええ! ワシが現役の頃よりもさらにガバガバです!!」
「……なんでこんなにガバガバなんだ? 病気か?」
「いえいえ、違います。肛門がガバガバなのはハーピーの種族特性です。普通のハーピーもガバガバですよ。私が現役の頃はよくハーピーを捕まえて肛門で遊んだものです」
知らなかった。今までハーピーの肛門を触ったことがなかったからな。流石はディル。冒険者の先輩だ。
「ささ、入って下さい」
ディルが自分の身体を大きく使ってダンジョンの入り口を拡張する。面白いほど簡単に伸びている。
「すまんな」
俺がダンジョンに入るとディルもサッと身を引いてガバガバの肛門が閉まった。ただ、締まりが悪いようで薄らと外の光が入っている。
「おおおお! 久しぶりだあああ!」
ディルが突然大声を出してぴょんぴょんダンジョンの中で飛び跳ねた。……一体、何があった?
「……どうした?」
「うひょおおおおお!!」
「……どうした?」
「あっ、申し訳ない。自分がハーピーの中に居ると思うと興奮してしまうのです!!」
こいつ、アナルローズを求めてハーピーダンジョンに来たのではなかったのか……。随分と楽しんでいるように見える。
「アナルローズは?」
「うひょおおおおお!!」
「アナルローズはどうなった!?」
「……失礼しました。アナルローズを探しましょう」
なんとか本来の目的を思い出したらしい。ようやくダンジョン探索が始まった。
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「秘拳・セキュリティーインシデントが激増」
目を閉じ口から倍音を放つ。目を開けると爆散したハーピー達の残骸がダンジョンに広がっていた。
「……なんとむごい」
「俺の前に立ちはだかる者に容赦はしない」
「……味方でよかった」
そう言いながらディルはかろうじて形を留めているハーピーの尻を弄っている。薄らと微笑みながら。
「笑っているぞ」
「はっ! 失礼しました! つい……」
理由は分からないが"つい"らしい。長く生きていると色々あるのだろう。追求はしない。
「アナルローズというのはどの辺に生えているんだ?」
「もっと奥ですね。人間で言うところの胃の少し手前ぐらいに生えている筈です」
「随分と深いところにあるんだな」
「魔結晶の多いところに生えるんですよ。アナルローズは」
「魔結晶は頂くぞ?」
「もちろんです」
アナルローズ。一体どのような花なのか。好奇心が俺の足を前に進めた。




