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はじまり

ストレスマックス状態の人間がラノベを書くとこうなる!

 ラムズ平原の入り口にある街、ラムズヘルムはその住民の半分以上が冒険者だと言われている。ラムズ平原に多数生息する超巨大モンスターを目当てに、世界中から集まって来ているのだ。


 昨日から世話になっている木賃宿の食堂に行くと、俺と同じような若い冒険者が目をギラギラさせながら朝食を口にかきこんでいた。


「よう、新入り! メシ食うだろ?」


 突然現れた宿の主人が朝から馬鹿みたいな大声を出す。


「くれ」


 主人はツカツカとやってきて俺が座ったテーブルにドンッ! と朝食の皿を置いた。


「ダンジョンに潜ると腹が減るからな! しっかり食うんだぞ!」


「たすかる」


 ダンジョン。


 それは超巨大モンスターの肛門の向こうに広がる空間のことだ。俺達冒険者はダンジョンに憧れる。何せ、普通のモンスターを倒しているよりも圧倒的に稼げるからだ。もちろんその分、危険も大きいが。


「ゴブリンダンジョンが休眠したそうだぞ」

「それはチャンスだな。今回は何日ぐらい潜れるんだ?」

「ギルドで聞くしかないな。この後行ってみよう」


 隣りのテーブルから実になる情報が聞こえてきた。


 チャンスだ。俺のような駆け出しには最適な超巨大ゴブリン(ゴブリンダンジョン)。どうやらそこに入れるらしい。冒険者ギルドに行って情報を集めなければ。


 俺は競うように朝食を平らげ、席を立った。



 #



「くすぐるよー!! ゴブリンダンジョンの門を開くなんて俺っちにかかれば朝飯前っす!!」

「我が怪力の前に、ゴブリンダンジョンの門は無力なり!!」


 冒険者ギルドの前ではほぐし屋達が声を張り上げて客引きをしていた。ダンジョンに入るには超巨大モンスターの肛門を開かなければならない。肛門を弛めるにはそれぞれのモンスターの癖を見抜く、ある種の専門性が求められる。一介の冒険者が自力で肛門を開くのは効率が悪い。だから、ほぐし屋がいるのだ。


「そこのお兄さん! ゴブリンダンジョンを狙ってるっしょ? 俺っちを雇いなよ! 損はさせないっす!」


 ひょろっと細長い身体をしたほぐし屋が絡んできた。


「後でな」


 雑にあしらって冒険者ギルド──街の中央に聳え立つ──に入ると阿鼻叫喚の大騒ぎだった。


「買取りはこちらでーす!! ゴブリンダンジョンでとれた魔結晶はこちらで買取りまーす!! スキル入りは通常の10倍、いや、20倍出しますよー!!」

「ゴブリンダンジョンの情報を知りたい奴はこっちに来い! 俺が教えやる!! 俺の話を聞いておけば間違いないからな!! 死にたい奴は耳を塞いでどっかへ行っちまえ!!」


 もう祭りは始まっていたらしい。俺と見た目の変わらない男女──15、6歳だろう──が何十人もギルド職員に群がっていた。


「よし、お前ら! 死にたくなければ俺の話を聞け!」


 指南役らしい髭面の男ががなる。


「ゴブリンダンジョンが寝ているのは後10日余りだ! お前らがダンジョンに潜れるのはあと8日ぐらいだと思っておけ! 超巨大モンスターの眠りが浅くなるとダンジョンの危険度は跳ね上がるからな!」


 なるほど。初心者には役に立つ情報だ。


「ゴブリンダンジョンは臭いから、しっかり臭い対策をしろ! お勧めは香草で燻した布だ! それで顔を覆っていれば気にならないぞ!」


 臭い対策か。まぁ、当然といえば当然。ダンジョンとは超巨大モンスターの肛門の向こう側なのだ。臭うに違いない。


「ゴブリンダンジョンは少しするとゴブリンが出てくる! まぁ当たり前だな! 奴等は大したことない! 鉄の棒でぶん殴ったらおしまいよ。お前達、やれるよな?」


「当たり前だ!!」


 太々しい大男が拳を握りながら答える。大した自信だ。しかし、俺だってやってやる。


「そしてお目当ては魔結晶だ! 壁に埋まった魔結晶を取ってこい! もしスキル入りの魔結晶を見つけたら歓声を上げろ! 自分で使えばスキルを覚えられる! スキルのない冒険者なんて糞だからな!」


 みてろよ。俺はすぐにスキルを覚えてみせる。


「よーし、分かった奴等はラムズ平原へ走れ! ほぐし屋を雇うのを忘れるなよ! お前達のようなヘナチョコが自分で肛門を開けると思うな!!」


 ぉぉおおおお!!


 怒号と共に俺達は外に向かって走り始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほぐし屋 [一言] とりあえずタイトルにやられたので読む。 絶対読む!!
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