第一話『研究者』
第一章
一話『研究者』
静かな研究室で少しぬるいめのコーヒーを飲むことが男のささやかなたのしみであった。
彼は仕事に一段落着くときまってコーヒーに手を伸ばしては幸せそうな顔をした。
「またビーカーでコーヒー飲んで、専用のコップが有るんですからそっちで飲んで下さいよ」
白衣とメガネの良く似合う真面目そうな女性は
物言いたげな声でそう言った。
「まあ良いじゃねえかそう不機嫌な顔するなよちゃんと後で洗うからよ」
「そういう問題ではありません。と言うかコーヒーの渋って取りにくいんですからもうそのビーカー実験で使えないじゃないですか!」
「いや使えるって、後で洗う時に硫酸でも入れときゃあ取れんだろそもそもそんな着くほど飲んじゃいねーぞぉ」
「だ〜か〜ら、そういう問題じゃあありません!!」
明らかにい怒っていただが僕はそんなことには気づかず言葉を続けた。
「じゃあどう言う問題だよ〜」
静かにため息をつと向こうからもため息が聞こえた僕のとは違い酷く大きかった。
「もういいですそんなことより研究の方は進んでるんですか?」
ジト目の彼女に僕は食い気味で返した。
「ああそれなんだがなF-036番の試薬がマウスに効いたんだよ、マウスにあったステージ4の癌がステージ2まで縮小したんだそれだけじゃあないぞ転移しまくっていたはずのがん細胞がどんどん減ってきているんだ副作用も今のところ抗がん剤治療と大差ないまだ経過を見ている途中ではあるんだかこれはきっとすごいことになるぞ!」
「本当ですか川尻さん!今すぐそのマウスの経過資料と本体を見せてください!」
金髪青眼の整った男はヒーローを見る子供の様に目を輝かせながら迫ってきた。
「ああもちろんだ今すぐにでも行こう!」
僕は得意げにそう答えた、そう答えたのだ。
本当に嬉しかった
今まで何度も世界を驚かせるような新薬つくってきた、
今まで何度も世界を驚かせるような発見をしてきた、
それでも今回が1番嬉しかったそう断言出来る。
これでやっと僕の父の仇が打てると
これでやっとこの世から癌で苦しむ人がいなくなるとそう思った。
「人類は癌に勝つんだ」
そう拳を握りしめビーカーを見つめた時、
出入り口からここの研究者らしき人が3人ほど入ってきた、
その瞬間火薬の破裂する音が鳴る 僕を含む全員が動けなかった。
お腹にやけどしそうなほど強い熱を感じた、
一言も発することが出来なかった
部下たちが次々と倒れていくみな頭や胸の辺りから血を流していた
呼吸が浅くなり足に力が入らない
拳銃を構えたアジア人は僕の頭に鉛の玉を1つ。
20XX年 08/16 午後05時25分
白人と思われる3人組によって
人間国宝と認定された
研究者 川尻 純一氏が
焼死体で発見遺体には弾痕と見られる傷があり、
中○政府はテロ組織との関係性も考えられるとして調査するもなんの証拠も見つけられず迷宮入りとなった…
今日僕は思い半ばでわけもわからず
『死んでしまった』