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句点で1段落としたら楽だけど

 なろう小説では、1ブロックを約3行ほどに収めるフォーマットが読みやすい。

 これは、指で文章を追えないデジタルデバイスでどこまで読んだのかぱっと見で把握させることと、文章の重要度を操作して快適な流し読みを実現させるためだと思われる。


 しかし、ここで問題となってくるのが、どこで1段落したらいいのか、どこで1ブロックとしたらいいのかである。


 1ブロックに関しては、たぶん作者の感覚によるところが大きいだろう。

 強調したい段落は、それで1ブロックになるから、そのことを踏まえてほかの段落もブロックにわけていけばいいのかもしれない。


 だとすれば、どこで1段落とするのかが、なろう小説のフォーマットにおける重要事項かもしれない。


 ひとつだけ機械的に解決できる方法がある。


 それは「句点がきたらそれで1段落とする」である。



 いくつかのなろう小説を読んでみたが、じつは句点がきたら機械的に改行して1段落としている作品はそう多くはない。

 とはいえ、「1ブロック約3行」でも参考にした、ジャンル別年間ランキングの異世界〔恋愛〕1位の『ブラック魔道具師ギルドを追放された私、王宮魔術師として拾われる ~ホワイトな宮廷で、幸せな新生活を始めます!~【Web版】』は、句点で1段落としているもっともたる例だろう。


 この作品は、会話文が続く場合に空行をまったく挿入しない、というルールで書いており、なるべく感覚で空行を挿入しないようにしてると思われる。


 なので、段落についても、句点がきたら1段落とする、というルールを決めているのは腑に落ちる。


 この「句点がきたら1段落とする」フォーマットが読みやすいかどうかというのは、『ブラック魔道具師』が年間1位であることから考えても読みやすいと判断できるだろうし、筆者が読んでみても読みやすいと感じる。


 では、機械的に句点がきたら1段落としてみた場合、どのようになるのかみてみよう。

 自作を引用する。




「うまいね。楽しい?」

「楽しいは楽しいけど、でもヘンリーッカが弾いてるのを見るほうが好きだな」

 僕は独奏をやめた。鍵盤から指を離し、背後に佇むヘンリーッカの顔を伺い見た。彼女の幽かな笑みを見ていると妙に鍵盤が恋しくなった。もう一度弾こうかどうか両手をふらふら迷わせていると、背後からヘンリーッカの白い手が伸びてきた。ヘンリーッカの身体が僕の背中にぴったりとくっついた。彼女の白い手は、僕の両手にからむようにして鍵盤を叩きはじめた。彼女の吐息が首筋に感じられる。

 目をつむる。あたかも僕がチェンバロを弾いているみたいだ。背中から伝わる暖かさがよくわかる。ヘンリーッカの口からもれる呼吸が、だんだんとチェンバロのリズムと同じになってくる。首筋がぞくぞくとしてヘンリーッカの匂いが麻薬のように身体じゅうにまわって陶然とする。僕はいまヘンリーッカだけを感じている。ヘンリーッカの身体は甘い匂いと少女の薄い柔らかさと白い肌とチェンバロの音でできていて、それは僕の身体を取り巻き、真っ白な世界を蜜のような祝福で満たしていっている。

 それからどれほどの時間が経ったのか僕にはわからなかった。音楽にはそういう力がある。

「楽しいね」

「ああ、音楽だ」




「うまいね。楽しい?」

「楽しいは楽しいけど、でもヘンリーッカが弾いてるのを見るほうが好きだな」


 僕は独奏をやめた。

 鍵盤から指を離し、背後に佇むヘンリーッカの顔を伺い見た。

 彼女の幽かな笑みを見ていると妙に鍵盤が恋しくなった。


 もう一度弾こうかどうか両手をふらふら迷わせていると、背後からヘンリーッカの白い手が伸びてきた。

 ヘンリーッカの身体が僕の背中にぴったりとくっついた。

 彼女の白い手は、僕の両手にからむようにして鍵盤を叩きはじめた。彼女の吐息が首筋に感じられる。


 目をつむる。


 あたかも僕がチェンバロを弾いているみたいだ。

 背中から伝わる暖かさがよくわかる。


 ヘンリーッカの口からもれる呼吸が、だんだんとチェンバロのリズムと同じになってくる。

 首筋がぞくぞくとしてヘンリーッカの匂いが麻薬のように身体じゅうにまわって陶然とする。


 僕はいまヘンリーッカだけを感じている。


 ヘンリーッカの身体は甘い匂いと少女の薄い柔らかさと白い肌とチェンバロの音でできていて、それは僕の身体を取り巻き、真っ白な世界を蜜のような祝福で満たしていっている。


 それからどれほどの時間が経ったのか僕にはわからなかった。


 音楽にはそういう力がある。


「楽しいね」

「ああ、音楽だ」




 ううむ。少しぎこちないところがあるように思う。とくに、


 あたかも僕がチェンバロを弾いているみたいだ。

 背中から伝わる暖かさがよくわかる。


 それからどれほどの時間が経ったのか僕にはわからなかった。

 音楽にはそういう力がある。


 のところは1段落で、


 あたかも僕がチェンバロを弾いているみたいだ。背中から伝わる暖かさがよくわかる。


 それからどれほどの時間が経ったのか僕にはわからなかった。音楽にはそういう力がある。


 としたいような気がする。


 であるならば、句点で1段落とするのは、書く時点でそのようにするほうがよいということかもしれない。

 それならば、そのリズムで文章を書いていけるだろう。

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拙作『さよならを云って』もよろしくお願いします。
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