1ブロック約3行
Web小説には従来の日本の小説と大きく異なる点がふたつある。
・横書き
・スマートフォン、PCモニタでの閲覧
読みやすくするためには、このふたつを踏まえたうえで文章をレイアウトしなくてはならないのかもしれない。
ランキング上位にある作品から、なろう小説ではどのようなフォーマットが採用されているのか、もしくは採用されていないのかを考えていこう。
ブラック魔道具師ギルドを追放された私、王宮魔術師として拾われる ~ホワイトな宮廷で、幸せな新生活を始めます!~【Web版】
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おい、外れスキルだと思われていた《チートコード操作》が化け物すぎるんだが。 〜実家を追放され、世間からも無能と蔑まれていたが、幼馴染の皇女からめちゃくちゃ溺愛されるうえにスローライフが楽しすぎる〜
https://ncode.syosetu.com/n8672gi/
この2作は、ジャンル別年間ランキング(2021年6月15日時点)で、異世界〔恋愛〕、ハイファンタジー〔ファンタジー〕において1位をとっているものである。
つまり、参考するにあたっての本命といえるものだ。
また、非常に興味深いことに、この2作はジャンルが違うもののほとんど同じフォーマットを採用しているため、なろう小説フォーマットにおいて王道と呼べるものかもしれない。
どのようなフォーマットなのかみていこう。
まず、あたりまえに空行が存在する。
しかし、1段落ごとにかならず空行が挿入されているわけではないことが特徴的だ。
ぱっと見で、1ブロックがだいたい3行ほどで収まっており、多くても5行くらいであることがわかる。
空行が挿入されるタイミングはとても恣意的だが、話題が変わったり、語り手のみているものが変わったタイミングで挿入されているように思う。
また、強調したい文章(段落)を単独で1ブロックにするという表現方法もとられている。
しかし空行が挿入されるタイミングに統一性を見出すのはすこし難しいように思う。
これは、作者の感覚によって挿入されていると考えるほうがよいだろう。
つぎは会話(鉤括弧)と地の文の関係をみよう。
会話と地の文の扱いについては、この2作ではすこしだけ差異がある。
『ブラック魔道具師』では、会話文と地の文のあいだにはかならず空行が挿入される。
また、会話文が連続する場合はぜったいに空行が挿入されることはない。
つまり、会話文は会話文だけで1ブロックを構成するようになっている。
さきほど、地の文1ブロックはだいたい3行くらいで収まっていると書いたが、会話文の場合はいくらでも行数が伸びてもよいというようなフォーマットだ。
つぎは『チートコード操作』。
この作品では会話文と地の文のあいだに空行が挿入されないこともある。
とても特徴的なので、どのような意図で挿入されているのかみてみる。
ふたつ引用する。
「馬鹿な! そんなはずはない!」
父が真っ赤な表情で壇上に上がってくる。
「神官殿! それはいったい、どんなスキルなのだ!」
「攻撃力アップ(小)……」
その文字列を、僕はなかば放心して唱えた。
「攻撃力がアップするそうです……父上……」
(※1)
同一話者の台詞が連続するあいだに地の文を挿入していることがわかる。
いわゆる一般小説ではこのように(「会話」地の文。「会話」)1行で書かれるものが、Web小説向けのレイアウトになっていると考えていいだろう。
『チートコード操作』では、例外なくこのように書かれているため、作者の意図だとわかる。
反対に『ブラック魔道具師』で同一話者の台詞のあいだに地の文が挟まる場合も、空行が挿入されている。
これは、会話文と地の文のあいだには空行を挿入するというフォーマットの論理を徹底しているからだろうと思われる。
また『チートコード操作』の会話文に戻ろう。
つぎは会話文が連続する場合をみていく。
この作品では、会話文が連続する場合、空行が挿入されることも、挿入されないこともある。
どのように使いわけているのかわからないが、これもさきほど書いたように論理ではなく感覚で空行を挿入しているように思う。
実践する場合は、感覚で挿入しなくてはならないので面倒かもしれない。
まとめるとこのようになる。
・1段落ごとに空行が挿入されるわけではない
・話題が変わったりみている対象が変わったり強調したりする場合に空行を挿入する(読みやすいように)
・空行で分かたれた1ブロックは約3行程度に収める
・会話と地の文のあいだには空行を挿入する
『チートコード操作』の例外
・同一話者の会話が連続しそのあいだに地の文を入れる場合は空行を挿入しない
『ブラック魔道具師』の例外
・会話文が連続する場合は空行を挿入せず会話文全体を1ブロックとして扱う
所感
全体的な読みやすさでいえば『チートコード操作』かもしれない。『ブラック魔道具師』では会話文が連続する場合、際限なく続くのがすこし読みにくい。これはたぶん、地の文が3行程度で収まっているせいで目がそれに慣れているのに急に長いブロックが登場するからだろうと思う。
また『チートコード操作』についても同一話者の連続する会話文のあいだに改行して地の文が挟まるやつも読みにくい。流れが断ち切られる感じがするため、一般小説とおなじ書きかたのほうが効果的な気がする。
このフォーマットでやるならこのような感じでやるといいだろう。
だいたい3行程度を意識に、内容を考えつつ空行を挿入する。
会話と地の文のあいだにはかならず空行を挿入する。
同一話者の会話は、長くなったとしても鉤括弧で分けない。
もし途中に地の文による描写を入れたくなったとしたら、一般小説のように「会話」地の文。「会話」で処理する。
(※1):どまどま「剣聖の息子、追放される」『おい、外れスキルだと思われていた《チートコード操作》が化け物すぎるんだが。 〜実家を追放され、世間からも無能と蔑まれていたが、幼馴染の皇女からめちゃくちゃ溺愛されるうえにスローライフが楽しすぎる〜』
参考
葉月秋水『ブラック魔道具師ギルドを追放された私、王宮魔術師として拾われる ~ホワイトな宮廷で、幸せな新生活を始めます!~【Web版】』〈https://ncode.syosetu.com/n8120gp/〉
どまどま『おい、外れスキルだと思われていた《チートコード操作》が化け物すぎるんだが。 〜実家を追放され、世間からも無能と蔑まれていたが、幼馴染の皇女からめちゃくちゃ溺愛されるうえにスローライフが楽しすぎる〜』〈https://ncode.syosetu.com/n8672gi/〉