表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双聖皇のアトランティス - Atlantis of Gemini -  作者: 三木 李織
第Ⅰ部 第3章 月花の呪い
21/56

第1節  月夜の儀式


 月の輝く夜。

 寝静まったサンクチュアーリオ学院。

 上空から見ると星印(アスタリスク)(かたど)った学生寮。

 

 中心の一棟から放射状に延びた六棟の内の一棟。

 地上から三階層目の部屋の天蓋付きのベッドの上。

 

 そこにはこの部屋の主である少女が一人、ぐったりと横たわっていた。

 

 白いレースのカーテンに反射した月明りがその少女を照らす。

 それはまるでスポットライト。

 

 美しいシルバーブロンドは花弁のようにリネンに散っている。

 少女の身体を包む夜着は、少女の汗に濡れて肌に張り付いていた。


 その身体の下には黄金の魔法陣が花開き、その身体を照らしていた。


 少女の瞳が薄く開くと、異質な色の瞳が覗く。

 夜明けと宵闇を思い起こす琥珀とアメジスト。

 右眼はアメジスト、左眼は琥珀のオッドアイ。

 双子の兄と鏡写しの双眼。 

 

 ――双子が罹った『二重の呪い』の証。


 『双生』であることで、忌み嫌われた呪い。


 『交差』した双眼は、禍々しさの象徴であるとともに――



 霞む視界。

 まるでここには無いかのように動かない肉体。


 弱々しい肉体と器を内側から引き裂くような膨大な魔力。


 溢れかえる魔力で肉体ごと世界(マナ)と一つになってしまいそうな魂――――



「……な…い」


 振り絞る力でシーツを握る。


 ――この呪いを解くために、この呪いを引き摺って、この『聖域』まで来た。


 だから――


「まだ……たく……ない……アレン」


 呪いが解ける方法を見つけるまで。

 どうか、間に合って――


 少女のアメジストの瞳から光る粒が流れる。

 少女は手を伸ばす。

 だが、それは空を切って堕ちる。


 本当はその手を握って欲しかった。 





    ◇ ◇ ◇





 アイリスは『儀式』の最中(さなか)、夢を見ていた。

 

 ――この夢を見るのはもう何度目だろう。


 暗闇の中、アイリスは裸足で水の上を歩いていた。

 身に纏った黒く長いローブは引き摺られ、水を吸う。

 水を飲みこんだローブの重みで、身体ごと水の中に吸い込まれそうだ。


 アイリスはそれでも歩き続ける。


 立ち止まってしまえば、すぐに水の中に沈んでしまうことをアイリスは知っているから。

 

 幼い頃は立ち止まり、どうすることも出来ずに何度もこの夢の中で溺れかけた。


 物心がついたときから何度も見てきた、良く知っている夢。

 

 ――ただ逃れられないだけ。


 当て所もなく歩き続けるアイリスは、この夢の終わりの始まりを待つ。



 やがて暗闇に朧気な光が差す。

 アイリスはその光を見上げる。

 フードが落ちると青白い光が、アイリスの髪を銀色に輝かせる。


 見上げた先には、現実よりも幾分も大きく見える、白銀の月が昇っていた。


 アイリスはその光をいつもと同じように追いかける。

 その月は、近付く程に大きくなり、やがてアイリスをも軽く飲み込むほどの大きさになる。

 

 月明りに照らされて、この夢の世界に水平線があることが示される。

 巨大な銀光になった月は、いまや水平線に浸かりそうだ。


 足元の水はアイリスが歩く度に、波紋を広げる。

 

 濃紺の闇の中、月の道をたどるように歩き続け、やがて光の源まで辿り着く。

 

 アイリスは冷たくなった身体で一つ息を吐く。


 そして、月に触れる。

 

 その瞬間、白い闇に包まれ、身体が光の波に押し流されるように反転するのを感じる。

 

 光に溺れた後、再び目を開ける。



 ――そして、黒い闇に包まれる。


 そして、夢が終わる―――― 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ