8.夜の思い出
リーちゃんと濃い夜を過ごしてから数週間後、入学式があり、授業も始まった。
講義式の授業で、私達1年生と2年生はみんな必修の授業を受ける。
(一応、1組から5組までクラスは分かれている)
1限目は、黒魔術概論Ⅱ。
担当は極東生まれのその高い細身の先生だ。
髪と顔だけ見るとロックとかしてそうな人だ。
「ユリちゃん。こっちこっち」
扇形の教室の一番奥の方にリーちゃんとローズちゃんがいた。
「何でそんなに奥なのよ」
「だって、この授業ローランス先生なんだよ。あの人、ずっと話してばっかりで詰まらないんだもん」
「だ、だからって何でそんなものを学校に持ってきているのよ……」
リーちゃんは漫画を持ってきていた。
「そ、それ何の漫画なの? リーちゃん」
「あ、これ? これは『吸血鬼といっしょ』っていう恋愛漫画だよ。今大人気なんだよ。なに? ユリちゃん知らないの?」
「知らないよ」
そもそも、寮にマンガを置いていたら駄目だよ。
寮監に見つかったら怒られちゃうじゃん。
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授業が始まった。
本当にマンガ読んでいるし。
授業を聴きながら、隣に座っているリーちゃんを横目で見る。
な、な、な~~~~~!?
な、何これ!?
なんか、女の子と吸血鬼っぽい男の子がすごいことしているんだけど。
唇と唇を合わしている。
はわわわわわ。
頬が熱くなる。
脳裏にいつかリーちゃんと過ごした夜のことを思い出す。
彼女の可愛らしい端正な顔。
柔らかい乳白色の肌。
彼女と重ねた唇の味。
あれ、甘かったなぁ。
それを思い出すと、授業に集中できなくなって来た。
もう。
ここ最近ずっとそうだ。
あの夜のことが忘れられない。
眼を瞑るとあの時の淡い思い出が映る。
どうしてもあの記憶が消えてくれない。