主人公が無言タイプの物語のせいで会話が全然進まずストーリーがなかなか進行しないんだけど。
「おい!聞いてるのか!」
またもや叱責が飛ぶ。だが今度の冒険者は真顔で老人を見ていた。
「なんじゃ!!ずっと黙って!!」
そう聞かれても冒険者は黙ったままだった。ただ、その澄んだ瞳で見つめるだけ。
この冒険者はゲームによくいる、喋らないタイプの主人公だった。
そういうのはポケ○ンだとかド○クエだとか、その手の主人公を持つゲームは仲間が会話してくれる、相手が勝手に話を進めるなどしてくれるなどでスムーズに進めることができる。
「....あれを持って行きなさい」
箱を指差す。それは赤いデザインで黄色いラインがデザインされている。
冒険者はそこへ向かうと開いてみた。そこには勇者の服が入っていた。
青いデザインであまり勇者とはいえないようなものだった。
「さあいけ!この世界に安寧を!」
そう言われるがままに旅立っていった。
「最近の冒険者は変わったものが多いのう。前は2周目だとかと訳の分からない事を言って....」
今度の冒険者は大丈夫なのかとじっと見送っていた。
「へいいらっしゃい!なにをお探しかね??」
店屋のおっちゃんは冒険者にそう訊くが、冒険者は黙ったまま。
「いやあの、なにが欲しいのかいってもらわなきゃ分からないんだが??」
「駆け出しっぽいし薬草なんじゃないか?」
後ろから女性の声が聞こえる。店屋のおっちゃんは「わかってる」とだけ後ろに叫び、再び顔を冒険者に戻した。
「薬草がほしいのかい?」
その質問から数秒感覚を開けて、コク、と頷く。
「ま、まいどあり!」
おっちゃんは薬草を手に取ると、それを手渡し、手を伸ばす。冒険者はその手にお金を置き、去っていった。
「あいつ、一言も喋らなかったな....。まあお金払ってくれたからなんでもいいけど!」
冒険者が歩いていると、金髪の男が話しかけて来た。金色の髪にイケメンという類の凛々しい顔つきのその男は馴れ馴れしく話しかけてくる。
「おい、お前魔王を倒すんだろ?手伝ってやるよ」
だが冒険者はいつものように黙ったままだった。
「おい聞いてるのか?俺が付いていってやるっていってんだよ」
どう聞いてもなにも帰ってこないのにしびれを切らし、あーわかった、と呟く。
「わかった、言わなくても付いて来て欲しいんだな?で、名前は」
名を問われても、特になにも喋らない。
「いや、お前の名前聞いてんだけど、言えないのか?」
なにも喋らないのに、苛立った表情で再びあー、わかったとだけ呟いた。
「わかったよ嫌なんだろ?じゃあ行かねーよ」
頭をかきながらどこかに行った。それを見届けてから冒険者は出口の方に向かって行った。
「仲間になるなら、お前の願いをきいてやってもいいんだぞ」
魔王は冒険者にそう言い放つが、冒険者は相変わらずなにも喋らない。
ほんとなにも喋らないな。よかろう、お前を葬ってくれるわ!!」
「...................................たい」
「えっ??お前、今何か言ったか?」
今まで、魔王はなにを言っても何を聞いても一言も喋らなかった冒険者が少し口を開く。
「今、喋ったのはお前か?」
戦闘に入ろうとした矢先に置きた衝撃の出来事に、魔王すらそう訪ねてしまう。
ボソボソと何かを言っているようで、全く何を言っているのか聞き取れない。
「おい!」
部下の悪魔を2、3人ほど呼び、冒険者を囲む。そしてその奇妙な光景は数分ほど続いた。
「魔王様!どうやらもっとちゃんと喋れるようになりたい!と言っているようです!!」
「そうか、そう言っていたのか、よかろう、その願い叶えてやる!」
同情した魔王は杖を差し出すと青い光が冒険者のもとに向かう。それはすぐに冒険者を包み込んでいった。
「どうだ?」
どこか喋れるようになったのを期待する気持ちを持ってしまった魔王はそうたずねる。
「ちょっとーまじ喋れるようになってんだけどーどんだけー!!!まじ喋れるってめっちゃいいんだなーほんとまじオモシレーわー!」
「なんかイメージと違うが....まあいいだろう。さて、戦闘に入るか」
「まじいろんなやつと喋りたいんだけどーちょっと話しかけてこよー喋れるってほんとにいいなーまじ感謝感激なんだけどーーーーー」
そうお礼(?)を告げどこかに行ってしまったしばらく立ち尽くし、部下の悪魔にこんなことを訪ねた。
「これでいいのか?」
「いや、知りませんよそんなこと」
「魔王様大変です!!」
「何事だ?」
それからしばらくして、その冒険者は城にはこなくなったある日、一報が届いた。
「苦情です。魔王様に!」
「愚民どもは私を倒そうと躍起になるのだからそれぐらい普通なのではないか?」
「いえ、魔王様が喋らせた冒険者が.....」
それは、「冒険者が鬱陶しいほど喋る」「話が長ったらしいうざったい」「ガチャでSSRが出ない」などの苦情だった。文面の全てに「もとに戻せ」「前の冒険者にしろ」という文が綴られている。
「最後のSSRに至っては全く関係ない八つ当たりです!!」
「わ、私はしーらない」
「ダメでしょそれ」




