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鉤心闘角  作者: 北条新一
4/7

第4話「鼠(ラット)」

18時23分来栖らアジト


バチバチバチッ、、、!


転送機で八重がアジトへ帰還する

「、、、医者(ドクター)は何だって?」

「仲神はキツめの脳震盪だが安静にしてれば後遺症の心配はないらしい、俺は腹と各所に切り傷を負っただけ。大変なのは如月の右腕だ、神経がメチャクチャ、今新しいのを作らしてるがどうにも時間がかかるんだと、暫くは使いものにならないな」

一桁(シングル)のNo.sを負傷させたんだ、その程度は必要経費だ…。」

「あいつの口ぶりだと最後の最後、あの片足で俺のハメ技から抜け出す迄は、常に力を抑えていたらしい、それに仲神の奇襲がなかったら危なかった。」

「そーそー!!俺の助太刀がなかったら危なかったぜ、その時のこと記憶にないけどな!!」

いつの間にか仲神が目を覚していた

「まぁアナザーネーム持ちは伊達じゃなかったってことだな。仲神、もう体調は大丈夫か?」

「大丈夫なわけねーだろ、立ってるだけで気分悪いぜ」

「なら寝てろアホ、今回の戦闘、監視カメラに映った映像はクラッキングして加工したものに変換した。それは問題ないんだが、、、誰か俺達以外にそのカメラの映像を覗いていた奴がいる。」

「、、、だから?」

「俺達以外にあの戦いでのやり取りを正確に把握してる奴がいる、どうやら政府側の人間ではないらしいが、目的も正体もわからん、俺ほどじゃあないだろうがかなりのサイバー技術を待ってる。多分お前と仲神の能力はある程度把握されただろうな。ただ一番の問題はこのアジトの位置も発覚される可能性もあるってことだ、そう考えるといつ刺客が送られてきてもおかしくは…


ガンッッ!!


不意に部屋の扉を破られ1人の男が部屋に侵入すると同時に


「えっ、俺かよっ!!」


狙われたのは仲神だった、男は一気に間合いを詰め頭部を狙った打撃が放たれる。


「ッッ!!喰らうかよ!!」


仲神が紙一重でそれを避け相手の顔を蹴り上げ、顔面を粉砕するが…


「はぇっ!?」


ドガッッ!!


「仲神ッ!」


死角から現れたもう一人の男が放った仲神の顎にヒットする。


(いや、分裂したと言うべきか。)


「グッッ…。」


ドサッ……。


脳を揺さぶられて、仲神が倒れ込んだ。

連続して脳にダメージを負った仲神の容態も気になるが…。それ以上に目の前に現れたこの男の能力への対処法を考えるので一杯一杯だった。

来栖の読み通りだろう、いきなり仲神に脳震盪を狙ったあたりこちらの能力の弱点が筒抜けのようだ。


(連戦には慣れっこだ、それは問題無い、問題無いが…。今、最も相手にしたくなかった相手とも言える奴との遭遇(エンカウント)、あの顔には見覚えがある。名簿(リスト)にも載ってる野良(フリー)能力者(ホルダー)のうちの1人、通称「(ラット)」。能力は、、、「物質の倍加」ッ!!)


「おい来栖…。」


「あぁ、やむを得ないな…。」


再び来栖から片道切符(ノー・リターン)を受け取り飲み干す、全身装甲(アーマー)は今は脱いでしまった。おそらく(ラット)も切符を服用しているだろうと考えると連続の服用は危険だとしてもこちらも使わざるを得ない。


ドタドタドタッッ!!


更に8人ほどが遅れて部屋に侵入してくる、仲神を倒した奴を含めれば合計9人。


(いや、分裂できる奴の人数なんて数えても無駄か…。)


6人が俺に、残り3人が来栖に向かってくる。


(まずいッ!)


来栖は能力は戦闘向きではない、戦闘能力だけでみれば一般人と同じ程度だ。


「させるかよッッ!」


ズズンッッ……!!


能力で来栖に飛びかかる2人にありったけの重力をかけて圧殺したのはいいが


「クソッ!」


おかげでこちらの反応に僅かに遅れる

更に能力でこっちに向かってきた3人を圧殺するが…。

残り3人に身体に張り付かれ、攻撃を仕掛けられる。

来栖は倒れていた仲神を抱え込むと


「後は頼んだぞ!!それとこいつを使え!!」


バチバチバチ……ッッ!!


そう言い残し、仲神と共に転送機で離脱した。


(これで存分に戦える…。さて、後は(こいつ)にどう対処するかだが…。)


厄介なのはこの距離を詰めて戦うこの3人だ。

ここまで近づかれては、うまく相手だけを圧殺するように能力を発動できない。俺や神野寺の様に、目視のみで能力を発動できる能力者の弱点、能力の発動範囲が大雑把なことをうまく利用されている…。

オマケに全身装甲(アーマー)を脱いでしまったので迂闊に周囲一帯重力をかける荒技も使えない。

あのNo.4の動きとは比べるまでもないが、相手の獲物はsctが装備しているマチェット、恐らく死体から剥ぎ取ったものであろう。流石に3人同時に相手をするのは無茶がある


ドンッ、、、!


「ぐあぁ___」


(よし…。)


不意を付き3人のうち1人と僅かに距離を空けることに成功、その瞬間に能力で圧殺するが、、、


ザザッ、、、


1人殺された瞬間、残された2人が3人に分裂する


(やはりな…。この超近距離戦で俺1人を相手にするなら3人がベストって訳だ、このまま戦闘を続けても敵は分裂し続けイタチごっこ…。突破口は3人を同時に、確実に殺すことっ!)


なんとか距離を置くタイミングを待つが、、、


ドドドドドドドドッッッ!!


「ッッ、、、」


3方向からの攻め、戦闘センスは俺の方が上だが体力もかなり消耗していて身体が悲鳴を上げている…。

戦闘を長引かせるわけにはいかない。

なんとか距離を空けようと隙をみるも、よくて1人潰すのが限界だ。


(どうやって隙を作らせるかだ、3人同時に殺さなければ意味がない…。)


打開策を考えているなか…。

突然


ドッ!


「ッ!?」


敵3人のうち正面の1人が背後から腹部を貫かれる。


「なっ…。(視界が、血で!)」


どうやら背後に4人目の分身を作り自らの腹部を貫かせたようだ。

完全に不意を突かれた、血飛沫で視界を奪われてしまう。


ザンッ!


「グフッ、、、」

その隙を突かれNo.4との戦いで負った腹部の傷を開かれた、吐血する。


(こいつら、どういう思考回路してやがる…どうやらただの形だけじゃなく1人1人が意志を持って動いている、にもかかわらずこちらの不意をつく為だけに自己の命を捨ててくる戦い方、イカレてるぞ…)


ザンッ!ザンッ!


「がっ、はっ、、、」


ダメージを負い、動きが大幅に鈍る。

更に、腹部付近に追撃を食らった。


(こ…これは…ま、まず、い。)


身体が思うように動かなくなり始めたその時


ーーーーーーーーーーッ!


ドサドサドサ、、、


音もなく放たれた熱線が敵の胸部を貫く、

俺を囲んでいた3人が同時にその場に倒れ込んだ。


シュウウウゥゥ、、、


貫かれた胸部にはどデカイ穴


(この能力は、、、)


「、、、、無事か。」


「助かった、神野寺。目が覚めたか。」


「いつまでも寝てる訳にはいかない、随分と悲惨な状況だが、、、俺が眠ってる間何があった、、、?」


あたりには分身を含めた大量の「(ラット)」の死体がプレスされた状態で置かれている。確かに凄惨たる有り様である。


「……ッ。」


来栖から脳内無線が繋がる。

『始末は完了したようだな。話は場所を移してからだ、仲神と如月、それに少女を連れて別のアジトに移動してくれ。』

『了解、アジトの片付けはいいのか?』

『そこは完全に位置バレしちまったからな、移動後は跡形もなく爆破する。』

来栖の指示に従い、荷物をまとめ、転送機から別アジトへと移動した。


18時46分来栖ら予備アジト


ズンッ、、、


遠くからの爆発音、来栖が位置バレしたアジトを痕跡を残さない為に爆破した。

幸い俺の傷はアジトの設備だけで事足りる程度のものだった。目を覚ました神野寺が来栖と会話をしている。


「ってことは、、、丁度きっかり1週間、グータラ寝てたわけだ、、、」


「あいつの能力も魔法じゃない、傷口を修復するにはそれなりに身体に負荷がかかる、1週間で切り落とされた片腕が元通りになるなら安いものだろう?。」


「、、、で例の少女ってのは保護できたようだな?」


「八重がなんとかしてくれた、今は例によって地下室で監禁中だ」


「、、、そうか。俺は今迄通り、俺の目的の為に好きにやらせて貰う。問題無いな?」


(少女を手にした今、神野寺の記憶が何かのはずみで戻れば即敵対だ、これまで通りに泳がせておくのは得策とは思えない。なんならいっそ今、この場で、、、)


来栖の合図を待つが…


「収集にさえ応じれば、かまわないさ。」


「、、、湖袋駅周辺に転送を頼む。」


バチバチバチッッ!!


神野寺は全身装甲(アーマー)を着込み転送、再び戦地へと赴いた。


「よかったのか、泳がせておいて。」


「リスクはあるとはいえ、今あいつを殺してどうする、仲神や如月が黙っちゃいないだろう。」


「しかし、記憶が戻れば真っ先に俺達は…。」


「奴は聡明だ、たとえ記憶が戻ってもすぐには敵対はしないさ。此方を確実に討てる時を待つだろう、その時をこっちが作ってやり、好機と勘違いし、反逆してきたあいつを叩けばいい。既に目処はついてる。」


20時01分 来栖らアジト

如月はアジトの自室で目を覚ます、八重と来栖にNo.4との戦闘のことについて聞かされた。


「じゃあなに…?僕たちと戦ってた時はずっと、手ぇ抜いてたってことかよッッ!!?」


ダンッッ!!


左手で机を叩きつけると同時に


ズキンッッ!!


右腕を失った肩に激痛が走る


「ぐぁあああああ……ッ!………ッッ!!

…フッ…フゥ」


「如月、あまり大声を出すな、傷口に障る…あの時はお前と仲神、どっちも全身装甲(アーマー)も着てなかったわけだし。相手はNo.sのアナザーネーム持ち、そんな化け物の左手と右足を潰したんだ、お前達にしてはよく頑張った方さ」


「どっちも仲神の能力の手柄でしょ。仲神は、、、仲神は無事なの?」


「無事じゃないぞ…」


フラフラとしおぼつかない足取りで仲神が部屋から出てきた。


「馬鹿っ、お前寝てろ!連続で脳震盪受けるってのは割とシャレにならないぞ!」


八重が仲神に声をかける、この人は本当にめんどうみがよい


「吐き気、激しい頭痛、もしくは身体の一部が痙攣したり麻痺することは?」


逆に来栖は大体冷静だ、ドライなのだ


「、、、ないさ、鬱ゲーの主人公じゃないんだ、頭打ったぐらいじゃ死なねーよ。」


「まぁどっちにしろ絶対安静だ、寝てろ。」


「そーだよ、万が一なんかあったらどーするの?寝てなよ!」


「、、、わかったよ」


「寝てろ!」


「わかったっつーの!」


俺と来栖と八重、3人に畳み掛けが効いたようだ。トボトボと、大人しく部屋に戻っていった。


「で、僕の腕はどうにかなるの…?」


今医者(ドクター)に作ってもらってるがいつ完成するかわからん、まぁ気長に待つんだな、、、」


「室内でもこの戦闘特化型全身装甲(コンバット・アーマー)を着て過ごしてもらう。」


来栖に装備をわたされ早速着込む


「単純な身体機能のみを上げる様に調整した試作型だが、着心地はどうだ?」


俺達『GHOST』が戦闘時に着用している全身装甲(アーマー)

元はsctのバトルスーツを改造してつくったものである。

身体能力の向上と高い耐久性の装甲はもちろんとして。

備わっている主な機能としては

周囲の敵や、地形を把握できる索敵機能。

視界の倍率変更もできる暗視スコープ。

対細菌兵器、生物兵器としても機能するガスマスク。

視界に入った映像をいつでも確認できる記録(ログ)機能。

名簿(リスト)に載っている人物を特定して詳細を伝えてくれる解析(アナライザー)機能。

これに加えて視覚と聴覚に人体に支障が出る程の過度な光と音を遮断する。

要するに、こいつを着込んでおくだけであらゆる戦闘において、かなり有利な状況に立つことができる。

そして『GHOST』に所属することのもう一つの強み。

来栖が発明したデバイス、これを脳内に埋め込むことで脳から直接インターネットへとアクセスできる、、、いわゆる電脳。

これによりどんな時でも瞬時に仲間と連絡を取れる脳内無線、要するに擬似的だがテレパシーが使えるようになる。

俺と仲神が来栖のもとにつくことになった要因の一つは来栖の持つこのずば抜けた技術力にあった。


「すごいな、普通の服見たいな感覚だ、でもなんで急に?」


「実は、アジトの位置バレした理由が、まだわかってない。」


「つまり、次の刺客がいつ送られてくるかわかんないし、室内での戦闘も念頭においておけってことね。…ちょっと待って。なんでそんな緊急事態なら神野寺もアジトに呼び戻した方がよくない?」


「、、、いわばあいつは切り札さ、どんなに警戒したってこの狭い室内じゃ能力者(ホルダー)相手なら一瞬で全員行動不能にされてもおかしくない、それに敵に覗かれたのはお前らとNo.4との戦闘だけだ。神野寺の存在は、敵にとっての想定外(イレギュラー)要素としてアジトに置いておかない方が得策なのさ。」


「あ、そう」


「聞いといてなんだよその返事は」


「いや、別に」


「、、、まぁいい、それとお前はこれからはこの薬を携帯しとけ。」


来栖から一つの錠剤を渡される


「これは?」


「簡単に言うと即座に痛覚を鈍らせる薬だ、腕を切られた位で気絶されるようじゃ今後の作戦に支障が出るんでな。」


11月1日1時57分来栖ら予備アジト来栖の個室


カタカタカタカタッ、、、


パソコンのキーボードを打つ単調な音がせわしなく響き続ける。

「んで、今だに敵がどうやってアジトを嗅ぎつけたのかわからないのか?」

パソコンを操作している来栖に後ろから画面を覗き込みながら声をかける。


キィ、、、。


来栖が回転椅子を回してこちらに向き合った。


「、、、八重か。そうだな、さっきNo.4との戦闘のときのカメラのクラッキングのときに、誰かに逆探知されていないか洗い直してみたが不審な点は一切見当たらない。まぁ俺に逆探知なんてそもそも不可能だが。となると俺達のアジトを嗅ぎつけたのは索敵、追跡型の能力者の仕業の可能性が高くなる。その場合は厄介だ。」


そういいつつ来栖は余裕綽々な態度だ。


「敵がいつ攻めて来るかわからないような状況が続いているんだぞ、何か手は打ってあんだろうな?」


「なに、そう焦ることはない。敵は今回の俺達の消耗の激しい戦闘後を狙い、さらに野良(フリー)能力者(ホルダー)まで使って、尚、奇襲に失敗したんだ。」


「焦りを感じているのは向こうの方。ってことか」


「その通り、それに恐らく敵の一番狙いは俺達の保護している少女だろう、今日ここに来た(ラット)、、、その気になればアジトを丸ごと吹き飛ばすくらい訳ないしな。例えば爆弾を抱えこんで突っ込んできてそれを無限大に増やして、、、なんて事も出来ただろうしな。」


「、、、。(確かに、戦闘中にこちらの視界を塞ぐためだけに命を投げ捨てる輩だ。皆殺しが目的ならそういう攻め方もしてくるだろうな…。)」


「まぁ勿論この状況をずっと続けるつもりは無い、作戦は3日後、だ。」

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