第1話「奪取」
感想くれると作者が喜びます。
2056年5月21日関東地方で謎の有害汚染物質が大量発生これにより東京都、栃木、千葉、茨城県全体、及び一部に危険区域、警戒区域、準警戒区域が設けられる
汚染物質は今までに確認されていないものであり、10年たった現在も危険区域では発生が続いている…。
2066年10月25日14時53分警戒区域F地区
「缶詰が…大体三ヶ月分…、水は雨水がそのまま利用できるようになってるし…。」
「おい、如月ぃ!マチェットと銃はどこ置いとくよ?」
「そっちの机の上でいいでしょ、有事に備えてすぐ使えるようにしとかないと意味無いし…。」
「りょーかい。…大体3時間か、ようやくひと段落って感じだな?」
「あぁ…。」
「にしても、ソファーと机と棚ってだけじゃ殺風景過ぎるよな、花でも飾るか?花?」
考えなしな発言をよくするのは仲神の悪い癖だ。
「冗談ぽいよ、世話は誰がするのさ。」
「勿論、お前がしろよ、あんなに花飾りたがってたじゃん。」
「たがってないよ…。そもそもここは来栖のアジトがある限りはほとんど使わないだろうし、余計にいらないよ。」
「えっ?使わねーの?とゆうか準備し終わってから聞くのもなんだけど、なんでアジトがあんなにわざわざこんなところに新しい住み処作ったんだよ。」
「来栖達死んで、いつアジトが使えなくなるかもわからないからね、フロンティアの方は今バタバタしてるみたいで迷惑かけたくないし。それにここらへんは転送機多いんだよね、言うことなしだよ。」
なんて話していると
キーーーンッッ……。
噂をすれば、耳鳴りと共に脳内無線に連絡が入った。
『急用だ、全員可能な限り早くアジトに集まってくれ用件の説明はアジトで話すっ!!』
それだけ言って通信が切られてしまう。余程の切羽詰まっているようだ。
仲神の様子を伺うといかにも面倒臭そうな顔をしていた。
「はぁ……。こんな真っ昼間から、お盛んな連中だねぇ…。」
「言ってる場合じゃないって。全員収集なんて、余程だよ。」
即座に仲神と共に部屋を出た。
すぐに最寄りの転送機に辿り着く。場所を選んだ甲斐があった。
「んじゃお先に。」
仲神が転送機に触れると…
バチバチバチっ!
一瞬で仲神の姿が消える
「これ一瞬ビリビリするから嫌いなんだよね、、、。」
仲神に続き転送機に触れる。
転送機、来栖が開発した最も便利な道具のうちの一つであり、様々な所に設置されている。詳しい原理は不明だが簡単に言えば人間を素粒子レベルで解析、分解し、信号としてそれを移動先の転送機に届け再構築するものらしい。更に万が一アジトの位置を悟られないように、途中何度か別の転送ポイントを通して本部に転送される事が多い。
15時48分 如月らアジト
バチバチバチッッ!
「あれ?着いた。」
今回は1回で転送ポイントを通じてアジトに辿りついた、やはり相当切羽詰まった状況らしい。
アジトには既にメンバー二人が到着していた。
「あ、八重さん…。」
「おーすっ、ロリコン。」
「揃ったか。どうだ、そっちのほうは?」
アジトに着くやいなや、八重さんに話しかけられる、強力かつ汎用性の高い能力の持ち主であることに加え、人柄の良さから来栖に次いで俺たちをまとめる、副リーダー的な存在だ。
「まぁボチボチだ、たまにsctと戦闘になるくらいだな、そっちどうなんだよロリコン」
「sctね、、、。こっちも資源集めがてらG地区に立ち寄ったんだけど結構な数、能力者が殺されてたな、政府も"あの"4人を相当暴れさせてるみたいだな…。あと、俺ぁロリコンじゃねーよ、埋めるぞ。」
部屋に入ると八重さんにそれに加えて神野寺が既に装備を着て待機していた。俺達もそれぞれの個室で全身装甲を身につける。
神野寺は相変わらず人を寄せ付けない雰囲気を醸し出しながら部屋に備えつけてあるソファーに腰をかけ、何も無い場所を見つめている。出来ればそのまま放っておきたかったのだが…。
「おっ、神野寺ィ、久しぶりだな」
仲神は目に付いた人間には誰にでも考えなしに話しかける癖もある。
(まぁもう慣れたけどね…)
「『探し物』の手掛かり、なんかしら見つかったの?」
適当に返事がしやすいような会話を俺からも投げかけるが…。
「、、、いや、進展無しだ。」
無愛想にそれだけ呟く。
相変わらずもの静な人だ。
バンッ!
そんなこんなしていると奥の扉を蹴破り来栖が出てくる。
「揃ったな…国のsct(secret combat team) から本部に例の少女が警戒区域C地区の某駅で確認されたという通信があった。これからその駅に転送後少女を回収する事が作戦目標だ。」
「んで、なんでわざわざ収集したんだ?」
八重が口を開く。
「一度収集したのは現在、駅の東口周辺で
『組織』のメンバーらしき連中とsctとの間で既に戦闘が開始している為だ。今回は仲神と八重、神野寺と如月の二手に別れて行動してもらう。
予測される主な敵勢力はsct5〜7隊、それと『組織』と野良の能力者の連中には特に気をつけてくれ。
仲神達は駅の東口周辺に転送後邪魔な敵の陽動、殲滅。
神野寺達は北口周辺に転送後目標の少女の捜索、回収することが主な目的だ。」
作戦内容が一通り伝えられ、、、
「はい、じゃあ質問あるやつ?」
「ないね。」
「ねぇ。」
「ない。」
「、、、。」
「んじゃ、健闘を祈る。」
バチバチバチッ!
順番に転送機を使って転送が開始された。
警戒区域・・・10年前の大事件により発生した汚染物質に侵される危険性が高く一般人の立ち入りが禁止された地域、現在では東京をはじめとした関東地方の一部はA〜G地区として命名され扱われている。
しかし、膨大な資源の眠る元大都会に誰も目をつけない筈もない。
現在、この地域に住み着いている人間はおおよそ以下に当てはまる。
大都会に残された資源を漁る者
犯罪者、能力者として政府から処分されることから逃れてきた者
廃都となった東京が発祥となり流行り始めた謎の麻薬「片道切符」を求める者
そして素性、目的不明。警戒区域で活動している能力者集団の中でも異彩を放つ、黒スーツがトレードマークの6人組の能力者組織「Reservoir dogs」etc…
15時56分 警戒区域C地区某駅一階東口
バチッ!バチバチッ!!
知らされた通り駅東口のポイントに転送される。隣にいる神野寺が現状を報告する。
「目的地に到着、敵影は無し、如月と捜索を開始する」
そう言い終わると同時に
ズンッッ、、、!
激しい振動と共に爆発音、早速仲神達が派手にやっているようだ。
『了解だ、連絡によると例の少女は現在地下3階で目撃された、それと既にsctの2つの隊から本部への連絡が途切れている、おそらくかなり強力な能力者だ、「組織」メンバーの仕業の可能性が高い注意しろ』
「了解、行くぞ如月」
「うん…。」
2人で捜索を開始した。
16時13分 駅地下3階
「うげ、エグいね。」
探索を開始して15分程…。
sctの隊員の複数人の死体と出くわした。
体が数パーツにも分かれており、死体があちこちに散らばっている。
辺り一帯血の海だ。
「不意打ちで3人、それを逃れた2人と交戦し始末している。相当の手練れだな。組織の連中の可能性もある・・・。進むぞ、あたりに注意しろ。」
神野寺にそう言われ歩きだした矢先…。
「そこの、1つ、尋ねたいことがあるんだが。」
突然の背後からの声。
「ッッ!!」
咄嗟に神野寺と同時に振り向き装備していた自動小銃を構えた先には…。
全身黒のスーツ姿の男、、、
全身装甲に搭載されてる機能の一つ情報解析を使う、こいつは名簿に乗ってるほとんどの人間についてならの情報を伝えてくれる。
『認証完了。組織の一員、通称『ブルー』です。』
組織の人間なら間髪入れず殺すのがベスト、引き金を引こうとしたその時。
視界から消えた物は2つ。
目の前に向き合っていた男の姿、そして
「ッッ!」
「神野寺!!」
一緒に銃を構えていた筈の神野寺の右腕だ。
ドサッ…
気づけば神野寺の右腕は切断され足元に転がっており、神野寺自体もバランスを崩しその場に倒れ込んだ。
咄嗟に倒れた神野寺に駆け寄り、傷の様子を見る。
「ようやくノルマ達成か、やっと帰れる…。」
再び背後からの声
(一切の力の因子も感じさせずに腕を切断、加えて背後に瞬間的に移動、これが…組織の能力者の力か…。)
ボッッ!!
「んお、あつっ、なにこれ!?」
神野寺が能力で辺り一帯を水蒸気で覆う。
相手からの視界を遮る目的だろう。
全身装甲の機能で相手の位置はこちらからは確認できる。敵の能力は未知数だが少なくとも瞬時に場所を移動できることは確か、姿を隠すのは良策だ。
(とはいえ、ここは無難にこの距離を保ちながら銃で応戦がベスト…。)
そう考えていた矢先…
「消し炭ンなっときなぁ!!」
基本的に、相手を即死させることのできる程の能力者の戦闘は一瞬で決着がつくものだ、、、。
神野寺がそう怒号するやいなや
グニャリ、、、
空間が曲がったように思えば、
シュゥゥゥゥゥ………。
相手の立ち位置を中心に球状にそこにあった物体が消滅した。
神野寺の能力は視認しているものに熱を持たせる能力、どんな物体をも一瞬で蒸発させる程の熱量を持たせることが可能な上に、その発動条件は対象を視認することだけ。
俺が今まで出会ってきた能力者の中でも最高クラスの威力と汎用性のある能力の持ち主だ。
「仕留めた…?」
敵は暗視ゴーグルから姿を消し生命反応も無い…。
「いや、、、ハッキリと、はわから…ないが攻撃を食らう…前に姿を消したように感じ…恐らく、空間を行き来するよう…な…。」
ドサッ!
「おっ、ととっ。」
倒れこもうとした神野寺を抱える。
「オイオイオイ、取り敢えず医者んとこ連れて、、、途中何にもなければいいけど。」
気を失ったらしい、片腕を切断されあんな能力の使い方をすれば当然か、幸い腕の切断面は綺麗だ、これならあの医者ならくっつけてくれるだろう。
といってもいつ組織の連中が襲ってくるかもわからない状況で僕一人で怪我人を運ぶのは危険過ぎる、来栖に応援を頼んでおくべきか…
16時14分
駅一階東口付近 仲神、八重サイド
『八重、そっちの状況は?』
「……!」
来栖から脳内無線で連絡が入る。
『今さっき終わった』
『と言うと?』
『sct3つの隊の音信が不通になってるだろ?』
『殺したか?』
『無力化しただけだ。問題があるか?』
『いや、…流石だな。本題だが。今さっき如月から連絡が来たところだ、仲神を地下3階に向かわせて如月と合流させてくれ。神野寺を医者に診せにいくんだが如月だけで神野寺を保護しつつ戦うのは危険だ、神野寺を治療させたら如月、仲神はそのまま撤退させる。ここまでは計画通りだ…』
『俺は?』
『おそらく生き残ってる最後の1隊だろう、sctから地下5階で例の少女を保護したという情報が入った、「1桁」あたりを送り込まれると厄介だ、援軍が来る前にsctから少女を奪還し帰還してくれ、事が予想以上に上手く進んでる、ここまできてミスは出来ないぞ。』
『了解だ』
来栖との脳内無線を終え、仲神に声をかける
「仲神、来栖からの命令だ。お前は地下3階で如月と合流して、神野寺を医者のとこまで連れてけ。俺はこのまま少女の捜索を続ける。」
「りょーかい、神野寺はダイジョーブなのかよ。」
「組織の連中に腕掻っ切られたってよ、如月一人じゃ危険だからお前もいってやれだとさ…」
16時15分 駅地下5階
『こちらsct D班、少女を完全に無力化、他の班は全滅しているみたいだ、この状況で帰還は厳しいだろう、至急援軍を要請する』
『既に新たにsctを5隊そしてNo.(ナンバーズ)二人をそっちに向かわせた、後2分程で到着する、なんとかその場で持ちこたえろ』
『了解、小じょ__』
ズズンッッ、、、!!
『おい!どうした!?おい!!?』
(アッサリとやれたな…。)
通信中に気を取られていたのか、気付かれることなく、sctを能力で無力化させることができた。
「よし、こいつが例の…」
全身を拘束され顔まで隠されている為はっきりとしないが体のラインから年齢は15歳と確認できる。
(15歳……ギリギリアウトかな。)
『来栖、少女を奪還した。帰還する。』
来栖に脳内無線で連絡を取る。
『早いな、流石だ、連絡によると後2分で増援が到着する、最寄りの転送ポイントから至急帰還してくれ、途中変な気を起こすなよ』
『こんなババアは範囲外だよ。それより3人は?』
『……。たった今、合流したらしい、仲神がいれば問題無いだろう。本当によくやった、一応少女に探知機などが付いてないか確認してから帰還してくれ。』
17時04分 来栖らのアジト
バチバチバチッ!
転送が完了
仲神と合流した後、神野寺を医者のもとへ無事連れて行き、なんとかアジトに帰還したと同時に
「つ…疲れた…」
仲神はその場に倒れ込んだ
「来栖、帰って来たよ」
バンッ!
奥の扉から来栖が現れる
「よくやった、神野寺は?」
「無事さ、腕はくっついた、1週間は寝たきりになっちゃうらしいけどかわりに起きた後には全く支障なく動かせるってさ。」
抱えていた神野寺を部屋まで運びベッドに寝かせてやる
「仲神、、、あれ?」
「zzzzz」
仲神はその場で倒れこみ寝てしまっていた、、、。
久しぶりの戦闘で心身共に、消耗していたのだろう…。
「で、例の少女ってのは?八重さんの姿も見えないけど」
「あいつは俺の頼んだ用事で出掛けてる、少女は既にここの地下室で監禁してる。幸いsctが全身拘束してくれていて作業が楽だった。」
「ようやく…1人目だね。」