魔王様は魔道人形と戦うようです(3)
魔方陣から解き放たれた、雷は、荒れ狂い、飛び回り、駆け回り、
光の速度で巨大な銀色の物体に接触すると。
青白く光り輝く、滝の様な奔流が天から魔道人形を飲み込んだ。
一帯が、白く焼失したように光り輝き、辺り全体が眩しく光り輝く。
あまりの眩しさに、魔王の後ろに立っていたモニカは、
ぎゅっと目をつぶった、しかし目蓋の裏からも白い光は強く光り輝き、
世界そのものが白く塗りつぶされる。
そして、遅れて、呪文が衝突したと思われる激しい音が聞こえた。
大地そのものが真っ二つに割れたのではないか、と思うほどの爆音に耳鳴りが鳴り響く。
白銀に染まった、世界の中、魔王はしっかりと目を見開き、
銀色のゴーレムを飲み込み、暴れ回る、雷の嵐を見ると満足げに微笑んだ。
「どうだ、銀色の魔道人形よ
如何に貴様が魔法銀で出来ているとはいえ
これは耐えられんだろう」
ゴーレムの体からは声なき魔道人形が悲鳴を上げるかのように、
鉄が軋めき、わななく音が響きわたる。
魔法を通しやすい魔法銀で出来た身体は、
頑丈で軽く、ゴーレムの性能も飛躍的に高まるだろう。
しかし、ゴーレムが動くためには、核となる魔石が必要である。
魔法銀は確かにゴーレムに与える命令を伝達する速度も高めるだろうが、
弱点である「雷」を受ければ、ゴーレムの命とも言える魔石が受けるダメージは計り知れない。
そういう弱点を読んだ上での一撃だ。
もはや、相手が動くこともない。
ゴーレムは苦しむように腕を上げ………。
「ジークトア殿ッ!!! あぶないっッ!!!」
魔王は突然、駆けてきたモニカの体に弾き飛ばされた。
そして、モニカの場所に横なぎに薙ぎ払うように振るわれた、
ゴーレムの一撃がモニカの右肩に当たり、モニカの体は魔王の頭上を越えて勢いよく宙を舞い、地面に叩きつけられた。
「モニカッ!!!!!」
信じられないことが起こった、一瞬の出来事に魔王は慌てたように口を開き。
モニカの様子を見る。
ゴーレムの攻撃を受けた、モニカの右腕はもはや使い物にならないほどに、
腕の形状を歪めており、相当な痛みが襲っているはずだ。
しかし、モニカは額に玉のような汗を浮かばせながら魔王に答えた。
「ジークトアッ!! 私のことは良い!!!
目の前のゴーレムを見てくれッ!!!」
モニカの言葉にはっ、と目の前を見るとすでに次の攻撃動作に入ったゴーレムの姿が目に映る。
慌てて、自身に脚力強化を施すと、魔王は地を蹴り、攻撃を躱す。
攻撃を躱しながら、目の前で起こった不可解な出来事に眉をしかめつつも
魔王は口を開いた。
「我が思うよりも頑丈に作られている魔道人形なのか?」
「――――それなら、………これなら、どうだ」
魔王の右手の、人差し指、中指、薬指に黄金の光が灯る。
そして"まったく同じように"魔王の左手にも光が灯った。
二つの腕を振ると、二つの光は、左右対称に同じ動きをしていき、
瞬く間に"三重の魔方陣が二つ"出来上がった。
「今の我が出せる、最大火力だ。こうべを垂れ、受け取るがいい」
「W魔法
三重詠唱:雷×雷×雷」
「怒りを解き放て!!! 『オーディンの雷』ッ!!!
もう一つおまけだ!!! 解き放てっッ『オーディンの雷』ッ!!!」
魔王が呪文を解き放つ言葉に合わせて、
魔方陣から解き放たれた雷が、光の速度を持ってゴーレムの体を包み込む。
三重詠唱を同時に打ち込んだ威力は単純に二倍の威力を持つわけではない。
二つの魔法は、複雑に交差し共鳴し増幅する。
それはもはや、別の魔法と言えた。
最初の時とは、比べものにならないほどの光と音が、視界を白く染め天に警報を鳴らす。
地面を焦がし、穴を開け、鉄をも溶かすほどの本流を受け、
銀色の巨体はガシャリガシャリとその身体が割れていく。
――――雷が徐々に収まっていく。
焦げた土と草の匂いが風に乗って運ばれてきた。
魔王は目の前にそびえ立つゴーレムを見上げる。
身体には、無数のひび割れのようなモノが広がっており、
ひび割れた体からは青い鉱石の様なものが剥き出しになっていた。
その巨体は地面に片腕を付いたまま動きを止めている。
今の自分に打てる、最大火力の一撃を放ったのだ。
流石にこれで倒れてもらわないと困る。
魔王はゆっくりと息を吐き、モニカが倒れている場所へ駆け出し………………。
『突然、横から飛び込んできた銀色の物体によって
魔王の視界は途切れた』




