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魔王様は魔物退治に出かけるようです




ガタンゴトンと冒険者を乗せた馬車が揺れる。

馬車を引いている馬は走り、風を切り、見事なたてがみが風になびいていた。

馬の背に一人跨れば心地よい風を感じられるだろう。

しかし、馬車の中に乗り込んでいる冒険者たちは違う。


凹凸のある道を乗り越えるたびに馬車は大きく揺れ

馬車の中の冒険者たちは悪態を付いた。


……悪態を付くその中には漆黒のマントで身を包んだ魔王ジークの姿もあった。

また、馬車は大きく揺れて、魔王は今一度、悪態を付く。


「くそっ! 乗る前はどんなものかと思ったが

 二度と、このような乗り物には乗らん!!」


馬車の中の空間だけ見るなら、居心地は悪くない。

魔王ジークとリーゼを含めて冒険者は合計5人が乗っていたが、

それぞれが横になるほどのスペースがある。

しかし、馬車が揺れるたびに起こる、振動だけは最悪と言っても良かった。

馬車が揺れるたびに、冒険者たちは強かに腰を打つのだ。


また、ガタンと揺れ、魔王は何回目か分からない悪態を付くと

自分の腰と尻を擦る。


「このままでは、依頼の場所に着く前に

 我の尻が擦り切れるかもしれん。

 リーゼよ、お前の尻はどうだ尻は」


「尻、尻言わないでくださいますかジーク様」


眉をしかめて言葉を返すリーゼは、

魔王ジークの同伴者と言うことになっている。

依頼を受ける冒険者に、同伴者を二人までは、

付けても良いことに規定ではなっているらしい。


そういえば、と思い出したようにリーゼが口を開く。


「魔物を退治する依頼を受けたようでしたが

 どんな内容なのですか?」


「………ふむ、魔道人形を倒せと言うものだったぞ」


「魔道人形………『ゴーレム』ですか」


ゴーレム。

手足が作られた石と命令を与える魔石コアで出来た魔道人形。

馴染みのある、その名前はかつては人の労働力の代わりとして活躍していたものだ。


………そう、"かつて"は活躍していたモノの名前にリーゼは疑問を口にする。


「ゴーレムは、「命を持った反逆」の事件以来

 ほとんど破棄されたと聞きましたが

 今更どうして出てきたのでしょう?」


命を持った反逆と言う事件は、簡潔に言うと、

とある魔法使いが、ひっそりとゴーレムの命令を書き換え、

国中のゴーレムが一斉に暴れ出し、大きな被害と犠牲を出したという事件である。


その事件以来、ゴーレムの危険性が再認識され、

国中の魔道人形は破棄されたはずだった。


そういう経緯を知っているからこそ

納得できずに首を傾げるリーゼなのだが………。

魔王も詳しいことは何も知らない様子だ。


――そのやり取りを静かに見ていた、

馬車の中に乗っていた冒険者の一人が話しかけてきた。


「お前は依頼の内容を確認もせずに来たのか?」


まだ若いと思われる、目つきの悪い男は魔王を呆れた目で見る。

魔王が、そうだ。と肯定すると

益々、呆れたようにため息を付いた。


話しかけてきた男にリーゼが話しかける。


「今回は生き残りのゴーレムを討伐するのですか?」


「違う、今回の依頼は

 "発掘されたゴーレム"の魔石コアを回収しに行くのさ。

 この辺りでは稀にそういうのが出てくるんだよ」


男の言葉にリーゼはなるほどと頷いた。

そうした会話をしていると、

奥の方に居た毛むくじゃらの顔をした男も会話に加わってくる。


「せっかくじゃから、自己紹介するか

 わしはヴィアーノ。二つ名は武闘派鍛冶屋

 見ての通りドワーフじゃ。よろしく頼む」


毛むくじゃらの男はドワーフらしい。

筋骨隆々だが背は小さい。


「俺はアルミロだ。二つ名はまだない

 この依頼限りだと思うがよろしく頼むぜ」


目つきの悪い男の名はアルミロと呼ぶらしい。

アルミロは、続けて奥に一人で座っている男を指さすと言葉を続ける。


「あいつはガンツだ。二つ名は音無しの大剣使い

 喋れないわけじゃないが、無口な野郎だ」


奥に座っている短髪の男ガンツは目が合うと

軽く頭を下げた。


魔王とリーゼも自己紹介をすると、魔王は疑問を口にした。


「しかし、二つ名持ちが二人もいるのか………

 そんなに強力な冒険者なのか?」


そうは見えないが………と言うことは口にせずに魔王は言った。

魔王の言葉を聞いてアルミロは説明を始めた。


「うん? お前知らないのか?

 俺たち3人は、みんな銀級だ。けど銀級でも二つ名は付くんだよ

 ………まぁ、たいていは変な二つ名が付くけどな」


「冒険者にはランクがある。

 「新人」「銅」「銀」「金」「白銀」「金剛」ってな

 本格的に二つ名に価値が付くのは金のランクからだ

 ランクが変わると二つ名も大抵は変わる。

 銀以下はギルドのお遊びみたいなものよ」


「まぁ、銀と金には大きな壁があるのだけどよ………

 ところで、あんたはどのランクだ?」


「今日、冒険者になったばかりだから

 新人と言うことになるな」


「新人って………嘘だろう!!!」


アルミロとヴィアーノが魔王を信じられない目で見ると、

魔王は何か不思議なことでも? と言うような目で答えた。


落ち着かないように自分のひげを撫でながら

ドワーフのヴィアーノは魔王に言う。


「新人………の話は置いておくとして

 さっきから、お前さんは武器を持っていないように見えるのじゃが

 どうなっておるのじゃ?」


「我は魔法使いだ。武器は持っていない」


その言葉にピタリと硬直したようにひげを撫でる手を止めるヴィアーノ。

対する、アルミロは「こいつは駄目だ」と小さく呟き、目を逸らした。


基本的にゴーレムには魔法が効きにくいとされている。

それを何の準備もしていない、魔法使いの新人が依頼を受けているのだ。

同業者が呆れるのも当然である。


しかし、そんな反応を受けても、魔王本人はどこ吹く風だ。

のんきに馬車の外の景色を見ようとしていると、

ガクンと馬車に不自然な揺れが起き、前方から馬の鳴き声が響いた。

そして、馬車はゆっくりと動きを止めたようだった。


何事か起こった様子にすぐにアルミロが馬車の先頭に近づくと、御者に話しかけた。


「どうした!! 何かあったか!!!」


「いえ、それが魔族の子供が飛び出してきて………」


「あぁ、魔族か。放っておいて進めば………

 おいっ、新人どこに行く!!」


御者の言葉を聞いた、魔王とリーゼはすぐに馬車から飛び出すと、

馬車の先頭に駆けて行った。


 ――◇◇◇◇◇――


「――おいっ、大丈夫か!」


魔王は、馬車の前方で荒い息をしている子供を抱えると語りかけた。

ボロ布を身に纏った子供の肌は白く、両耳は尖っており、

頭には小さな角が生えていた、胸にある小さな膨らみから少女だと言うことが伺えた。


魔族の少女は魔王達を見ると、切れ切れに言葉を紡いだ。


「――ぼ、冒険者ですか?」


「あぁ、そうだ。何があった?」


魔王が話しかけると、少女は激しくせき込んだ。

リーゼは少女の足を見て、表情を険しくする。

少女の足に靴の様なものは見当たらず、

足の裏には擦り傷や切り傷が無数にあり、血がにじんでいた。


魔族の少女は必死に指を差すと、切れ切れに言う。


「わ、私のことは、いいです………。

 向こうで、冒険者さんが、一人で、ゴーレムを、止めてます………。

 早く行かないと、手遅れに………」


少女が指さしている方は、魔王達が向かっている方角と同じだった。

ゴーレムと言う言葉からも、今回の依頼の件なのだろう。

魔王は少女の目を真っ直ぐに見て、分かった、後は任せておけと言うと

リーゼに向かって言った。


「リーゼベルよ! 馬車で行っては間に合わん!!

 我は先に行かせてもらう!!!

 子供の手当ては任せるぞ!!!」


「はい、かしこまりました。

 こちらはお任せくださいませ」


リーゼの言葉を聞くと、魔王は地面を蹴り、

宙に浮かぶと、漆黒のマントが生き物の様に蠢き、

捻じり、形を変え、巨大化し、瞬く間に巨大な漆黒の翼となった。

そのまま、翼をはためかせ、

魔王はゴーレムが暴れていると思われる場所に急ぎ飛んで行った。

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