お散歩は大事です
「お食事がすみましたら軽くお散歩でもしますか?といっても屋敷の敷地内だけですが。」
食事中に急にしょんぼりしだした私に気を遣ってくれたのかクロムさんがお散歩を提案してくれた。
え?お散歩??
心は人間だが体は柴犬、お散歩の言葉にしっぽとお耳がピンと反応する。
正直な体めっ!
あまりにもわかりやすい反応にクロムさんは苦笑し、宝物を扱うかのように
そっと抱き上げて館の外に出してくれた。
あれ?散歩って私が歩くんじゃないの?
正面玄関を抜けて東の方のバラ園らしきところまでゆったりと歩く。
クロムさんが…。
その間私はクロムさんの腕の中。
あのーこれって私の散歩じゃなくないですかね?
甘やかすと我儘ボディになっちゃいますよ。
でもまぁいいや、外の空気は気持ちいいし、クロムさんの腕の中はあったかくて楽ちんだし。
相変わらずのNOと言えない、長いものには進んで巻かれちゃう心は日本人な私は
されるがまま、ゆっくりと日差しと景色を味わうことで満足してた。
「ここが我が屋敷の自慢のバラ園なんですよ。見事でしょう?お嬢さんの方が
はるかに綺麗で可憐ですけどね。」
様々な種類のバラが咲き誇り、アーチがつくられ、その向こうには
バラの垣根で迷路になっているようだ。
これぞお貴族様って感じの庭園!
専属庭師が丹精込めて作り上げたであろう作品と比べないでいただきたいですよ。
自分はしがない柴犬ですし。
そんな見事な芸術作品の前で、ただの柴犬な私を褒めちぎるクロムさん。
ごめん、ちょっと意味わかんない。
柴犬とバラを比べる意味もわからなければ、柴犬が勝つとかもっと意味わかんないよ。
でもクロムさんがご機嫌なのだけはわかった。
その証拠にクロムさんの周りがキラキラしている。
さすがキラキラ属性、実際に光っているように見えるよ!
ってあれ?キラキラが移動してきた。
私の前に
わたしもついにキラキラ人の仲間入り?
いや、今人じゃなくて犬だけど、柴犬だけど
と思ったらキラキラしているものから声が聞こえてきた。
『ねぇねぇ 君 この前森で倒れてた子でしょう?元気になったのー?』
『僕たちが見つけたんだよー元気になって良かったねー』
『元気になったなら 遊ぼうよー』
移動しているキラキラしたところから聞こえる声の主を見つけようとじっと見つめてたら
羽の生えたちっっちゃい子供みたいな子たちが見えた!!
おぉこれってマジでファンタジー!
精霊さんってやつですか?
見つけてくれてありがとう。
そのせつはお世話になりました。
この通り元気です。
遊びたいけど今はクロムさんに抱っこされているのでまた誘ってくださいねー
って一生懸命おしゃべりしようと頑張ってみたけど
「わふっ」
としか声にならなかった。
…通じたかな?




