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貴方が私を見ていたなんて私は知らない

結局その日はベッドに入るのも遅くなっていて

明け方近くにやっと眠りについた

それでも眠れないと思ってたから

魔性のお布団の魅力は恐ろしい


いつもの通り夢は会社のリフレッシュルームではじまった

暗い中、成瀬さんがぼんやりとこちらを見て柔らかくほほ笑んだ


「やっと…きてくれた もう今日は来ないんじゃないかと…思った」


目を細めて愛おしそうにこちらを見る成瀬さん


「何故?」


何故 待っててくれるんですか?

何故 そんな顔で私を見るんですか?

何故 毎日私の夢に…


「それはね 会いたいから もう一度君と現実で会いたいから」


「どう…して…」


どうして私なんかにかまうの?

どうして私なんかと会いたがるの?

成瀬さんは人気者じゃない

どうして私…なの?


「皆藤凜さんが 好きだから」


答えを聞いたと同時に成瀬さんにぎゅっと抱きしめられた

腕の中に閉じ込められて息苦しい

それでも成瀬さんからの答えに混乱して

成瀬さんの腕の中にそのまま閉じ込められていた


「何故…」


「クスッ また その質問だね」


だって、もう私の中では「何故」と「どうして」しか思い浮かばない

疑問しかない


「ねぇ 今 君は別の世界にいるんでしょう?早くこっちに帰ってきて

そしたら 答えを教えてあげる どんなに君が好きなのか教えてあげるから…」


さらにギュッと強く抱きしめられて成瀬さんの顔が見えない

どんな表情でその言葉を紡いでくれているのか

私は見ることが出来なかった


「現実の世界で待っているから だから絶対帰ってきて

帰ってきてくれるまで ここで待ってる」


今日はもうタイムリミットかな?


そう呟いて私のおでこに軽いキスを落として

いつもの調子のちょと軽めの雰囲気の成瀬さんの顔に戻り

手を振ってくれて


その姿を目に焼き付けて


私もまた柴犬の姿で朝を迎えた



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