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君に会えるまで眠り続けたい

暗い部屋の中

俺は彼女がやってくるまで待ち続けている

いつもの定位置の椅子に座り

ぼんやりと彼女がくるであろう方向を見続けていた


果たして彼女は直ぐに姿を現してくれた

やはり今日もキョロキョロと周りを見渡し

一歩ずつ進んでくる

彼女の行動に合わせるように、今まで暗かった

周りの景色が色づいていく


あぁ今日も君に会えた…

彼女との繋がりを持たせてくれるリボンを今日は手首に巻いているので

それをそっと撫でた


「皆藤 こっち」


片手をあげて合図をし、彼女の気を引く

我ながら軽薄そうな声色に若干苦笑いするが

まぁいつもの事なので彼女もスルーしてくれるだろう


俺の姿を見つけると彼女は一瞬目を瞠り

そのあとゆっくりとこちらに向かって微笑んでくれた


今までのちょっと困ったような笑顔ではなく

嬉しさが混ざったような微笑みに見えた

大分、俺の希望的観測が含まれているが…


俺の横に座って貰って今日も短い時間だが

ひと時の逢瀬を楽しもう


何の話をしようか?

会社であったバカな後輩の話でもするか?

いや、そんな事話して後輩に興味を持たれたら困るぞ

俺に興味を持ってもらわないとだよな


彼女はとても気遣い屋さんで

どんな話でも楽しそうに聞いてくれる

たとえ自分の興味もない話でも


ありがたいことなのだが

どんな話題が彼女の気を引けるのか判定が難しい


んーそうだ

今日は俺の姉の話でもしようか


俺には一人姉がいる

身内の贔屓目抜きで優れた容姿に優秀な頭脳を持ち合わせていて

世間からは絶大なる評価を頂いているようだけど


弟の俺からすれば、ただの魔王だ


俺のことは下僕扱い

いや、代々の彼氏たちも下僕として扱われているようだったけど

彼らは喜んでいたから問題はないだろう…


自分が人にどう評価されているかわかっている状態で

行動を起こす

自分の容姿、頭脳、女という武器をフル活用して、それのどこが悪いの?

と可愛らしく首をかしげる姉


それを幼いころから見続けてきた

一時期、女性不振に陥りそうになったこともある


だからかな?

君を見てるとほっとするんだ


控えめで、いつも一歩後ろにいて周りに気遣っているよね

つねに笑顔を心掛けようとしても、うっかりと顔に出しちゃうような

不器用なともあるよね そこが可愛いんだけどね

何事にも一生懸命で努力家だよね


そんな君は俺の姉の魔王っぷりと俺の下僕ロードの話を

笑いながら聞いてくれるだろうか

俺のヘタレ話を聞いてがっかりしてしまうだろうか

それでもいいよ

傍で俺の話聞いて俺を見てくれるのなら



君のいない日常はつまらないよ

会社で会えるかなってつい期待してしまう

君の体は病院

心は別の世界だってわかっているのにね


あぁもうすぐタイムリミットがきてしまう

もういっそうのこと

君に会える時間まで

眠り続けたい




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