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そしてまた夜がくる

あのペロペロ事件の後も、お二人にブラッシングされたり、リボンを沢山付け替えさせられたりと、色々とぐったりしました

主に精神面で…


美形のドアップとか、腰にくる甘い囁きとか、確実に私の寿命縮めにきてたよ


金髪王道王子さまに、首に巻かれているリボンにキスを落としながら

「貴女の心もこのように縛れれば良いのに…」

とか、耳元で囁かれた時なんて吐血するかと思ったよ

この世界に動悸、息切れに効く求心はありませんか?

今の私の血圧と脈拍はとんでもない数値を叩き出してるでしょうよ


最後の方なんて、アワアワしている私の態度を楽しんでた風だし…

自分の魅力を確実にわかってて、仕掛けてくるなんて、反則だ


そんな感じで危うく萌え死にそうになってたけど、流石に王子さまはお忙しいようで

あっという間に騎士風の人に囲まれて捕獲され、馬車に押し込まれてドナドナ風に

帰られました


…悲しそうな瞳でみ~て~い~る~よ~




王子さまが連れ去られた馬車を見送った後に

クロムさんがテーブルの上に何かの紙を広げて話しかけてきた


「さて、お嬢さんは私たちの言葉、わかりますよね?文字はどうでしょうか?読めますか?」


そう言われたのでテーブルの上を覗き込んでみた

そこに広げられていたのはなんと!平仮名表!!


ここって日本語ですか?そうですか

なんて私に優しい世界

ご都合主義すぎてちょっと怖いけど


こくりと頷く私をみてにっこり笑うクロムさん

あぁ笑顔が眩しすぎて直視できません


「では…よろしければお名前を教えていただけませんか?」


そういわれて気付く

私クロムさんにお世話になっているのに

なんたる不義理

犬だからって甘えちゃダメだよ


平仮名表で自分の名前を前足で指そうとして…

あう…前足が太くて文字が隠れる…

それでもゆっくりと自分の名前をなぞる


り ん


下の名前だけでいいよね?

短い名前で良かったとしみじみ思ったよ

犬の前足、細かい作業無理


ゆっくりなぞられていく文字を見て、愛おしそうに私の名前を呼ぶ

「りん…様」


「りん様 素敵なお名前ですね 貴女にぴったりです」


やーめーてー

美形に愛しそうに名前呼ばれて微笑まれるなんて、辛い

この状況が辛い

凡人にはスルースキルが備わっていないのですよ

いちいち反応してしまう私を誰か助けて


と、助けを求めても誰も助けてくれるはずなく

就寝の時間までクロムさんに賞賛の言葉を浴びせ続けられたのでした



※※※


疲れた…何もしていないのに疲れた…  

やっと解放された途端に速攻でベッドに突進する


やっぱり今日もふかふかー愛い奴め!

もこもこと布団に潜り込んでふかふかを堪能


ふかふかお布団に包まれてゆっくりと睡魔にとらわれた時

ふと昨日の成瀬さんの言葉を思い出す



今日もまた会えるのかな?

まさか…ね?

だって夢だもん…


そして私は眠りについた





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