金髪王子 アル視点
クロムから始祖の血を引くらしい姫君を保護したと聞いた時
半信半疑ながら確認に行った
この国にはもう完全体なる獣の姿をとる獣人はもういないはずだ
それが真の話なら、何としてでもこちらに留まって頂き
国で保護させてもらわねばならない
そしてその血統をまた王家で引き継ぐことが出来れば…
そんな打算的な思いに感づかれてしまったのか
どうやら私は怖がられてしまったようだ
確かにクロムの話は真であった
気高き獣の姿
それでいて愛らしさも兼ね備えているとは…
書物でしかみたことがないそのお姿をこの目で実際みれるなんて
神がおこしてくださった、奇跡ともいえる姿だった
出来れば王家で保護したかったところだが
ここは心を許されているであろうクロムに全て
任せることにした
姫君が健やかにこの国に居てくださることが重要だ
クロムも王家の血筋が流れている
彼が彼女をここに留めてくれれば問題はない
ただ…
どうやら私も姫君に一目で心を奪われてしまったようだ
もう一度会いたい
執務をしていても姫君の愛らしいお姿が目の前にちらついて
少しもはかどらない
俺様としたことがどうしたことか…
クロムが姫君を保護してから休暇を取っている
ずっと彼女の傍から離れる気はないのだろう
それならば…
執務室からそっと抜け出し、すぐさまクロムの館へ向かった
彼女に会いたい もう一度愛らしいそのお姿を一目見たい
怖がられているのは十分承知しているがそれでも…
果たしてクロムの館についた時には
姫君は庭で遊んでいた
どうやら精霊と戯れているようだ
愛らしい姿が遠目にもわかり、たまらなく愛しさが募る
すぐさまクロムは私に気付いたようで
これ見よがしに姫君をその腕にかかえこちらを見つめた
おい、それ俺に見せつけているのか?
俺お前の主君だぞ?
それになんだ?そのリボンは
お前の髪の色と同じじゃないか
独占欲丸出しだな
若干むっとしながらも、姫君を怖がらせないように
クロムと軽口を叩きあい、姫君のご機嫌を伺った
…だがしかし、また今回もびっくりさせてしまったようだ
俺…嫌われてるのかな?
もう苦笑するしかない状況だな
そうがっかりしながら姫君から離れると
なんと姫君自らクロムの腕の中から離れ
俺の足元まで来てくれた
愛らしいお顔でお姿で…俺を誘っている?
なんという誘惑
なんという甘美な時間
これが始祖の血を引く者の魅力かと改めて感じた
ふと目に入った銀色のリボンが忌々しく映った
姫君にはクロムの色ではなく
私の色を身に着けて欲しい
これが独占欲というものか
なるほど…ね
初めて感じる感情だった
今はまだクロムに姫君を任せるが
いずれは…
そう思った瞬間彼女の耳に囁いていた
「俺の瞳の色のリボンをプレゼントしてやるから今度来たとき着けてくれ」
きっと黄金色の彼女の毛並みには俺の青も栄えるだろう




