何故柴犬?
「可愛らしいお嬢さん、どちらからいらっしゃいましたか?」
優しい声が、上から降ってきた。
あれ?私…生きてる?
声の方に意識を向け、目を開ける。
やだ、まぶしくて、よく見えない。
「お嬢さん、起きられますか?お手伝いしても?」
再度、気遣うような優しい声。
お医者様かな?大丈夫です。
ただまぶしくて、目がうまく開けられないだけです。
そう声をだそうとした時、私の声帯からでた音は
「くぅ~ん」
だった。
え?
何?今の声私??
混乱しつつもやっとまぶしさに慣れ、開けた目に映ったのは、
銀色の髪を緩く三つ編みにしてサイドに流し、心配そうにグレイの瞳を細めて
私をのぞき込む、これまたキラキラした男の人だった。
外人のお医者様?
でもちょっとまって
お医者様にしては、服が変だ。
まず、白衣ではない。
ゆったりとしたローブというのだろうか?
そうそう、今流行りのラノベとかに出てくる異世界転生先の
逆ハー軍団の宰相様とか魔法使いさんが着ているやつ。
現在社会では、某巨大オタクのマーケットか東京の乙女なロードに行かなければ
お目にかかれない衣装。
そう、間違ってもお医者様が着てて良いものではない。
そっと目を背けた…。
背けた先には、茶色の犬の足とくるんとした同じく茶色のしっぽが見えた。
足先は靴下履いてるみたいに白くなってる。
あ、チロちゃんだ。
そう思って、手を伸ばす。
ん?
ん??
尻尾が逃げた。
チロちゃんのくせに生意気な。
また、視線の先にしっぽが見える。
手を伸ばす。
…逃げた。
これを3回程繰り返したところで、先ほどの優しい声がまた降ってきたと同時に
優しく抱き上げられた。
「お嬢さん、お元気なようで何よりです。ただ、こちらは危険です。お部屋にご案内してもよろしいですか?」
「わふぅ」
どうやら、さっきから追いかけていたものは
愛犬チロちゃんのではなく、私のしっぽだったようだ。
神様、ここはどこですか。
そして私は何故、犬に?
あれですか、最後に柴犬が食パンみたいって思ったからなのでしょうか?
誰か教えてください。




