全ては神様の気分次第ということです
「まずはどこから説明しましょうか」
ゆったりとほほ笑みながら尋ねられた。
それは勿論、ここは何処?私は何故柴犬に?
からお願い致します。
「そうですね。ここは私が管理する世界。貴女の生きていた世界とはまた違うところですよ。
私が貴女を連れてきました。あぁ貴女の居たところでは『異世界トリップ・異世界転生』とか
言われてますね。そういった方がわかりやすいでしょうか?」
生きてた?転生?私…死んじゃったの?
あの事故だもん、勿論覚悟はしていた。けど言葉に出されると
動揺してどうしても瞳が揺らいでしまう。
「いえ、亡くなっておりませんよ。私が繋ぎとめておいてますから。まぁこちらの世界に
魂が来てしまっているから、意識不明状態ですけどね。」
繋ぎとめ?どういうこと?私、戻れるの?
「あの時の貴女は大変危険な状態でした。あのままでは救助がくるまでに
恐らく亡くなっていたはずです。ただ、貴女は私と目があった。
そして神である私に食物を貢ごうとしてた。
この行為、俗にいうお供え物にあたります。だからね、別の世界でも信者には目をかけて
あげたくなるのが神様でしょう?」
…神様、なんか嘘くさいです。
そんな私の心の声に反応したのか、横にいた大精霊様(自称)がため息をつきながら口を開く。
「…本音は?」
「面白そうだからなんとなく!」
最高の笑顔で答えられた。
キラキラだよ。
今日一番のドヤ顔だよ。
神様ってなんだよ。神聖さの欠片も今の表情には見られなかったよ。
俗っぽさNO1だよ。
ぶっちゃけすぎですよ。
しんみり返せよ。
「…コホン。えー…兎に角貴女の体は向こうの世界でかろうじて生きてます。私が頑張ったから!
でも今向こうの世界には戻せません。魂が体の痛みについていけない。
ですから、暫くこちらで過ごしてくださいね。」
「頑張ったから!」のとことで、どことなく「褒めて、褒めて」って言ってるような気がした。
気のせいだろう。多分。
暫くこちらでって、戻れるの私?
転生とか言っていなかった?
「…戻れますよ。貴女が望めばね。勿論、こちらの世界を気に入ってくだされば、
そのままずっとこちらに居ても構いませんし。全ては貴女次第ですよ。」
この時一瞬仄暗くほほ笑んだ神様を私は見逃していた。
戻れるという言葉に興奮していたんだ。
戻れるんだ!
私、生きてるんだ!!
ありがとう、ありがとうございます。神様。
助けてくれて、本当にありがとうございます。
戻れると聞いて一気に瞳に涙が溢れてくる。
安堵が押し寄せ、膝から崩れるようにしゃがみ込み
うずくまって泣いてしまった。
あぁ、私戻れるんだ。
また家族や友達と会えるんだ。
嬉しくて、嬉しくて、そのまま泣きじゃくっていた。
再度、助けてくれた神様にお礼を言おうと思い顔をあげたら
いつの間にか月が隠れていて私も神様も犬と猫に戻っていた…。
「にゃぁ」
「満月の晩だけ、月の光を浴びると元の姿に戻れると言っております。
神秘ですねー不思議ですねー。
なぜこんな面倒な設定にしたのか神様に後でご自分で聞いてくださいね。
では、またお会いしましょう。」
そういうと、フッと私の目の前から消えていった。
あ、何故柴犬なのか教えて貰えてない!




