新たな出会い
家から中心街までは20キロ程あるが、訓練を積んだ空の足では10分とかからずに現地に到着できた。
だが、そこからが問題だった。
「やばい、地図家に忘れた・・・」
中心街は広すぎて、学校など見当たらない。
「走り回って探すか・・・」
そう諦めかけたときだった。
「はあ、はあ・・・私より速いなんて、一体何者よ、あんた・・・」
「結構広いな・・・」
「無視しないでもらえる!? そこのパーカー着てるあんたのこと言ってんのよ!」
言われて、初めて空は自分の事を言われているんだと気づいた。話しかけてきたのは、茶髪を1つにまとめた少女だ。
「ああ、俺?」
「あんた以外誰が居んのよ」
「いや、けっこう手ぇ抜いて走ってたから」
「 ・・・敗北感が増すからやめてくれる?」
「まあどうでも良いや。俺、今中心街の学校探してるから時間が無いの。それじゃ」
「ちょっと待ちなさいよ!」
行こうとしたところで、呼び止められた。
「あなた、入学試験受けに行くんでしょ?私も受けるから、一緒に来なさい」
どうやら楽ができるようだ。これに乗らない手は無い。
「ありがと。早めに行こう」
「こっちよ」
そうして空は、彼女に案内してもらうことになった。空ほどではないが、彼女もなかなか速い。数分と経たず学校に到着した。
「ここまでくれば大丈夫でしょ。後は自分でなんとかして。それと・・・」
「何?」
「・・・受験、頑張って。あなたなら、多分合格できる。・・・いいえ、落ちるわけがない。私より速いのに、こんなところで落ちたら承知しないわよ!」
恥ずかしそうにしながら、遠回しに自分を応援してくれた彼女のその姿を見て、空は一瞬『可愛い』と思ってしまった。
よく見ると美人だし、スタイルも申し分ない。思わず見つめてしまう。
空がじっと見つめていたからだろう。彼女が視線に気づいたようだ。
「な、何よ・・・」
まずい。なんとか誤魔化さなければ。そうだ、名前でも聞こう。
「名前聞いて無かったなと思っただけ」
「ああ、そういう事ね」
危なかった・・・一歩踏み間違えれば変態だと思われる所だった・・・
「私の名前は柚希。如月柚希よ。あなたは?」
「落合空。よろしく、如月」
「ええ、よろしく、空」
自己紹介も終わり、受付を済ませると、2人は一列に並ばせられ、そのまま順番に会場となる学校の闘技場の観客席に座らされた。
並ぶタイミングが遅かったからだろう。柚希と離れてしまった。雑談もできそうにない。
「暇だな・・・」
空がそう言うと、後ろの席から聞き慣れた声で答えが帰ってきた。
「俺が居るのに?」
振り返らなくても分かる。この声は、空の一番の親友のものだ。
「陽介! 先に来てたのか!」
「よう空。遅かったな。もうすぐに試験開始だぜ」
模擬戦闘のルールは簡単だ。審判が戦闘不能と判定するか、場外に出るか、降参するかのいずれかをすれば負け。逆に相手にさせれば勝ち。
空はわくわくしながら試験開始を待った。