表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

581/640

次の試練と思わぬ展開

 遊園地に行った次の日。朝から全員に招集がかかった。眠いのに頑張って起きた俺は、集合場所でぐったりしていた。


「いかん寝そう」


「がんばってアジュ」


 テーブルに突っ伏していると、シルフィが隣に座って飲み物をくれる。冷たいものはなんとなく目が覚めるよね。


「椅子が寝たくなるやつ……」


 椅子の座り心地がよい。つまり寝そうになる。単純に眠いぞ。


「だらしないのう」


「起きてきただけ成長しているわ」


 リリアとイロハが来た。どうやら全員の一回戦が終わったみたいだ。

 

 安心したらまた眠い。寝ても起きしてくれるだろう。


「シルフィと遊園地に行ったのね?」


 やべえ寝ている場合じゃないかも。しっぽが不機嫌そうだ。なんとか普通ですよーみたいな空気出しておこう。


「シルフィがごきげんだったから聞いたら衝撃の事実じゃよ」


「暇だったんでな。それだけさ」


「そう、シルフィと遊園地デートしたのね」


「えへへー、ごめんなさい」


「謝らんでよい。むしろよくやったのじゃ。アジュをそういう施設に引っ張り出すのは見事じゃぞ」


 まあ俺としても奇跡だと思うよ。絶対に死ぬまで縁のない場所だと思っていたし。


「それはそれとして、ちゃんと私達とも行くのよ?」


「うむ、そこは平等にじゃな」


 イロハが横に座って肩を甘噛みしてくる。痛くはないが、これはあとで遊んであげないとな。リリアも横からじっと見てくるので、おそらく我慢しているのだろう。


「…………だよなあ」


 一人だけを贔屓する気はない。しかしあと二回も行くほどアトラクションあるんだろうか。ああいう場所の楽しみ方がまだわかっていないぞ。


「はーい、じゃあみんな集まったわね。次の試合は脱出ゲームよ!!」


 はいよくわからない。学園の試験は自由すぎる。


「みんなのブロックから大きな施設をコピーしたわ。その中から脱出してもらいます! 条件を達成すると、次の施設への転送ゲートが開きます。相手チームの妨害も共闘もありよ!」


 妨害はともかく共闘? 何とだよ。この試験も不穏だな。


「負けたブロックは勝ったブロックに吸収されたわ。一回戦で勝ったチームは、負けたチームから二人選んで連れて行くこと。計五人で戦います!」


「今回もチーム戦じゃな」


「ってことは俺とシルフィが一緒か」


「やったね!」


「シルフィばっかりずるいじゃろ」


「これは不公平ね」


 二人が不満そうです。俺にはどうしようもないぜ。だって学園が決めたことだし。終わったらちゃんと相手してやろう。それで許せ。とりあえず撫でた。


「それでは各自会議の時間を与えます。それぞれのチームごとに話し合ってね」


「気をつけろよ」


「うむ、まあ問題ないじゃろ」


「会ったら協力しましょう」


「みんなで合格だ!」


 そんなわけで8ブロックチームのもとへ。シルフィ陣営もいた。


「あっくん、どうするの?」


「シルフィとカロンで」


「即答だね」


「軍師で強いやつと、純粋に一番強いやつで選んだ」


 おそらくこれが最適解だ。シルフィは絶対に入れる。次に作戦参謀をやりながら戦えるカロンだ。俺は楽できればいい。鎧使いたくない。


「理由が聞きたいな」


「脱出ということは狭い場所になるだろう。非戦闘員のルーミイと、狙撃というガン待ちが得意なアリステルは除外。ももっちはイズミで代用する。マオリは強いが、脱出ゲームらしいからな、謎解きをカロンにお願いしたい」


「あーしも同じプランだよん。イズミちゃんは確定として、もう一人どーすんの?」


「そこなんだよなあ。カムイって出せるのか? 風水で全部突破できないかな」


「カムイくんは無理だよ。どこのチームにも所属しないんだって」


 何か別の役割でもあるのだろうか。嫌な予感がするがまあいい。


「私は無理そうです。すみません」


「ルナは探偵だけどパスかなあ。あっくんとカロンちゃんがいるなら、強い人がいいと思うな!」


「となるとフランかホノリだが」


「私もパスだ。アジュのおもりはシルフィがいるだろ? 魔法剣士のフランがベストだと推薦しとくよ」


「いいわ、任せなさい。アジュくんのサポートは慣れたもの」


 こうしてチームが決まり、全員で用意された魔法陣に立つ。


「さて、今回は全チーム一斉スタートよ。どのチームと当たるかは運次第。勝ち抜ける方法は一つじゃないわ。何をもってゴールかも言わない。勇者なら自らで探してつかみ取りなさい! それじゃあスタート!!」


 そして光に包まれ、目を開けるとそこは何かの部屋だ。広くてベッドが複数ある。なーんか見覚えあるぞここ。寒さを一気に感じた。


「フラン、ここ8ブロックの病院じゃないのか?」


 振り返ると誰もいない。俺だけだ。病室に俺しかいない。


「おいおい……個別に飛ばされるのかよ」


 やばいぞ。味方に頼ることができない。窓の外は大雪だ。一応コートも着ているが、外出は自殺行為だろうな。


「どうすっかな……病院なのは間違いないだろうが……このへんにアイテムとかねえかな」


 ごそごそ漁ってみるが、なーんも入っていない。


「薬くらいあると思ったが……しゃあないか」


 少しだけ扉を開けて、外の様子を伺う。廊下には誰もいないな。明かりだけはついているので、移動に支障はないだろう。

 当然だけど出口から普通に出てもクリアじゃないはず。それでいいなら下に行くだけだが、試験はそう簡単じゃない。

 そこまで考えていたら扉の開く音がした。反射的に部屋に戻り廊下を見る。


「……イノ?」


 同じようにそーっと扉を開けているのはイノだ。間違いない。あいつもここに飛ばされたのか。


「そこの者、ゆっくりと出てきなさい。妙な真似をすれば撃ちます」


 あいつ気配とか読めるのな。しょうがないので出ていく。


「俺だ。この部屋に飛ばされた」


「アジュくん? ギルメンの皆様は?」


「いない。そっちは?」


「私もこの部屋に飛ばされたところです」


 スタート地点が同じだっただけか。こりゃ手がかりなしだな。


「俺とギルメンがいても、共闘という形だと思っていいんだな?」


「はい、箱推しですから」


 よくわからんが敵じゃないならそれでいい。どうせ強くて戦えばめんどくさいからね。完全に信用はしないが、共闘できるところまではしていこう。


「しかし困りましたね。外は吹雪。ここは病院でしょうか? 全部調べるには時間がかかりそうですわ」


「ここは8ブロックの一番でかい病院だ。作る段階から見ているし、何度か来たことがある」


「本当ですか? でしたら案内をお任せしても?」


「ああ、だがどこに行く? 外に出るのは正解じゃないだろ?」


 こいつは油断ならないというか、何を考えているのかわからない。アイドル好きっぽいが、油断できない女王様であるという認識だ。その賢さで何か閃いてくれないものかね。


「脱出するための条件を満たす必要があるのでは? どこかにヒントがあるはずです。置いてありそうな場所だけでも特定できればよいのですが……」


「だとすれば重要な場所は……院長室か手術室か、じゃなきゃ医者とかがつめている部屋?」


「いいですね。目的もなく歩くよりはいいでしょう」


 この廊下にある部屋だけでも多いからな。全部見ていたら終わらない。

 警戒しながら歩いていくと、ドンッ!! という音がした。


「あの部屋は?」


「手術室だ。各階にある」


 一階にしかない場合、患者を下まで降ろさないといけない。なので大抵は各階にあるもんじゃないかな? 全病院を知っているわけじゃないけども。

 無駄な思考を中断するように、何度も激しく扉が叩かれる。


「あの扉は両開きで鍵がかけられる。内部をしっかり殺菌する機能付き。だが勇者科が壊せないほどじゃない」


「誰かが逃げようとしているのでしょうか?」


「わからん……待てなんかおかしいぞ。叩いているやつが一人や二人じゃない」


 音がどんどん連続していく。鍵がかかっているとしても、ここまで何も考えずに叩くのは異常だ。中でなにかトラブルがあったのかもしれない。


「開けますか?」


「正直気が進まない。声も聞こえないし危険だ。雷分身」


 分身を作り出して行かせることにした。これなら被害は出ない。扉まで近づけた瞬間、弾かれるようにして人が倒れ込んだ。


「誰だ? 勇者科じゃない?」


 成人男性のように見える。後ろから出てくる人も学生じゃない。医者も患者も混ざっているような……。


「アアァァ……ウウゥ……」


「ゾンビか?」


 顔が腐っている。血に飢えたゾンビがふらふらと何匹も出てきた。

 おいこれあれこが作っただろ。似たゲームやったことあるぞ。完全に遊園地と同じノリだ。ゾンビサバイバルゲーだこれ。


「大変ですのね8ブロック」


「見たことねえよゾンビなんて。とりあえず隠れるぞ。あれだけとは思えん」


「どうやら見つかってしまったようです」


「ウアアァァ……アアァ……」


 ゾンビたちがこちらを目指して歩いてくる。足は速くないが、ここで戦闘は避けたい。まだなんのヒントも掴めていないのだ。


「爆散!」


 分身を爆裂させて隙を作り、下の階へと逃げる。


「一階に医師の詰め所がある。そこでヒントを探す。でかい施設は虱潰しでいくぞ」


「了解です。なんとしても脱出いたしましょう」


 階段を降りきって詰め所へ。慎重に扉を開けるが、どうやら誰もいない。この部屋も広いので、迅速に二人で調べよう。


「よし、ここでめぼしいものを探す。といっても、どこからどう脱出するのかさっぱりだがな」


 カルテとか見ても意味はなさそうだ。鍵を探すべきだろうか。


「薬と包帯を見つけました」


「一応持っておこう。回復魔法だけじゃ無理なケースもある」


「これはなんでしょうか?」


 壁に光る掲示板がついている。ただの壁だと思っていたが、院内のマップが表示された。


「病院にこんなもんなかったぞ」


 どうやら鍵のかかっている部屋が赤く塗られているみたいだ。点滅している部屋もあることから、鍵や人で反応する仕掛けか。オーパーツ気味だぞあれこよ。


「さっきの手術室が点滅しているのは、無理やり鍵ぶっ壊されたからかな。開いている部屋で星のマークがあるやつがイベント部屋だろう」


「何故ないものを操作できるのです?」


「気にするな。またしれこみたいなやつと殺し合いになるぞ」


「私は何も聞いておりません」


 しれこがトラウマなのかささっと距離を取られる。まあ首がぷらぷらしていたもんな。あんなの予備知識無しじゃ怖いか。


「よし、とりあえず地下の霊安室と二階の薬品研究室だ。ここで戦力分散はしたくなが、どうする?」


「どちらかに二人で行くべきかと。戦力分散は愚策です。私は土地勘もありませんわ。協力いたしましょう」


「わかった。なら一階から近い霊安室に行こうか」


 この試験、簡単に終わりそうにないな。さっさと次に行きたいぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ