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突入秘密工場

 戦闘準備を終え、5ブロックの工場地帯へとやってきた。大きな工場が立ち並び、切り開かれた岩山の中腹に鎮座している。こりゃ相当でかいぞ。区画で何を作るか決まっているらしいが、その部品を少しごまかしてはプリズムナイトを作るのだ。


「これ以上近づけば感づかれますな」


 今はかなり離れた場所から敵地を見ている。

 ここにはジョナサンさんとその兵隊が大量に。別の場所に超人が複数。そして俺達四人がいる。


「まず少数で潜入し、奥まで突っ切ります。敵が迎撃行動に移る前に確保。逃げ出す敵は外に待機している部隊が殲滅。超人は超人が。それ以上をジョークジョーカーの皆様にお願い致します」


「了解」


 各ブロックの学生は、警戒態勢のまま待機。敵が街で暴れ出すことがあれば鎮圧に向かう。現地の大人は最優先で各ブロックのアジトを潰すために動く。


「工場の服は手に入れております。これは研究員のもの。深いエリアまで行けるはずです」


 全員で白衣を着て研究員ですよーみたいな服へ。軽くメガネとかで変装もする。ちなみにこの時点で鎧を着てミラージュキーでごまかしている。


「では行きましょう。薬をばらまく悪党退治です」


 俺達四人とジョナサンさんとその部下三人で正門へ。

 内部の見取り図は頭に入れてあるが、誰にも会わずに行くのは困難だし、薬の製造方法や目的などを完全に把握したい。そして超人を逃さないため、今回は変装して潜り込むのだ。


「では失礼します」


 門番とのやり取りはすべてジョナサンさんに任せる。熟練者に任せるのが一番だ。単純に年長っぽく見えるしな。正門をくぐると無機質で広い廊下が続いていた。


「こちらです」


 現地協力者の白衣の人が案内をしてくれる。当然だがおおっぴらに麻薬工場ですなんて言えるはずもない。なので地下に別工場を作り、上で普通に職員が働いている。事情を知らない人もいるので、そこに紛れるのだ。


「ここからは薬品工場と病院も兼ねています。規模が大きいからというのが理由ですが、まあ様々な品物を仕入れやすくする方便でしょう」


「小細工を弄しますなあ」


 協力者とジョナサンさんに見張り兵の対応を任せながら、内部を視線だけ動かして観察する。


「お疲れ様です」


「お疲れ様、下の新入りだ。次から通してあげてくれ」


「はっ」


 次とか無いんだけどな。そしてある部屋に入ると、下への階段が現れる。隠し階段とは、これまた本格的だな。警戒しながら降りてみると、無機質な天井と壁が、清潔な白い通路と明るいライトに変わっていた。


「隠れ住んでいる方が明るいとはねえ」


「ここからは超人がいるはずです。お気をつけて」


「了解」


 運良く怪しまれずに地下まで来れた。目立つように超人を配置するわけにはいかなかったのかもしれない。名のある連中は教師にも知られているし、まだ全ブロックで超人を雇うのは禁止。怪しい行動は控えているのだろう。


「これはこれは、わかりやすく秘密基地だな」


 あちこちにガラス張りの怪しい実験室があり、吹き抜けテラスの下を見ると、何か液体を流している場所や、ベルトコンベアー的なものまで見えた。工場と病院が混ざっている気がする。


「ギリギリセーフに見えなくもないのう」


「そこの君達、なにをのんびり歩いている」


 同じく白衣を着た男がこっちに来る。


「新人を連れてきました。案内をしている途中です」


「新人? 多いな……誰か来るとは聞いていたが、最近は学園の捜査も厳しくなっている。本当に新人なんだろうな? 私は誰が来るかまでは聞いていないぞ」


 おいおい、どうするんだ? この質問自体が引っ掛けか合言葉かもしれないので、ここは静観するしかない。


「連絡に不備があったとでも? 杜撰な情報管理をするな。ただでさえ機密漏洩は死を意味するんだぞ。書類は通してある」


「それは失礼した」


 ジョナサンさんが強気で押し通した。貫禄のようなものが出ているからか、すんなり納得してくれたようだ。


「どの部署に配属になる?」


「B5とA3に欠員が出ただろう。補充だよ」


「確かに減ったな。ではよき今日を」


 そして男は去っていった。どうやらピンチは凌いだらしい。やはり年季の差というやつだろう。豪胆だ。いざという時に度胸がある。


「セーフ……か?」


「過信はせず、とにかく奥を目指しましょう」


「了解。とにかく下に行くんですね? 戦闘になったらどうすれば?」


「上の工場以外は、全員薬の関係者です。抵抗するなら殺して構いません」


 皆殺しで終われるのは最終手段だが、選択肢には欲しい。できれば資料と最高責任者を確保したいが、下っ端が重要な情報など知らされているはずがない。戦闘手段は増やそう。


「しかし広いのう。いつの間に作ったんじゃこれ」


 強化ガラス張りの部屋では、よくわからない花だかツルだかをまとった人間や、プリズムナイトの発生する像が作られている。ここが工場で間違いないようだ。


「この工場は試験前から存在しているものですが、まさか地下に潜んでいるとは……おっと、ここですな」


 その通路に一個だけあるでかい扉。その先に責任者がいるのだろう。一応まだ研究員の服装なので、堂々とインターホンを押す。


「新人を連れてきました」


「よかろう、入りたまえ」


 いかつい男の声がした。扉を開けて中に入ると、広い広い部屋の奥で、白髪でオールバックの男がこちらへ振り返った。メガネと軍服のような装備だ。腰にはサーベルがある。


「そちらが新人か?」


「はい、これで研究も捗ります」


「残念だが、それは不可能だろう」


 壁に隙間ができ、男はパネルを操作してボタンを押す。


「選択肢は二つしかない。君達を殺すか実験材料にする。もしくはこの基地ごと消し飛ぶかだ」


『セーフティー解除。これより大規模対策モードへ移行します』


 よくわからん危険なアナウンス来ましたよこれ。絶対面倒なことになるやん。気を取られていたら、部屋の中央に大きな球根が現れる。中からは植物を筋繊維のようにして鉱物と人間を組み合わせた化け物が目を覚ます。


「全域にこれとプリズムナイトが散布される。君達はここで死ぬのだ」


「あんたも死ぬぞ」


「死なんよ。私に死は存在しない。プリズムナイトがどう作られているか知っているのか? これは天国と星の力なんだよ」


「危ない!!」


 シルフィの声に振り返ると、ジョナサンさんとイロハが敵の刃を防いで鍔迫り合いとなっていた。


「オラア死ねやあ! キヒャヒャヒャヒャ!」


「キヒヒッヒ! 消えろ消えろ!!」


 さらに数が増えるも、兵士とギルメンが止める。どいつも凶悪な目をしていやがる。まともじゃないな。


「ぐぬう……超人か!」


「表舞台に馴染めなかった指名手配の超人と達人崩れだよ。強くなれると言ったら実験に協力してくれた。凶暴にはなったが、自我は消えていない。まあ成功の部類だろう」


 中央の化け物が目を開けたまま動かない。生物というよりゾンビ映画のボスだ。3メートルを超える不気味なキメラは、グロさと不気味さを併せ持っていた。


「名前がなくては不便だろう? プランターと名付けた」


 下からガラス板がせり上がり、所長と俺達を隔離する。同時に室内に粉が撒かれ始めた。


「これまさか……」


「プリズムナイトじゃ!」


「では楽しんでくれたまえ」


 所長は奥の隠し通路へと去っていく。どうやら上に登る装置らしい。


「逃がすと思っているのか!」


 魔力のビームで頭と喉を貫いてやる。ゆっくりと倒れていく所長だが、こちらを見て笑っていた。


「所長などいない。故に不死だ」


 そう言って燃え尽きていった。何だあの余裕の笑みは。俺の思考を中断するように、殺気がこちらに向けられた。


「てめえも死ねやあ!!」


 狂った達人がこちらに剣を振りかぶっている。


「邪魔だぁ!!」


 近くのザコ超人もまとめて殴り飛ばして壁に穴を開け、廊下との通気性を上げる。


「なんとすさまじい武勇!!」


「廊下に出るぞ!!」


 こいつらに粉を吸わせてはいけない。急いで外に出ると、こちらにふらふらと歩いてくる、あの船や山で見た狂人の群れがいた。


「全員無事だな!!」


「わしらは毒だろうが耐性がある。心配無用じゃ」


「しかし超人でも狂うのならば、ここから離れるべきでしょう」


「みんなに薬が染み込む時間を遅らせるから、ここから逃げよう!」


「部屋の資料は全部回収したのじゃ。撤収!!」


 敵は化け物じみたやつから白衣を着たやつまで多彩だ。道中で見かけたやつもいる。まさか全域にばら撒いて逃げたのかよ、クソ野郎が。


「影の兵よ! 駆逐しなさい!」


 片方の敵陣をイロハの影の兵が相手して、逆を全員で相手しながら上を目指すしかないだろう。


「ヒヒヒ……アアァァァ……」


 倒れた超人もどきに、木の枝か触手のようなものが刺さっている。あるものはミイラのように干からび、あるものは筋肉が倍増して復活する。その先には動こうとしないプランターがいた。


「生命エネルギーそのものを吸収・譲渡できるようじゃな」


「プランターってそういうこと? どうするのアジュ」


 放置して逃げるには危険だ。だがここにとどまれば、薬で狂う危険は増す。さてどうするべきかね。

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