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ベッド上の戦い

 部屋に来たけどさてどうする俺。

 女に自分から話しかけられる話題など無い。もうぶっちゃけよう。


「みんなもう気付いているだろう。アジュさんは女の子と話せる技術はありません」


 隠しても仕方がない。いいじゃんぶっちゃけトークで。


「知っているわ」


「いまさらだねー」


「それ前提の場じゃろ」


 俺のことを正しく理解しているな。バカにされているわけではないだろう。


「というわけで話題がいるわ」


「それを考えてるんだけど思いつかないんだよな。飯食ってる時にだいたい話しちまうだろ」


「ふっふっふー。わたしは思い出したよ。コイバナを諦めないと!」


「…………そういや言ってたような気がする。ってか今思い出したなおい」


 あれはお泊り会っぽい流れになった時か。


「具体的にどうするのじゃ?」


「そうだね。それじゃ、定番の好きな人暴露大会だ!!」


「暴露するもんでもないだろそんなの」


「するまでもなく知っているわよね?」


「なんのことかさっぱりだ」


 こんな誘導尋問には引っかからない。

 俺のことだと言い出すのはナルシストっぽくてキモイし。


「ならアジュの好きな人からどうぞ!」


「んなもんいるわけないだろ」


「即答は悲しくなるからやめてちょうだい」


「まだ好感度が足りんようじゃな」


「ふっ……俺がここでヘタレずに好意を表に出せると思ったら大間違いだぜ!」


「なぜ偉そうなのかしら? 開き直るにしてもそれなりの態度というものがあるわよね?」


 イロハが俺のほっぺたをつまんでむにむに引っ張ってくる。

 加減しているのか痛みはないけど責めるような目つきだ。

 しっぽがベッドをぺしぺし叩いているのは、イライラしている時に出るしぐさの一つだ。


「そうだそうだー。開き直るのは絶対じゃないけど多用しちゃダメです! はい決まり!」


 シルフィが寝転がってだらだらし始めている。

 抱いているのが俺の枕っぽいことは言わないでおこう。


「んーどうすればアジュは素直になるのかな?」


「部屋に呼ぶくらいはできるのじゃ。このままゆっくり言動も直していけばよい」


「せっかく部屋にいるのだから、部屋でできることで改善していきましょう」


「部屋でできることってなんだ?」


 なんか遊び道具あったっけな。


「それじゃあ膝枕だ! 膝枕を推奨します!」


「推奨されてもなあ……俺はする方なのかされる方なのか」


「両方よ。両方こなせばいいの」


「ええぇ……」


「部屋でくらい羞恥心は捨てるのじゃ」


「これでダメならなりふり構わないわ。全裸で添い寝までレベルをあげるわよ」


「なにそれこわい」


 やりかねんのが怖い。もう脱ぎ始めてるし。


「分かったから脱ぐな!」


「部屋では羞恥心は捨てるべきよ」


「それは俺の話だろ!」


「わたしだって恥ずかしいよ!」


「だったら脱ごうとするな!」


 勢いに任せて脱ごうとするシルフィをなんとか止める。

 脱いだ後に膝枕は絶対に無理。服は着るものです。


「ふむ、もう少し肉があっても良いのう。筋肉はゴツゴツしそうで微妙じゃが」


「もう寝てる!? リリアずるい!!」


 シルフィをなだめて座り込んだところを狙われて、リリアに膝枕している。

 すばしっこいなお前。


「にゅふふー悪い気はせんのう。頭をなでたりするとわしが喜ぶのじゃ」


「うっさいわ。撫でるってどうするんだよ? こうか?」


 仰向けのリリアの頭をぽんぽんしてみる。撫でるには膝枕って向かない気がする。


「うーわーなんだかんだ受け入れてますよイロハさん」


「これは私達もやってもらえるという流れがきてますよシルフィさん」


 横で見てる二人がうるさい。結構緊張するんだからなこれ。


「少しは慣れたかの?」


「俺が女慣れすることなんかなさそうだぞ」


「こっちに慣れたかと聞いとるんじゃ」


「ん、そうだな。少なくとも楽しいよ。ありがとうな。おかげでこんないい居場所ができたよ」


 リリアのおかげで俺の人生は変わった。

 この世界にきてから充実しているよ。感謝している。


「それはよかった。まだまだこんなものではないから心して楽しむのじゃ」


「そんときゃお前も一緒だな。ちゃんと案内してくれないと困るぞ」


「任せるのじゃ。まずは学園の……」


「はいそこまでー!!」


「うおぉ!? なんだよでかい声出すなよ」


 突然シルフィに乱入された。背中に抱きつかれ、イロハがリリアを引っぺがす。

 リリアから強引に引き離された。


「今完全に二人の世界でした!! 今のずるい!!」


「油断したわ。やるわねリリア」


「まあお手本はこんなもんじゃろ。なら次はシルフィがやればよい」


「とりあえずいつまでも抱きついているんじゃない」


 背中に抱きつくのはやめろ。お前は胸がでかいんだから。


「むうー。なんかごまかされてる気がするー」


 そう言いながらも俺の膝に来るシルフィ。髪は解いているためサラサラロング状態だ。

 ポニーで膝枕って難しいだろうしな。風呂はいた後はずっと解いている。


「おおーこれが……ほほう……これはいいね!」


「はしゃぐな。じっとしててくれ」


「して欲しいなら撫でるべき。シルフィちゃんを撫でるべき」


「撫でる流れできてるのかよ」


「当然全員やるべきよ」


「平等に愛するべきじゃな」


 リリアは初めからこの流れを作るために、強引に寝たり撫でられたりしたのかもしれない。意外とそういうとこ計算して動いている気がするんだよな。膝枕したかったのも本当だろうけど。


「はいはい撫でますよーっと」


「愛がこもってない! もっとこう優しくシルフィちゃんへのラブを込める感じでお願いします!」


「俺に愛などない。愛など知らぬ」


「無ければ作るんだよ。これから作っていけばいいよ」


「一番縁遠いぞ愛とか」


「だいじょーぶ。アジュはあったかいよ。わたしはちゃんとわかってる」


 んなこと言われてもなあ。俺はどうすればいいかわからないんだよ。

 シルフィの期待に応えることができるほどの男じゃない。


「はいまたネガティブになってる!」


「わかるのか?」


「わかるよ。わたし達がどれだけアジュを見てると思ってるのさ」


「はいはい俺が悪かったよ」


 起き上がるシルフィ。心なしか満足そうだ。


「ん、満足した。これからもよろしくね。わたしの力でアジュを楽しくするよ!」


「よろしくな。別に力がなくても楽しいから心配すんな」


「そっか、ありがと」


「それじゃ、最後は私ね」


 これでイロハが終われば寝ればいい。寝ちまえば朝だ。精神的に疲れる。


「最初に言っておく。仰向けに寝ろ」


「なぜうつ伏せに寝て匂いを嗅ごうとしていることがバレたのかしら?」


「行動パターンがわかり易すぎるんだよお前は」


「まあお約束じゃな」


「いつものイロハだね」


 もういつもので通じるくらいにはわかる。

 こいつの変態行動は慣れた。ちゃんと仰向けに寝かせる。


「行動が予測できるほど親しくなっているのね」


「お前の行動は予測できても意味がわからん。通じあってなどいない」


「それでも本気で拒まないじゃない。今だって言わなくても撫でてくれているでしょう」


「お前だけ撫でないのも違うだろ。大人しくしてれば手荒なことはしない」


 イロハはケモミミだから撫で方が他と微妙に違う。ちょっと耳ふにふにしてみたりする。


「やっぱりそういう行動はイヤ? どうしてもと言うならやめるわ」


「程々にしろ。外ではちょっと控えてくれ。それだけだ」


「それだけ?」


「お前のさじ加減に任せる。精々ギリギリを見極めるがいいさ」


 変に規制してストレス貯めるのも良くない。こう言っておけばちょっとは自重するだろう。


「ふふっ意地悪ね」


「俺が女に優しくできるはずがない」


「そう、それでもいいわ。その分私が優しくしてあげる。貴方が優しくしたくなるように。貴方が優しくしてくれたように」


「好きにしろ。別に嫌じゃない」


「そう、ありがとう。辛かったら一人で抱え込まなくていいわ。私は貴方の影。辛い時も楽しい時も、貴方のそばにいるわ」


「そら楽できそうでいいやな。はいおしまい。全員やったろ。俺は寝るぞ」


「えーまだアジュに膝枕してないよ?」


「無茶言わんでくれ。もう夜遅いし眠い」


 あと自分から行くのは恥ずかしいので寝てしまいたい。


「ま、この辺で妥協しておくべきじゃな」


「そうね。今日は満足したわ」


「そだね。じゃあもう寝よっか」


 もそもそ掛け布団に入り込む三人。


「普通に寝ようとしてるけど俺の部屋だからな? おかしいよな?」


「大丈夫! ちゃんとアジュからちょっと離れてるから」


「これなら恥ずかしさも薄まるじゃろ?」


「安心しなさい。本当に眠いから何もせず寝るわ」


「そういう問題じゃないんだよ。俺もマジで眠いから余計な突っ込みさせんでくれ」


 もういいや疲れた寝ちまおう。みんなちゃんと俺から離れている。

 手を伸ばしても届くかどうかギリだ。大きなベッドはこういうこともできるんだな。


「マジで寝るからなにもしないでくれ」


「心配しなくていいわ」


「今したら絶対、好感度減るからのう」


「そうそう、本気で嫌なことはしないよー」


「そうかい。んじゃおやすみ」


 さっさと目を閉じてしまおう。明日はなにをするかな。

 こいつらといれば明日も楽しく過ごせそうだ。


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