5・隣には彼がいる
「兄さん…」
「なぜアプリアの兄がここに?」
「俺は…どうしてもコイツを殺さなければ気がすまない」
次の瞬間、兄から衝撃の真実を聞かされる。
「この王子はな、フルーテアを滅ぼした張本人だ」
「ピエール王子が…ヤサヌイがフルーテアを!?」
「そうだ」
発端はピエール王子がフルーテアから取り寄せた果物を気に入らないと言い出したことだったという。
フルーテアを滅ぼせと癇癪をおこした王子の言葉を普段から王子を可愛がり甘やかす王が真に受けて実行にうつした。
「同盟国だと思っていたのに…」
アプリアは信じていた隣国に裏切られ、ショックを受ける。
「どうする?」
「…今さらどうしようもない」
なんの力もない村娘となったアプリアに今出来ることなどたかがしれている。
沢山の民を苦しめたことを報復するつもりは毛頭かった。
「うわあああ!わるかったまさか本気で国を滅ぼすなんて思わなかったんだ!!」
「今さらあやまっても遅い」
「待って兄さん」
「なぜ止めるんだ」
パーチュは信じられないと言いたげだが剣を下ろした。
「いま出来ることは…したいことはレスタを助けることだけ」
「アプリア…」
「ピエール王子、彼を殺そうとするのは止めてください」
アプリアは相手が断れない条件の取引を持ちかけた。
「わかった!だから命だけは…!」
「兄さんはどう?このまま王子を殺してフルーテアを二度と復興出来なくする?」
「それでは…」
「私たちでフルーテアを建国すればいいじゃない?」
それから3年の月日が流れ、アプリアの言った通り、フルーテアは再び国として甦る。
「アプリディア女王陛下!万歳!」
それからアプリアは女王となっていた。
その隣にはレスタがいる。
「君には沢山夫候補がいたのに、どうして僕なんだ?」
「えっと…今までティーコレット国の村から出たことなかったから知らない相手はちょっと…まわりは大人だらけだったし?」
本音を言えばいつの間にかレスタを好きになっていたからだ。
照れくささからアプリアは結婚の理由を必死にごまかそうとしているがレスタは怪しみながらもそれ以上追求はしない。
「はあ…兄さん、どうしてパレッティナに行っちゃったんだろう…?」
本来兄が王となるべきだったのでは、そう思えてならない。
「即位式の後にいなくなっていたね…」
「アロルまでどこかにいっちゃうし…ああ!そういえばあの時はアロルが貴方を城に連れていこうとしてたけど、どういうこと?」
「ああ、知り合いではないが僕が意識を失う前に偶然通りかかった彼が君の家の前に運んでくれたんだ」
レスタが家の前にいたことは、あまりに不自然だったが、アロルがわざと連れてきたと考えれば納得がつく。
「あの日君が僕を引き留めてくれなかったら、いまここにいないかもしれないな」
「どうして?」
「あのままアロルと城に向かおうとしていれば遅かれ早かれ兵に見つかっいただろう?」
「まあ…そうよね?」
「だから感謝しているんだ」
「どういたしまして…?」
「僕からも聞いていいか?」
「なに?」
「結婚したのは近くにいた手頃な男が僕だったからじゃないのか?といつも不安なんだ…どうしたらいい?」
「いつの間にか…好きになったから…結婚したの、他の人じゃなくてレスタがよかったから…」
自分がだまっていたからレスタを不安にさせていたのかと、堪えきれずアプリアは本当のことを話す。
「よかった…僕も君が好きだから嬉しいよ」
レスタが微笑むとアプリアも笑い返した。