4・暗殺者
兵士が扉を開ける手前で止まった。
「兵が去ったのか」
ほっと息を吐くレスタ。
「いや…そう安心できるわけでもないな…」
「え?」
アロルが深刻な顔でいるためアプリアは不安になった。
「この兵は本物の王子が偽物の王子をわざと知らしめようとしてやったと考えろ」
「だって影武者なんでしょ?影武者って本物の王子が暗殺されないようにする…」
アプリアはハッとした。
偽物の王子が暗殺されて、特をするのは王子だ。
容姿に関する妬み、王子が死んだと噂が広まれば暗殺を企む者もいなくなる。
「まああんなバカそうな王子を暗殺しても仕方ないが」
どうやらアロルは実物の王子を見てきたようだ。
「なら覚悟は出来ている」
「どうして?殺されてしまいますよ!」
「僕は君に嘘をついた…僕を狙った暗殺者はいなかった」
「え…でも怪我してるじゃないですか」
レスタの怪我は右腕にあった。
自分でやったなら自然と使えなくなってもマシな左腕にするはずだ。
「王子がやったんだろう」
アロルは確信をもっていう。
「そうだ…ピエール王子にやられた」
苦虫を噛むような表情をし、目をふせる。
「孤児だった自分が陛下に救われ、城で暖かい部屋を与えられて、今まで王子と呼ばれて…」
「…レスタさん、気が済むまで家にいてください」
「同情は必要ない君にこれ以上迷惑はかけられない」
彼はもはや自暴自棄、といった感じだ。
「だから僕が死んでもなんの心配もない僕は王子でもなくただの平民だ…ほんの少しの間、君に会えて易しい夢を見られてよかった」
「迷惑なんて勝手に決めないで貴方が王子じゃないとしても関係ない、心配はするから!!」
「あ…ありがとう」
アプリアの無言の威圧に目をそらす。
「アロル…ヤサヌイに乗り込んで一発王子に決めたいんだけど」
「…元王女とは思えませんね」
やれやれといいつつ歩き出す。
「今さらだけどその格好ダサいですね」
「ああ、服のことは僕も思っていた…王子の趣味だから仕方なく着ていたが」
「もう互いに身分も関係なくなったことだ、普通に話してくれないかな」
「わかった」
レスタに微笑んだアプリアを見てアロルはもう自分が守る必要はないと安堵した。
「王子だわ!」
「きゃー素敵!」
「まったく疑われずに簡単に入れたわ」
「楽に入れてよかったじゃないですか」
レスタがメイドの気を引いている隙に二人はそそくさと新入した。
「ここ?」
扉を少し開けて隙間から部屋を覗くと本物の王子と別の人物を見つける。
男は細く鋭い剣で今にも王子を刺し殺そうとしていた。
「だめ!」
アプリアが部屋に乗り込む。
「誰だきさまら!!早く僕を助けろ!!」
「…アプリア」
剣を手にしていたのはアプリアの兄、パーチュであった。