1・王子様?拾いました
王国の戦に巻き込まれ、十歳で両親を失った一人の少女は、唯一生存の確率が高い
生き別れの兄を探しているが、一行に手掛かりは掴めずにいた。
それから三年が過ぎ―――――
少女はとある田舎町で独り暮らしを始め
両親の死を乗り越え、村で働けるまでに成長した。
そんなある日、いつものように仕事を終えた彼女が帰宅して家の扉を開けようとしたときのことだ。
おかしい――――土ではない感触がする。
扉を開けるのを踏みとどまって足元を見る。
なんということだろう!見知らぬ誰かを踏んでいたのである!
なぜ家の前で青年が生き倒れているんだろう。と不思議に思う少女
放置するのも忍びないので、一先ず家の中に入れる
――
頭にはクラウン、肩には赤いマント、モコモコしたズボンを履いた
一言でいうとカボチャパンツの男――――は、
やっと意識が戻ったのか、起き上がって家の中をきょろきょろ見ている。
よく見ると彼はとても綺麗な顔をしていて
月のように輝く金髪、海のように青い瞳それは正しく――――
察した少女は指を差しながらわなわなと震える。
「金髪に蒼い目って…王ムガっ」
謎の男は悲鳴を上げようとした少女の口を塞ぐ。
「落ち着いてください」
少女が冷静になってから口を覆っていた手をはなす。
少女が説明を求めているので謎の男は暫く考えてから
なぜ家の前で倒れていたのか説明した。
「はあ…つまり“こっそり城を抜け出して散歩してたら暗殺者に襲われてたまたま通りかかった村がここでわたしの家で気を失った…と?」「解説ありがとう」
話が早くて助かると言い、にっこり笑う
「どこの王子様だよ…とか色々ツッコミどころはあるんですけど、一言だけいいですか?」「どうぞ」
「失礼ですが、馬鹿じゃないですか?」
了承を得て遠慮なく言い放った。
「ああ本当に…馬鹿だと思っているよ…城を抜け出して自ら命を狙われにいく真似をして…」
謎の男もとい王子らしき男は苦笑いするしかなかった。
「そうじゃありません!」
それはどういう事だと訝しむ王子風の男
「突然家族が消えたらご両親とお城の人だって心配するって意味です」
少女の兄は放浪癖がありあの忌まわしい戦の前日には家を発っていた。
だから兄は生きているだろうと思っている。
そんな兄と彼が少女には少しだけ重なって見えるので彼とその身近にいる人々は他人事には思えない。
「大丈夫、僕が消えても悲しまないよ」
――――蒼い瞳が揺れる。