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放課後課外活動 side雪華

到着!!視聴覚室ッ!!」

今、私と夜風は校舎別棟視聴覚室前に来ている。

「何叫んでんだ」

「何か急に叫びたい衝動にかられた」

……早く中に入ろう。こんな所で佇んでいても始まらない。

「それより、早く入ろ」

「ああ」

答えると同時に夜風がノブに手をかけてゆっくりと扉を開ける。どうやら鍵はかかっていないらしく、やはり私たちは遅れてきたようだ。

「お前ら遅い」

夜風が扉を開けきると正面からの声が来た。それは馴染みのある“私たち” 幼馴染みの一人。

「ごめん。着替えるのに時間がかかって」

「着替え?」

「レン、そこは気にしなくていいぞ」

新庄(しんじょう)蓮斗(れんと)。夜風からは「レン」と呼ばれている。

今は、私の正面にある四人用サークルテーブルに一人ついている。あれ!?……一人?

「蓮斗………輪廻( りんね)は?」

「あー。…そのうち来る」

「そう……」

ちなみに輪廻というのは“私たち”幼馴染みの一人。そして、私、夜風、蓮斗は高校二年生だが輪廻は一年生、つまり後輩でもある。

(まだ、来てないのか…。まぁ、でも……)

「姫!!」

――わっ!!

「な、何!?」

突然、夜風に名を呼ばれ、驚いてしまった。

「突っ立ってないで座ろうぜ」

「あ、うん…」

私と夜風は教室の角に鞄を置いてから自分の席へついた。ちなみに私の右に夜風、左に蓮斗が座っている。残る私の正面が輪廻の席だ。しかし、気にするなと言われても気してしまう……。輪廻、早く来て。

「姫、どうした?」

「えっ!?な、何が?」

「さっきからずっとーー」


「大丈夫!!」


「!?……」

「本当に大丈夫だから」

「それなら良いけど…」

「…………」


「お待たせ~!!」


「輪廻!?」

突然来た声の方向に顔を向けると彼女、西園寺(さいおんじ)輪廻が立っていた。右手に、パンやペットボトルが入った少し大きめビニール袋を持っている。おそらく購買にでも行っていたのだろう。

「どしたの?姫先輩」

「……その呼び方は止めて」

「わかってるよ。夜風は特別だもんね」

「そそ、そんなんじゃ無いよ!!」

「素直じゃないなぁ」

「………それより、その袋は?」

聞くと、輪廻は質問に答えないまま、右手のビニール袋からペットボトルを一本取り出して、こちらへ差し出してきた。

「はい、雪華の」

それから、同じように夜風にもペットボトルが差し出される。夜風が受け取ると、輪廻は私の正面の席に腰かけた。

「あれ……!?」

突然、蓮斗が疑問だらけの表情で声を出した。

「どうしたんですか?蓮斗先輩」

「……っ!?」

さらに疑問だらけの表情になってーー

「俺の分………?」

「無いよ」

聞いた蓮斗を輪廻が一言返しーー

「な、何で先輩呼び……なんだ?」

「……………」

「なぁ……輪廻?」

「……………。雪華、夜風。ちょっとボクの話聞いてくれない?雪華が聞いたことの答えでもあるんだ」

輪廻が蓮斗に対して無視をした。そして彼女の話へと変わる。蓮斗は諦めたようで、何処か遠くを見ているみたいだ。ちょっと可哀想……かも

まぁいいや。輪廻の話を聞こう。



「それは、蓮斗が悪い」

「蓮斗くぅん?最低だわ。何させてんだよ」

「お前ら……無視と先輩呼びで突き放された俺に……さらに追い打ちを……」

「自分の罪を認めて下さい。先輩」

蓮斗の犯した罪。それは、輪廻を一人で行かせたことだ。「その程度!?」と思うかも知れないが、これは重罪だ。袋を見た時点で気付くべきだった。蓮斗が可哀想だなんて思えない。

「先輩は、ボクを……」

この学校の購買へ至るには、『反物理法則学科』授業専用特別棟に移る必要があることだ。

『反物理法則学科』とは、日本では此処だけ、世界でも数十校のみしか取り入れていない特殊学科で、表向きな設立目的は『反物理法則』、つまり個人の『特殊能力』による世界への貢献を実現させるため。だが実際には、『第三の巫女』に対抗する能力者を養成することが目的だ。これは一般の人間には開示されてはいない情報だが、私達はある人から教えてもらったことがあるので知っている。まぁどちらにしろ、少し考えればわかることなのだが。

「怖かった……です。」

輪廻を怖がらせた蓮斗には罰を与えようか。今すぐに反省させられる罰を。

「リン。今すぐにレンを反省させてやる」

夜風も同じ考えのようで

「夜風。………何する気だ?」

夜風は気付いたようだ。蓮斗には少し悪いと……思えない。

「姫、始めていいぞ」

「だから、何を!?………雪華ちゃん?何してるの?」

「電話です。………出ないな………」

何かしているのだろうか?仕方がない。家の方にかけるか。

「どこかけてるの?」

電話番号を出している途中に蓮斗が尋ねてきた。まだ、わからないのか。ならば、会話を聞こえるようにしておいてあげよう。

「……あっ!私です。雪華です。」

電話が繋がった。

『雪華お嬢様、どのような御用件でしょうか』

「まさか……」

気付いてきたようなので言ってあげよう

「栞に繋いでもらえますか?」

『少々、御待ち下さいませ。』

「ありがとう。咲愛優さん」

『いえいえ、仕事ですので』

一旦通話が終了する。

「それだけは止めて……お願いします。」

「イヤです」

「蓮斗先輩が悪いんですよ」

「止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて止めて」

『もしもし、お姉ちゃん。何の用?』

「栞様……」

蓮斗が呟いた。

『?……何か言った?』

「言ってないよ。それよりも話があるんだ」

『何の話?』

「新庄蓮斗の犯した罪について」

『……すごく、興味がありますね』

「えっと、まずは―――」

―――――――

私は話した。蓮斗が犯した罪について、全てを。

『最低ですね』

「終わった……」

『あれ?……蓮斗さん、いるんですか?声が聞こえたような』

「いるよ。でも会話は無理そう」

蓮斗は机に突っ伏している。

『そっか、残念です』

「御免ね」

『いえ。……蓮斗さん、あの日と全然違いますね』

「なんか人として駄目になったよね。じゃあ、また」

『元気でね、お姉ちゃん』

私が通話を切ろうとした時……

『お嬢様』

「咲愛優さん?」

突然、咲愛優さんが私を呼んだ。

『一ヶ月後には、そちらへ』

「わかりました。」

そして、通話が終了する。

同時に皆が、さっきまで気を失っていた蓮斗でさえも気を引き締め、真剣な表情になる。

「一ヶ月後、つまり8月が“アレ”の始まりだ。」

夜風が話し出し、私達がそれに続く。

私がーー

「やっと、この時が来たんだね」

蓮斗がーー

「正直俺は、どうでもいいんだけどな。ただ……」

輪廻がーー

「蓮斗は、命を賭してでも守り抜くんでしょ。ボクらが巻き込んでしまったばっかりにさ……」

輪廻の言葉を機に、空気が重くなる。蓮斗は、私たちが巻き込んで……違う。私たちが巻き込んでしまったのは、もっと多くの人達で。

「悪いなレン」

それからしばらく会話は途切れ、更に空気が重くなっていく。

「巻き込まれたんじゃない、俺の意志だ。最初から、別の道も用意されてたしな」

突然の言葉に心が軽くなる。蓮斗は私たちを責めない。その事実が、暗く沈んだ心を癒してくれていた。

「ありがとう。レン」

そんなに駄目になってないのかもしれない。

「礼されるようなことは、やってないぜ。それより本題に戻ろう」

皆の表情が変わる。

「あと一ヶ月は、どう過ごすの、夜風?」

「今まで通り普通に過ごす。準備が出来るようなことじゃないからな」

「わかった」

「計画の始まりはもうすぐだ。間違っ―――」


「お前ら、部室で物騒なこと話してんじゃねぇよ」


突然。夜風の声をかき消し、“私達”の会話に横槍が入った。

「ボクらは部活の話し合いをしてただけですよ。流河先生」

輪廻が真っ先に声の主、流河(るかわ) (しずく)へ悪戯っ子のような笑みをしながら言う。

流河雫、“私達”が通っている国立天霊(てんれい)高校の教師で、この活動におては、顧問扱いの23歳独身自称彼女持ち。

「そもそも、部活じゃないだろうが」

「そうだけど……」

「とりあえずお前ら、今日は帰れ」

「どうしてですか?」

流河先生が急に帰宅を命じる。二年間通しても、そんな言葉は今日が初めてだ。

「来てるんだよ、あの二人が」

流河先生ではなく、輪廻が答える。そして、その言葉には心当たりがある。

「リン。それは………」

「皆の考えてる通りだよ」

成程。確かに帰る方が良さそうだ。

「帰るか」

夜風も同じ考えのようだ。まぁ、皆がそうなのだろうけどーー

「輪廻、話があるんだ。二人だけの話が」

私はまだ帰る訳にはいかない。

「ボクに?」

「うん。大切な話」

話を終わらせるまで、帰るわけにはいかない。

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