神と巫女 side夜風
『未来』
その噂は瞬く間に世界へ広まった。
始まりは、28年前。自らを『預言者』と名乗る者が世界の未来をネットに書き込んだ事からだ。
そのころは、そんなことを信じる者など世界には数えるほどしかいなかった。
始まりから2年程は「預言者(笑)」「妄想乙」などと笑いの種として扱われていた。
しかし、その未来は実現した。後に世界各国で起きた出来事は『預言者』によって書き込まれた未来と何一つ変わらなかったのだ。
いつしか人々は『神』と、その者を崇めるようになった。
そして現在、預言は残り一つを残し全て実現した。
――――最後の一つ。
それは………
“『第三の巫女』により世界に暗黒がもたらされる”
『第三の巫女』
その存在は、始まりから20年後実現した『二つの預言』により生まれた。
一つ目は
“『第三の巫女』の誕生”
二つ目は
“巫女の誕生による世界の物理的法則の歪み”
早い話が『災厄の誕生』と『抗う力の発現』だ。
まぁオレは、世界の未来なんてどうでもいい。そんなもの、いつかは滅びるモノなのだから。
だが、一つだけ気に食わない。それは、『預言者』だ。
確かに預言は現実に起こっている。
それでも…未来が決まっていると思うのは嫌だ。
大体、何者か分からない奴を何故『神』と崇める?
『預言者』本人が『第三の巫女』かもしれないし、そうでなくとも関係が無いとは言い切れない。
一番怪しいのは『預言者』じゃないのか?只の人間が後に起こる出来事を知ることは不可能。
ならば『預言者』が引き起こしているとも考えられるのではないか?
……と、そう考える自分自身が、『預言者』と『巫女』の存在を否定できない自分自身が、どんな形であろうとも『預言』通りに世界が動いている事実を、普通じゃない世界を受け入れてしまっているのは、どうなんだろうか?
こんな世界では、仕方のない事なのだろうか?