おはよう
あまりの激痛で目が覚めた。
目の前で竜崎さんが覗きこむように俺の顔を覗きこんでいる。
体には姫華ちゃんが乗っており、両腕を抑えている。
「お?起きたか?今から縫うから暴れるなよ?」
「お願いします暴れないでくださいね!!!」
状況が把握出来ず竜崎さんが、釣り針のような物を顔に近づける。
竜崎さんが頭に手を置き動けないように固定する。
「んなぁぁぁあああああああああああ!!!!!!」
右頬から侵入してはいけない所まで針を突き刺す。
ピアスを刺すような一瞬の痛みではなく、ゆっくり針を突き刺す感触だ。
痛みは鈍い痛みではなく刺すような痛みだ。
まぁ実際刺されているんだが...
一針目で絶望を感じ、藻掻きそうになるのを抑えようとするが、自生が全く効かない。
「ニート!!男だろ!!我慢しろ!!」
「ニートさん!!頑張ってください!!」
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!」
生まれた中でこう痛いのも初めてだ。
バイクで鎖骨を折った時も相当痛かったしスーパーのカートに足の爪を巻き込まれた時も痛かった。
だが、此の痛み...なにより顔面に針を刺すという行為は、形容しがたい痛みだ。
しかしまだ一針目...
熱い感触が頬から縦におでこの近くまで入っている。
ブツっという感触と共に意識が飛んだ。
「あああああああああ.......」
そしてまた暗闇に包まれた。
「あ、気絶した。」
「ったく...もっと寝ておけばいい物を...」
ビクン!!
体が一瞬震え目をさます。
辺りを見回すと竜崎さんが椅子に座りながらタバコを吸っていた。
「おはよう....ございます?」
「おうニート!!お前記憶は有るか?」
「ヘリで墜落したのは覚えています...此処は地獄ですか?」
薄っすらと縫われている時の記憶も思い出す。
「ああ、まぁ地獄っちゃあ地獄だ」
「ってことは生きてるんですね」
「そうだ....頭の調子はどうだ?」
「基地で飲んだ酒まで今なら言えますよ....」
「なら大丈夫か...俺と姫華ちゃんも幸い軽傷で済んでいる」
「そうですか...姫華さんは?」
「時間も時間だから寝ているぞ」
「俺は何時間くらい寝てました?」
「2日だ....」
「って事は救出の連絡は取れていないと...」
「ああ、無線機は有るが、どうやら無線が届いていないみたいだ」
「そうですか...タバコ貰えます?」
そう言うとタバコとライターをこちらに向かって放り投げた。
「有難うございます」
そう言って火を着ける。
煙が右頬に触れ少し沁みる。
手で傷口をなぞると薄く軟膏が付けられていた。
「俺と姫華は落ちた時に意識があったから脱出が直ぐに出来たがお前は大変だったぞォ...体を見てみろ」
そう言って体を見ると全裸だった。
それはまぁ良いが、体が紫色に鬱血している箇所が多々ある。
「お前が体に巻いていたロープが雁字搦めに巻き付いていてなかなか取れなくて焦ったぞ...あとお前の顔は、何かの破片がクリーンヒットして出来たもんだ...まぁ死んでなくてよかった。大変だったんだぞ姫華ちゃんに殴られながら生きているのを伝えるのを」
そう言って笑っていた。
「そうですか....パイロットは?」
「二人とも即死だ。コックピットが、グチャグチャに潰れていた」
「....」
「もう少ししたら夜明けだ、お前は十分寝ただろ、俺の代わりに起きて無線機を見といて貰えるか?」
「分かりました」
そう言うと伸びをした後部屋から出て行った。
暫くタバコを吸いながら顔を撫でたり傷口を鏡で見て「似合ってんじゃね?」とか言ってみたりしているとバタバタ走る音が聞こえた。
置いてあった9mmを構える。
するとバンと言う音とともに扉から姫華が現れた。
「ニートさん!!」
銃を下ろすと走り寄って来て手を握られる。
「良かった!!目が覚めたんですね!!」
「ま、まぁ目は覚めました...姫華さんの傷はどうですか?」
「大丈夫です!!」
そうして多愛も無い話をしつつ夜が更けていった。