ヤダよ。
私の名前は善知鳥茉衣。出身は静岡県浜松市。でも、夏や冬の時にはお母さんの実家の大阪にやってくる。
「海斗ー。」
そう呼ぶと、私よりも背の小さい男の子が家の柱の陰に身を隠した。
「逃げなくてもいいじゃん。」
「ヤダよ。お姉ちゃんまた僕を着せ替え人形にするんでしょ。」
「ウフフ。よく分かっているではないか。」
と言ってやった。海斗はこのとき小学校2年生。私は小学校4年生。裁縫はお手の物だから、今でもコスプレ用具ぐらいは作れる裁縫能力がある。と言っても、私の得意教科は家庭科だけなんだけどね。まだ、家庭の授業がないから、あたしは成績がメチャクチャ悪いのさ。
「分かりたくないよ。本当に嫌だからね。」
「あっ。ちょっと待ちなさいよ。」
と言っても海斗はそんなこと聞かずに階段を上がっていった。私も階段を上がって、海斗の部屋に行こうとする。でも、そうする前にお母さんに止められた。
そうだ。私と海斗の関係についていっておこう。お母さんはもともと高槻家の次女。静岡に行っていた時にお父さんと会って、結婚。私が生まれたっていうわけ。海斗は高槻家の長男。お母さんの弟の息子。私と海斗は従姉弟関係なのだ。
「でも、海斗がなかなか遊んでくれないよ。」
「それは茉衣ちゃんが海ちゃんのことを自分の人形みたいにしてるからじゃないの。」
「いいじゃないの。私は海斗が私が作った洋服着てくれるのが楽しみなのに・・・。」
いつも海斗に合った服作ってるのになぁ・・・。どうしていっつも来てくれないんだろう・・・。そんなに私の作った服は嫌い化。でも、いつも会いに来ると私が作った服を着てる時もあるし・・・。別に嫌なわけじゃないかぁ・・・。じゃあ、なんで私が服を着せようとするとあんなに嫌がるんだろうなぁ・・・。
「着せ替え人形じゃなくて、海ちゃんも人だよ。海ちゃんゲーム得意だから、ゲームで遊んでくればいいじゃない。」
目的が違えばいいのかなぁ・・・。お母さんに促されて、階段を上がり、海斗の部屋に行った。
「海斗。」
ドアを開けると海斗はビクッとした。そんなにビックリした・・・。
「ビックリした。」
「びっくるするよ。何。お姉ちゃん。」
「海斗とゲームしようと思ってさぁ。」
「・・・。そう・・・。」
海斗はそういうとホッとした顔になった。だから、そんなに私に服を着せられるのは嫌いなのか。
ゲームをして遊んでいるけど、ほとんど私が買っちゃうことが多い。年下だからって言って手加減する気はさらさらない。でも、海斗が私の知らないうちに開拓したゲームは負けることが多い。でも、すぐに勝っちゃうのだ。ひどいかなぁ・・・。
「つまんないよ。お姉ちゃん、もっと手加減してくれたっていいじゃん。」
「ええ。海斗に勝たせる気ないし・・・。」
てなわけで、
「ちょっ・・・いきなり何するの。」
私はおもむろに海斗の上の服を脱がした。
「海斗のために新しい服作ってきたの。来てみて。絶対似合うから。」
「ええー・・・。ねぇ、ちょっと。なんでそんな・・・。」
と言っている間に海斗に新しい服を着せ終った。
「やっぱり似合う。それちゃんと着てね。」
「・・・。」
海斗はやっぱりっていう顔になってるぞ。もう、私をこの部屋に入れた時点でフラグが立っているって思いなさいよ。
だから、僕は茉衣が嫌いだ。こういうことがあるから。茉衣は結構すごい。家庭科だけで言えば・・・。