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私は白猫である。  作者: 堀河竜
私は美尾である
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仲間



日本の想太朗くんの家に着いてから、一夜が明けました。


昨日の夜はなかなか寝付けず寝不足になってしまいました。

私の目の下にくまができ、顔色もあまりすぐれません。

機内で眠って時差ぼけに備えようとしても、安心して眠る事はできなかったのです。


それでも、今日からまた月見里神社でのお仕事を再開する事になっていました。


美鈴さんや坂井さんにも会いたいですし、私は想太朗くんが出掛けた事を見計らって、月見里神社へ向かいました。


公園の公衆トイレで人間化を済ませ、普段通り森田ミオの姿で神社の鳥居を潜ります。


「おっ、美尾じゃないか!」

「旅行から帰ってきたんだね」

「久しぶりですね。美鈴さん、坂井さん」


事務所へ入ると、美鈴さんと坂井さんが私を見掛けて話し掛けてくれました。

一週間という期間会っていなかっただけですが、何故だか長らく会っていなかったように思います。


「旅行はどうだった? 楽しかったか?」


美鈴さんに尋ねられて、私は言葉に詰まりました。

ここは素直に、社交事例のように、「楽しかった」と言えばいいのでしょうが、私は自信を持って答えられませんでした。


勿論、想太朗くんとの旅行は楽しかったです。

好きな人との旅行ですから、つまらない訳がありません。


しかし今回の旅行は、どこかに悲しみを孕んでいました。

ジャスティンさんを救えましたし、想太朗くんとの距離を更に縮めましたが、どれも悲しみを心に抱えていたのです。


「楽しかったです」


言葉に詰まってしまったものの、私は笑ってそう言いました。


「それは良かったわ」

「羨ましいな」


二人はその私に疑問を持つ事もなく、自然な笑みを顔に浮かべます。


私は二人に自分の心を気付かれずに済んだ事に胸を撫で下ろしました。


そして追求される事を避けて早々に巫女装束に着替える事にしました。

「着替えてきます」と一言告げて更衣室へ移動します。


更衣室の扉を閉めて、自分のロッカーを開けて緋袴と白い小袖を取り出します。

自分の服を脱いで着替えを始めよう……としたところで、私は更衣室の外に誰かの気配を感じました。

私の第六感と言いましょうか、猫又としての勘と言いましょうか、とにかくどろどろとした何か悪いものを感じたのです。


私は衣服をロッカーに置いて、更衣室の扉におそるおそる歩きました。


一足一足緊張しながら近付き、横引き扉の取っ手を掴みます。


そして一思いに扉を引くと、やはりその人はそこに立っていました。


「小向さん! また覗きですか!」

「わはははは!」


更衣室への覗きがバレた小向さんは、笑いながら逃げていきました。


覗きがバレたというのに何故笑っているのかわかりませんでしたが、着替えを覗かれていた私は怒らずにいられません。


「坂井さんに言い付けちゃいますからね!」

「わっはっはっは!」


もしかしたら小向さんは、着替えを覗く事よりも私達をからかう事を楽しんでいるのではないでしょうか。

怒ったり恥ずかしがったりする私達を見るのが楽しいのではないでしょうか。

どちらにせよ腹立たしいですけども。


それにしても、ハワイから帰ってきて久しぶりに会ったというのに、こんな再会をするとは思いませんでした。

小向さんの性格を考えれば予想できましたが、もう少し常識的な人だと思っていましたから。


私はため息をついて更衣室の扉を閉めました。

ロッカーを開けて着替えを再開します。


しかしその途中、私は自分が笑っている事に気が付きました。

着替えを覗かれていて怒っていたはずなのに、口元は緩んでいたのです。


私はどうして笑っているのかと疑問に思いましたが、きっとあまりにも平和だったからでしょう。


そして私は思い付きました。

もっと平和な日常に触れていれば、悲しみを忘れていられるのではないかと。


悩みは人に話すと楽になれると聞いた事がありますし、私は一人で悩むべきではなかったのかもしれません。


なので私は、早めに着替えを終えて、坂井さんと美鈴さんのいる事務所へ戻りました。

私は二人と一緒に、ある事をしよう思っていたのです。


「あの、坂井さんに美鈴さん」


事務所に入るなりに、私は二人を呼びました。

二人は何事かと私の元に来てくれます。


「今度の休日に、三人でショッピングに行きませんか?」




最近美尾の性格が変わってきてるなと思います。

キャラ設定が狂っている訳ではなく、ストーリーが美尾をそうさせているんです。

これはきっと精神的に成長してるんじゃないかな、と思います。

悩みを乗り越えたり努力したりする事で強くなったんです。

ジャスティンさんが「美尾は強い」と言っていたけど、その結果だったのかなあ。

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